さまざまなインディー・バンドが存在する韓国・弘大(ホンデ)周辺のシーンにあって、ヴィジュアルや音楽性において圧倒的な存在感を放つ、気にせずにはいられない5人組、スルタン・オブ・ザ・ディスコ。2014年に〈グラストンベリー〉や〈サマソニ〉をはじめ、各国のフェスで話題を振り撒いた彼らは、何を意識しているのかが不明な揃いの衣装を纏い、ディスコ・ファンクをベースに韓国産らしい独特のいなたさを滲ませた絶品のサウンドを鳴らす。さらに、もともとダンス・ユニットだというバンドのルーツを残したライヴ・パフォーマンスも最高なわけで……。

そんなスルタンが、昨年11月に韓国・ソウルでSCOOBIE DOと初共演という美しすぎる2マンを実現! 日韓のライヴ巧者による確実に楽しいであろうそのステージに、遠く日本から想いを馳せていた……のだが、まるでそんな気持ちを察してくれたかのように、翌12月に東京でスルタンの来日公演の開催、さらにスクービーのゲスト出演が決定したのである! これはMikikiとしてはスルーできないということで、今回両バンドの対談をオファーさせてもらった。

スルタンからは、ヴォーカリスト/プロデューサー/エンジニア、さらにミュージック・ビデオの製作まで手掛けるナジャム・ス氏と、日本語も堪能なベーシストのジ氏が、そしてスクービーからはコヤマシュウ氏(ヴォーカル)&リーダーのマツキタイジロウ氏(ギター)にお集まりいただき、韓国での共演時のエピソードやお互いの印象などをいろいろと語ってもらった。

※掲載しているライヴ写真はすべて12月9日に行われた東京・月見ル君想フ公演で撮影

スルタン・オブ・ザ・ディスコの2013年作『The Golden Age』収録曲“의심스러워 (Suspicious) ”

 

――ジさん、すごく日本語が上手ですね。

「『堂本兄弟』とか観て……」

――へ~!

「昔ですけど」

通訳・八幡氏「ダウンタウンも知ってましたよ」

※スルタンに加え、チャン・ギハと顔たちやヒョゴといった韓国のアクトを日本に招聘しており、今回は特別に通訳を務めてもらった

――ヴァラエティー番組が好き?

「ハイ。映画も」

ナジャム・ス「(ジは)オタクー」

一同「ハハハハ(笑)」

――では、始めさせていただきますね。スクービーとスルタンは最初に韓国で2マン・ライヴを行ったわけですが、これはどういうきっかけで?

マツキタイジロウ「もともとドラムのMOBYが韓国へ遊びに行った時、たまたま空中キャンプっていうライヴハウスで八幡さんとお会いしたんですよね」

※ソウル・弘大にあるその名の通りフィッシュマンズを愛するオーナーがいるライヴハウス(兼バー)で、元フィッシュマンズの面々を含め日本のアクトも数多く出演している。スクービーも3月20日(日)に空中キャンプで〈BGBG Records & Kuchu Camp presents Funk-a-lismo!〉を開催。ナジャムがソロで、ジが率いるバンド、パラソルも出演する http://kuchu-camp.net/

八幡「空中キャンプというか、そこらへんの広場みたいなところで知り合いが呑んでて、そこにMOBYさんもいたっていう(笑)」

マツキ「そんな雑な出会いです(笑)。その流れで〈じゃあ韓国で(ライヴを)やらせてください〉という話になったんですよね」

八幡「誰と(対バンを)やるといいかなと考えた時に、スルタンがいいんじゃないかと。スルタンが日本で公演をする話もあったので、2バンドで一緒にやれたらいいかなと思って」

――なるほど。じゃあ実際に共演することが決まって初めてスルタンのことを知った感じですか?

マツキ「そうですね」

――スクービーは初の海外公演になりましたが、やってみていかがでしたか?

マツキ「やるまではね、正直どうなるかなっていう心配が多かったんですけど、やってみたら〈あ、スゲー(音楽が)伝わるな〉と思って。言葉の壁も含めていろいろ心配したけど、全然そんなこと関係なくて、もう〈音楽〉というだけで伝わるんだなと思いましたね。特に、初めてやった韓国でのライヴが、ソウルじゃなくてチェジュ島でのサーキット・イヴェントだったんですが、どんな状況になるのかまったくわからないし、ステージに出た時はバンド結成して初めてライヴをやる、みたいな感覚でした」

コヤマシュウ「うんうん」

マツキ「そういう感じで、4人全員が全力。40歳にもなって、こんなに初心に返っちゃうんだと、自分でも恥ずかしくなるくらい(笑)」

SCOOBIE DOの2016年作『アウェイ』収録曲“アウェイ”

――かなりフレッシュな体験だったんですね!

マツキ「(チェジュ島では)お客さんは多くなかったんだけど、(反応は)物凄かった」

――日本であるような、初見だと〈様子見〉みたいな感じではなく。

マツキ「最初からバン!ってきましたね。僕も〈エッ!?〉と思いながら、やればやるほど盛り上がっていった。手応えが凄くて。チェジュ島の翌日はスルタンのソウルでのイヴェントに呼んでもらったんですが、そっちはもうお客さんがいっぱい入っていました。僕らのライヴでもチェジュ島と同じように盛り上がってくれましたね。だって僕らが(スルタンの)前なのにアンコールが起きるんですよ」

――それはスゴイ!

マツキ「アンコールも、よほど良くないとアンコールがかからないということだったので〈おお、そうだったんだ~〉と」

コヤマ「始めから向こう(オーディエンス)が〈楽しませてくれよ!〉という雰囲気なので、それが良かったですね。チェジュ島でのフェスもそうだし、スルタンに呼んでもらったソウルでのライヴもそうなんですけど、音楽を本当に好きな人が足を運んでいて、音楽で楽しむために来たんだよ、今日いちばん楽しいことをしに来てるんだよという人たちに観てもらえたから、俺らSCOOBIE DOのサウンドとわかり合えたのかなっていうのがありますね。音楽が本当に好き、という部分で壁がなかったのが良かったです、とっても」