Base Ball Bearの小出祐介が主宰する新プロジェクトの初アルバムは、福岡晃子をパートナーに迎え、DTMをベースとしたジャンル不問の10曲を収録。Mummy-DとRyohuの2MCによる“Material World”から、成田ハネダのジャジーなピアノに乗せてTOSHI-LOWがムーディーに歌い上げる“告白の夜”まで、豪華なゲストの組み合わせもおもしろいが、既存の枠から一回自由になってみようという精神性に何より惹かれる。
Base Ball Bearの小出祐介が、福岡晃子(ex.チャットモンチー)を相方に迎えて立ち上げた、ソロでもバンドでもユニットでもない音楽プロジェクト。小出がほぼ初めてDTMで作ったという楽曲たちには、成田ハネダ(パスピエ)を始め、吉田靖直(トリプルファイヤー)、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、岸井ゆきの、Mummy-D(RHYMESTER)、Ryohu(KANDYTOWN)、高橋絋一、谷本大河(共にSANABAGUN.)といった多彩なゲストが参加しており、〈すべては素材さ〉という“Material World”の歌詞のように、小出や福岡を含めたそれぞれのパフォーマンスを、あくまでいち素材(マテリアル)として捉えているのが非常にユニーク。
小出の手にかかってしまえば、ロックやヒップホップ、ポエトリー・リーディングといった音楽や表現のジャンルすら素材。あるいはリスナーだって作品を完成させるためには欠かせない素材であり、作る側・聴く側の全員が必要不可欠なマテリアルということ。そっかマテリアルクラブって聴いたら自分も一員なのか。
となると、こちらは〈おもちゃ箱をひっくり返したような音楽〉などと手垢の付いた比喩で言い表したくなるが、小出はそれらの表現方法を1曲目の“Nicogoly”でズバリ〈煮こごり〉(=魚や肉などの具材を煮て固めた料理)と表現。なるほどね。他にも歌詞の細部にまでウィットに富んだ小ネタが仕込まれているので、歌詞カードを熟読しながら聴くのをオススメします。