ジョン・ダウランドのコンソート曲集『ラクリメ、または7つの涙』が出版されたのは1604年なので、ざっともう400年以上前の音楽。日本は江戸時代が始まったばかり。それほどに昔の音楽が、香りやぬくもり、微細な気配を喚起してくれることの不思議さをいまさらながらに思う。村上春樹『1Q84』で引用され、多くのお問合せを頂いたことも思い出す。5挺のヴィオールと1挺のリュートによる合奏が生み出す音楽の豊かな情感。古今でどのような感受の差異が個人のレベルであるのだろう。名手揃いのファンタズムの高精細で緊密な演奏には、聴き手の想像力を心地よい刺激で連れ出してくれる力がある。