結成21年目を迎え、通算12枚目のオリジナル・アルバム『アウェイ』をリリースしたばかりのSCOOBIE DOが、新たな主催イヴェント〈Young Bloods〉をスタートさせる。タイトル通り、勢いのある若手バンドを迎えた2マン形式で行われる同企画、記念すべき第1回は、2月13日にnever young beach、2月14日にSuchmosが登場。音楽的にも、精神的にも惹かれ合う3バンドの邂逅は、現在日本のバンド・シーンで起こっている潮流の変化とも確実にリンクしていると言っていいだろう。SCOOBIE DOのメンバー4人と、never young beachの安部勇磨(ヴォーカル/ギター)、SuchmosのYONCE(ヴォーカル)というゲスト・バンドの両フロントマンによる対談からその雰囲気を感じ取り、ぜひ当日は会場に足を運んでみてほしい。
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【参加メンバー】
from SCOOBIE DO
コヤマシュウ(ヴォーカル)
マツキタイジロウ(ギター)
ナガイケジョー(ベース)
オカモト“MOBY”タクヤ(ドラムス)
from never young beach
安部勇磨(ヴォーカル/ギター)
from Suchmos
YONCE(ヴォーカル)
いろんな方面からリンクしていったので、これはもう必然だなと
――まずは〈Young Bloods〉を開催するに至った経緯を伺えますか?
コヤマシュウ「〈来年(2016年)のことを決めようぜ〉とスケジュールを考えていた時に、地方のイヴェンターさんから、〈いま若くて格好良いバンドがいっぱい出てきてるから、そういうバンドと対バンするイヴェントをやってみたら?〉と言われたんですよね。〈なるほど、おもしろそうだな〉とは思ったんですけど、でもその時は若いバンドのことを全然知らなかったのでタワレコの新宿店に行ったんです。新宿店はフロアも広いし、ポップも充実してるんで」
――日本のインディーに力を入れてますもんね。
コヤマ「そうなんですよ。そうしたら、ちょうど〈シティー・ポップ〉みたいなコーナーがあって、そこを片っ端から試聴したんです。それで最初にSuchmosを聴いて、さっそく格好良いバンドを見つけてしまったと思って。その後に仲の良い店員さんに、〈最近どうですか?〉と訊いたら、〈never young beachっていうバンドも大人気なんですよ〉と言われたので聴いてみたら、また格好良いバンドを見つけてしまった!って」
オカモト“MOBY”タクヤ「〈なんて日だ!〉って(笑)」
コヤマ「それそれ(笑)。それで、この2バンドをイヴェントに呼んだらいいんじゃないかと提案したんです」
ナガイケジョー「しかも、ちょうどその頃YONCEくんがスクービーのホームページにメッセージをくれていたんだよね?」
YONCE「そうなんです」
ナガイケ「ホームページのメッセージ・フォームからメールが来て、〈SCOOBIE DOの旧譜を最近改めて聴き返して、すごい発見がありました〉とメッセージをくれて、そこに〈Suchmos〉って書いてあったから、調べて聴いたりして、〈こんなバンドがいるんだ〉と思っていたんですよ。そうしたら、イヴェントに誘おうと思うんだけど……という話が(コヤマから)あって、いきなりリンクしたから〈これは一緒にやるしかない〉と」
YONCE「俺が高校時代からずっとやってたバンドが、SCOOBIE DOのパチモンみたいなバンドで(笑)、『DOIN' OUR SCOOBIE』(99年)をクソほど聴いてた時期があったんです。それで〈あれはいま絶対新鮮に聴けるはず〉と思って、聴き返したらやっぱり最高で、思わずメールした感じでした」
コヤマ「『DOIN' OUR SCOOBIE』っていうのが嬉しいよね。メジャー・デビュー前、インディーズで出したアルバムだから」
MOBY「じっくり聴いちゃいけないアルバムだけどね(笑)」
コヤマ「俺たちの知らないことを知っているかもしれない。〈そんなことしてた?〉って(笑)」
MOBY「で、ちょうど同じ流れで、うちの妻と仲良くしてる臼田あさ美さんがネバヤン(never young beach)をすごい推してたんですよ。それで聴いてみたら実際すごく良くて」
コヤマ「僕らが出した『Extra Funk-a-lismo! -Covers & Rarities-』※ってアルバムはメジャー・レーベルから出したんだけど、その時に昔のディレクターとまた一緒に仕事をして、その人もネバヤンすごくイイって言っていて。さっきのメールの話と同じで、いろんな方面からリンクしていったので、これはもう必然だなと」
※2015年にリリースされたカヴァー曲や未発表/レア音源を収めた裏ベスト的な一枚
――安部くんにとって、SCOOBIE DOはどんな存在でしたか?
安部勇磨「ホントに失礼な話なんですけど、僕は名前しか知らなくて、〈有名な人〉っていうイメージしかなかったんですよ。でも、一緒に(ライヴが)できることになって、うちのドラム(鈴木健人)がすごくテンションが上がっていたので聴いてみたら、〈歌ってることめっちゃエエやんけ〉と思って。“Get Up”(2002年のミニ・アルバム『Get Up』収録曲)のサビで〈あこがれに手を振ろうぜ/強がりはもうやめた〉と歌っているところで、〈その通り! 俺は俺だぜ!〉って」
コヤマ「ええ話やなあ(笑)」
――マツキさんはSuchmosとネバヤンに対してどんな印象をお持ちですか?
マツキ「2バンドとも全然違う音楽をやってると思うんだけど、オーガニックなカフェみたいなイメージで、出てくるものは間違いない、無添加の良いものが出てくるんだけど、その店をやっているのがラーメン屋のあんちゃんみたいなイメージ。そういうところがすごく好きで、シンパシーを感じるんですよ。うちらも店構えはラーメン屋なんだけど、実際はラーメンだけじゃなくて何でも出すんです。とんかつでも寿司でもスパゲティでも出すんだけど、でもそのひとつひとつの味にはちゃんとこだわってる。そこにシンパシーを感じていて」
コヤマ「いい喩えですねー」
マツキ「あと地方のイヴェンターさんや音楽業界の人に若くて良いバンドを教えてもらう機会はたくさんあるんだけど、今回の2バンドは特にグッときたんです。自分の感性を信じてやっていることが伝わるというか、〈ウケよう〉とか〈TVに出るため〉といった気配が一切しない人たちで、煌びやかなところに対して余裕で背中を向けてやってる感じがする。そこがすごくカッコイイなと思いました。ライヴ・パフォーマンスがいいバンドはたくさんいるんだけど、信念がどこにあるかわからないような人もいるなかで、この2バンドはその感じが一切なかったので」
YONCE「ネバヤンとここ最近よく対バンするようになって、ヴァイブスが合うなと感じるポイントはそこなんじゃないかと思っていて。わりと反骨してるというか、周りのつまらない奴らに対しては基本的に中指立ててる人たちでバンドを始めちゃったんで、いつもイライラしてるというか……イライラしないように関わらないことが多くて」
安倍「そう、関わらないようにしていますね。ちょっとカッコイイなと思っても、話してみると魂の部分で〈うわっ、こいつ嘘くさ!〉って思っちゃうんですよ。なのに曲間のハウらせ方だけはうめえな、みたいな」
コヤマ「いいねー(笑)」
安倍「スタジオの鏡の前で練習してるんだろうなと思うと、さぶーってなる。そうやって練習するのも、それが自然体だったらいいんですけど、なんかそういうところにばっかり目が行っちゃうような人って、〈これで月いくらもらってんのかな?〉とか〈サラリーマンかよコイツ、合わねえなあ〉と思っちゃいます」
YONCE「ライヴを観てて、お客さんじゃなくてその奥のほうで観てる偉そうな人たちへの目配せが見えちゃうと、〈コイツらぜってえつまんねえ人生送るんだろうな〉と思う」
コヤマ「いいなあ、中指立ってるね。俺も最初にSuchmosを聴いた時、音楽のカッコ良さはもちろんなんだけど、すげえ生意気そうだなと思ったんですよ。そこが好きなの。で、アーティスト写真(『THE BAY』リリース時のアーティスト写真)でも不敵な顔してるんだろうなと思ったら、全然笑顔だった(笑)」
YONCE「そうですね(笑)」
コヤマ「ネバヤンに関しては最初どんな人たちなのかよくわからなくて、〈西海岸のはっぴいえんどとも言われている〉と書いてあったんだけど、その例えもあんまりピンとこなくて、ジャケットの裏に載っていた白黒のメンバー写真を見たら長髪で、〈サーファーなのかな?〉と思って。浮世離れしたサーフィンやってる人たちが集まっていて、音楽は好きなんだけど、たぶん話は合わないんだろうなと(笑)。その後に新代田FEVERでヨギー(Yogee New Waves)のイヴェントにネバヤンが出ているのを観に行って、ライヴもわりと大人しい感じのイメージかと思ったら、バンド大好き感とエモ感が想像以上にあって、それがすごく良くて。“どうでもいいけど”のサビの歌詞が大好きなんだけど、あの時に何か話してたじゃん?」
安倍「〈髪を切ったからって、お金を持ったとは思わないでください〉って」
コヤマ「そうそう、それを言った後に“どうでもいいけど”のサビの部分で〈束ねて忘れる!〉ってハードコアみたいに絶叫していて(笑)。そこにグッときたなあ。いまの時代だったらもっと宅録的というか、一人のリーダーがサウンドを作り込むことも普通でしょ? 黒い音楽だったらベッドルーム・ファンクみたいな感じで、シンガーが歌っていてあとは作り込んである、みたいな音源が多いけど、どっちのバンドも〈バンド大好き!〉っていう感じがあって、これは一緒にやったらおもしろいだろうなと、ライヴを観て確信したんです」
――SCOOBIE DOとSuchmosは60~70年代のソウルやR&Bがひとつのルーツになっているというのが共通点かと思うのですが、YONCEくん自身のルーツは具体的にどのあたりになるのでしょうか?
YONCE「ブラック・ミュージックの原体験は、オーティス・レディングがカヴァーしているストーンズの“(I Can't Get No) Satisfaction”でした」
MOBY「俺と一緒!」
YONCE「マジっすか!? 俺、最初はロックが大好きで、ニルヴァーナから入ったんですが、だんだん古いロックの良さもわかるようになってきた感じで、おじさんから〈“Satisfaction”はこういうのもあるよ〉という感じでオーティスを教えてもらって、〈カッコイイ! こういうのはなんて言うんだ?〉みたいな、そこからいつの間にかハマっていて」
コヤマ「おもしろいね。YONCEくんくらいの年齢だとさ、アシッド・ジャズとかヒップホップは青春時代にすでにあった音楽でしょ?」
YONCE「そうですね」
コヤマ「そっちよりも、オーティスのほうが先なんだ?」
YONCE「そうですね。Suchmosの音楽性のパブリック・イメージになっている部分はメンバーから教えてもらった感じで、もともとはバーをやっていた親戚のおじさんがひたすら古いCDを毎月くれて、それでいろいろ知っていったんです。なので、高校くらいの頃は〈古いのしかカッコ良くない〉と思っている時期だったんですよ」
コヤマ「そこは俺らと同じだね(笑)」
――安倍くんのルーツはどのあたりなんでしょう?
安倍「僕は、まずお兄ちゃんがミッシェル・ガン・エレファントを教えてくれて、ブルーハーツ、THE HIGH-LOWS、エレファントカシマシとかを聴いていたんですけど、高校の時に〈邦楽なんてだせえ〉ってなって、フランツ・フェルディナンド、リバティーンズ、ストロークスあたりが好きになった。そういう音楽をやりたかったんですけど、スリムなジーパンで上裸にジャケットみたいな格好だったから、〈俺がやっても説得力ねえな、足細くねえし〉みたいな感じだったんですよ。それでもハタチ過ぎくらいまではそういう音楽をやりたくて、ダイエットもしてみたんですけど、〈ロックンローラーはダイエットしねえよ〉って」
コヤマ「確かにね(笑)」
安倍「それで、俺はもっと楽なのが好きだなと思ってnever young beachを始めたんです。はっぴいえんどや細野(晴臣)さんは絶対に好きだよ、と前から言われていたので、その頃からいろいろ聴きはじめて、遡ってオールマン・ブラザーズやフェラ・クティとかも聴くなかで、これを僕なりにソフトにやってみようと。でも、リズム隊はブラックな感じが好きだったり、ギターは最近のオシャレな音楽が好きだったり、みんな結構(好みが)違うから、いい感じに混ざったのかなと」
コヤマ「バンドっぽいね。ネバヤンを聴いて、すぐにフェラ・クティは連想できないけど(笑)」
安倍「マインドっていうか、楽しいスピリットだけをもらって、あとは俺たちなりにやろう、みたいな」
コヤマ「ええ話や。一緒にやったら絶対楽しいだろうなと、いままた確信しました」