(左から)高岩遼、櫻打泰平、岩間俊樹

 

メジャー・デビューした途端に連載を中断するとは……どういうことだ! というのはともかく、連載を始めたのなら最後まで行こうぞと、Mikiki編集部は1年超ぶりにSANABAGUN.のメンバーと再会&連載再開。ようやく5人目のメンバーを迎えることができました。前回の序文を読んでみると……いやはや時が経つのは早いもので、渋谷のストリートも卒業し、当時からは何段階もグレードアップ。7月にリリースされた最新アルバム『デンジャー』では、さらに研ぎ澄まされたサウンドとユーモアで楽しませてくれます。

ということで、今回登場するのはバンドの末っ子でキーボードを担当する櫻打泰平! 実は、ちょうど1年前に本連載の収録を行っていたにもかかわらず、諸事情によりお蔵入り……という切ない過去があるにもかかわらず、新たな気持ちで臨んでくれました。高岩遼(ヴォーカル)&岩間俊樹(MC)の両フロントマンを進行役に、撮影場所を一新(会議室なのは変わらず)してのSANABA談、変わらず動画がメインのコンテンツではありますが、掲載している動画の発言の書き起こし、言及されている楽曲や補足情報などもまとめたテキストも、ぜひお役立てください。

★連載〈SANABAGUN.のSANABA談〉バックナンバーはこちら

SANABAGUN. デンジャー CONNECTONE(2016)

 

【前編】

高岩遼「約1年ぶりの……待ちに待ちました〈SANABAGUN.のSANABA談〉、本日のゲストは櫻打泰平くんです!」

一同「パチパチパチ」

高岩「この連載のコンセプト、わかってるよね? これまでのやつ、観た?」

櫻打泰平「一応観た」

高岩「では、皆さんに1枚目を紹介してもらっていいですか?」

櫻打「行きましょう! クインシー・ジョーンズ『Walking In Space』です」

QUINCY JONES Walking In Space CTI/A&M(1969)

櫻打「知ってるでしょ?」 

岩間俊樹「……プロデューサーでしょ?」

櫻打「そうそうそう。遼くんは好きだよね?」

高岩「もちろん。そもそも僕はマイケル(・ジャクソン)が大好きでしたから。何よりレイ・チャールズのマイメン(親友)ですしね」

櫻打「そうですよ。リオン・ウェアとかね。まあ世界に名立たる名プロデューサーです。このアルバムはなぜか親父の車でかかっていた一枚で。この時代はミニ・アルバムものが多くて、ビッグバンドでも7~8曲のミニ・アルバムで出す、みたいな。このアルバムに参加してるアーティストで注目すべき人は、トゥーツ・シールマンス※1(ギター/ハーモニカ)ですね。彼はビル・エヴァンスともやってるし※2、確かエヴァンスの9つ上の先輩なの」

※1 2016年8月22日に逝去されました。享年94。謹んで哀悼の意を表します

※2 78年にビル・エヴァンスとのコラボ作『Affinity』をリリース

櫻打「他にもジャコ(・パストリアス)のアルバムにも参加してる。まあでもこのアルバムに参加しているジャズ・ミュージシャンはビッグネームばっかりですよ。エリック・ゲイル(ギター)やチャック・レイニー(ベース)、ボブ・ジェイムズ(エレクトリック・ピアノ)……」

※ジャコの81年作『Word Of Mouth』に参加

『Walking In Space』収録曲“I Never Told You So”。トゥーツ・シールマンズのハーモニカががっつりフィーチャーされている
 

高岩「歴代の」

櫻打「そうそう。この時代の最高峰のミュージシャンがこぞって参加したビッグバンドによるアルバムで」

岩間「で、何曲目がいいの?」

櫻打「この“Oh Happy Day”という曲で」

岩間「じゃあそれを聴かせてくれ。そしてその魅力を語ってくれよ」

“Oh Happy Day”は31分20秒過ぎから
 

高岩「メロディーを楽器でやってるんだね」

櫻打「そうそう」

高岩「すげえいいわ」

櫻打「(クインシーは)レイ・チャールズの映画『Ray/レイ』(2004年)にも出てくるよね」

映画「Ray/レイ」のトレイラー映像(英語)
 

高岩「出てくる、出てくる。俺の見解では、“We Are The World”でレイ・チャールズの歌う回数が多いのはクインシーの計らいだと思うんだよね。いちばん出てくる回数が多い」

USAフォー・アフリカの85年のシングル“We Are The World”。プロデューサーとしてクインシー・ジョーンズが関与
 

櫻打「お~。俺にとってのクインシーは、まずマイケルのプロデューサーっていうところから入ったんだけど……クインシー・ジョーンズのお弟子さん、誰か知ってる?」

高岩「知らない……誰?」

櫻打デヴィッド・フォスター

高岩「へぇ~。泰平、デヴィッド・フォスター好きだもんね」

※彼についてはこちらの記事を参照してください

デヴィッド・フォスターが作曲したアース・ウィンド&ファイアの79年の楽曲“After The Love Has Gone”
 

櫻打「やたら好き。クインシーの一番弟子がデヴィッド・フォスターで、彼が勢いのあった時代に実績的にはクインシーを抜いちゃったわけ。それでクインシーがデヴィッド・フォスターに影響を受けてまた追い抜いたりして……まあクインシーもいまではなかなかのおじいちゃんになっちゃったけど。インスタ見てると」

高岩「え! クインシー、インスタやってるの?」

櫻打「うん、俺フォローしてるよ」

高岩「ハハハハハ(笑)。クインシー・ジョーンズのインスタをみんなでフォローしよう!」

岩間「日本からいきなり増えたな~とかなったりして(笑)」

櫻打ケンドリック・ラマーとか、若いアーティストとの2ショットをあげたりしてる。クインシーのソロ作というと『Back On The Block』(89年)を挙げる人が多いと思うんだけど、そうじゃないです! 69年とか71年とか74年とかのあたりに出てる、ビッグバンドでのアルバムがやっぱり最高。80年を過ぎると、ヒップホップ/R&B色が出てくるんだけど、俺からすると、『Walking In Space』のほうが好き。ぜひ聴いてもらいたいです」

エラ・フィッツジェラルドサラ・ヴォーンマイルス・デイヴィスレイ・チャールズからルーサー・ヴァンドロスバリー・ホワイトアイス・Tビッグ・ダディ・ケインアルB・シュア!まで、ジャズ界のレジェンドや名ソウル・シンガー、(当時)旬の若手ラッパーが大挙して参加した、第33回グラミー賞で7部門を獲得している凄いアルバム