前作との違いを訊かれ、〈セイム(同じだ)!〉と言い切ったという逸話も有名な御大。この4年半ぶりの12作目でもブレない美学を込めながら、〈チェンジング・セイム〉な円熟も見せていく。馴染みのワーリー・モリスが手掛け、弟子のシルクを従えた煌めく夜のナンバー“Tonight”、タキヤ・メイソンなる新進女性シンガーを慣れた手つきでロマンティックにエスコートする“Just The 2 Of Us”など、彼らしいR&Bイズムの完成度は当然揺るぎない。さらにドゥルー・ヒルを迎えた“Missing You Like Crazy”をオージェイズへ捧げつつ、故ジェラルド・リヴァートをフィーチャーした“Let's Go To Bed”ではLSGを思い出させるなど、往年のリスナーへのサーヴィスも抜かりなく、ギャップ・バンド“Outstanding”と同じ歌い出しの表題曲にもニヤリとさせられる。年々マイルドになっている気がするヤギ声も、伝統芸をスムースにデリヴァリー。2016年最高のR&Bアルバムだ。