インタビュー

噂の女性シンガーSiSY、90年代R&Bへの愛と憧れを瑞々しさと共に閉じ込めたメジャー・デビュー作『POP IN BLACK』を語る

【特集:STILL CHANGING SAME】Pt.4

STILL CHANGING SAME
[ 特集 ]R&Bの傾向
ブームやトレンドの趨勢はともかく、注目すべき作品は次々にリリース中!
この季節がよく似合う、成熟したアーバン・ミュージックの真髄を、あなたに

★Pt.1 アッシャー
★Pt.2 キース・スウェット
★Pt.3 エリック・べネイ
★Pt.5 ガラント、クレイグ・デヴィッドら注目のR&B作品ガイド

 


SiSY
噂のヴォーカリストがいよいよメジャー・デビュー! 90年代R&Bへの愛と憧れを埋め込んだ『POP IN BLACK』はその瑞々しさとポップネスを現代に蘇らせる

 SisterのSiSに本名の頭文字Yを付けてSiSY(シシー)。このたびメジャー・デビューを果たした彼女の名前と人懐っこくクリアな美声は、TWO-Jの“Special Time”(2009年)などの客演やMUROZOとのコンビ作『PUZZLE』(2014年)を通して、ジャパニーズ・ウェッサイ・ファンの耳には届いていただろう。そう説明するといわゆるウェッサイ方面にドップリという印象を与えそうだが、本人がやる音楽はさにあらず。中学時代にダンスを始め、ボーイズIIメンマライア・キャリーなどを普通にポップスとして聴いてきた彼女が歌うことに目覚めたのは、地元の名古屋から大学進学のために上京し、六本木のソウル系ライヴハウスでアルバイトを始めてからだ。

「そこでダイアナ・ロスマーヴィン・ゲイを聴いてソウルを掘りはじめて、自分も歌いたいなと。最初はなぜかコンガを任されて(笑)一緒にコーラスもやったんですが、バンドをバックに歌ったら全然歌えなくて……。当時ラベルの“Lady Marmalade”も歌っていたので、パティ・ラベルのウァ~!みたいな歌い方に憧れていたんです。私は声が細いので、ない物ねだりですね。SWVココなら真似すれば近づけるかなと思ってましたけど、歌は自分より上手い人がたくさんいる。じゃあどうしようと思った時に、自分で曲を書けばいいんだと。それならPro Toolsも出来なきゃダメだなって、トラックメイカーのonodubさんに教えてもらいながらマスターしました」。

SiSY POP IN BLACK plusGROUND(2016)

 レコーディング・スタジオの受付嬢をやっていたという経歴にも納得な美貌と上品さに加えて、負けん気も感じさせるSiSY。そんな彼女が完成させたファースト・アルバム『POP IN BLACK』は、90年代R&Bをコンセプトにした一枚。メジャー契約のきっかけになった“Time To Fly”(2013年)やES-PLANT制作の“Knock Knock”など3曲は既発だが、特にonodubが手掛けた前半の曲は、往年の名曲を聴きながらイメージを膨らませて作り上げたというように、ジャケットのアートワークも含めてアーリー90sの雰囲気を漂わせる。付き合いたての恋愛初期症状を歌った“Ghost Buster”はメアリーJ・ブライジ“Mary Jane(All Night Long)”そっくりのビートで始まるし、“#3”は90sマナーのノディーシャ“That's Crazy”を思わせ、MUROZO客演のアップ“∞ Young”はニュー・ジャック・スウィング期のLA&ベイビーフェイスの作風を狙ったそう。もっとも、リアルタイムで聴いていたのはアシャンティだったという彼女にとって90年代R&Bは後追い。そんな自分自身やシーンを客観視しながら作っているところに、イマっぽさを感じる。

「いま若い世代の間で90年代の洋服が流行っているんですけど、そのファッションがこういう音楽から来ているとか、音楽を掘る喜びにも気付いてほしくて。アルバムのタイトルはブラック・ミュージックの中のポピュラーな部分という意味で、私自身ポップなR&Bが凄く好きなんですよね。アングラな曲もいいけど、ポップも悪くないよ、って」。

 アルバム後半には、ギター・カッティングが鮮やかなジョーイ目黒プロデュースのディスコ調アップ“Light My Fire”も登場。ピアノを弾き、トラックメイキングを自身でこなし、エンジニアの経験もある彼女だが、今作ではプロデューサーに全面委任し、「いただいたトラックにデタラメの英語でメロディーとコーラスを乗せて、そこに言葉を当てはめて最後にフェイクを作っていく」というやり方で進められた。うち、MANABOONが制作した正統派R&Bバラード“恋した人”では初めて他人が作ったメロディーを歌ったという。そしてラストを飾るのは、okaerio制作の“2006”。濡れたような音や歌がフェイス・エヴァンスを想起させるスロウ・ジャム的な曲だ。

「2006年、つまり10年前の自分からいまの自分に伝えたいことを書いた曲です。このタイプのR&Bって歌詞がエロいから、本当はそういう歌詞もよかったんですけど(笑)。でも、ひとつの歌詞の中に自分なりのパンチラインを一個は入れていますね。私の曲を聴いたら私だとわかるようなメロディーとかオリジナリティーを追求していけたらなと思っています」。

 自身の音楽でR&Bの楽しさを伝えるSiSY。シスターYに付いていけば充実したリスニング・ライフを送れそうだ。

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