STILL CHANGING SAME
[ 特集 ]R&Bの傾向
ブームやトレンドの趨勢はともかく、注目すべき作品は次々にリリース中!
この季節がよく似合う、成熟したアーバン・ミュージックの真髄を、あなたに
★Pt.1 アッシャー
★Pt.2 キース・スウェット
★Pt.3 エリック・べネイ
★Pt.4 SiSY
GALLANT
新奇な退廃美に潜むオーソドキシー

ガラントはLAで活動するワシントンDC出身のシンガー/ソングライターで、2年前からEPを出していたが、ミステリアスな佇まいもあってか、同系統とも言えるフランク・オーシャンほどは騒がれていない。が、プリンスへの憧憬を滲ませ、ディアンジェロやマックスウェルをアンビエント方向に寄せたような甘美で退廃的な初フル・アルバム『Ology』は、鬼気迫るようなファルセット~ハイ・ヴォイスを繰り出して歌う新R&Bの傑作だ。メイン・プロデュースはスティントで、ブラストラックスのリミックスも話題となったスロウ・ジャムの“Weight In Gold”、グルーヴ・セオリー“Tell Me”を歌い込んだエブラヒム・ラカーニ制作のメロウなネオ・ソウル“Miyazaki”といった人気曲のほかにも、それらに肉迫するナンバーが目白押し。ジェネイ・アイコを迎えた“Skipping Stones”もエイドリアン・ヤングのレトロ・センスが光る逸品だ。 *林 剛

CRAIG DAVID
ダンス・トラックで輝くスムースな歌心

前作から6年の間にUKガラージ再評価も進んで〈復活〉の下地は整っていたクレイグ・デヴィッドだが、『Following My Intuition』先行曲群で往時そのままに2ステップを乗りこなす姿には快哉を叫んだ。ビート上で小気味良く弾んだかと思えば、即座にベースラインをしなやかに追いかける縦横無尽な歌声も驚くほど衰えていない。楽曲の多彩さも特筆もので、シガラによるトロピカル・ハウス、ケイトラナダの浮遊R&B、シャイFXのドラムンベース、ダンスホール、90sハウスなど多様だが、ダンス・トラックの合間にはアコギを従えたオーセンティックなミディアムでR&Bシンガーたる本質もしっかり見せる。極め付けはジャックUを下敷きにして自身の代表曲“Fill Me In”を歌う快曲“16”での鮮やかな高速フロウで、これは16年前のデビュー当時と現在を一瞬で地続きにするもの。自身のイメージを巧みに引用しながらトレンドを纏い、フレッシュに再生を遂げた傑作だ。 *池谷昌之

the changing same
こんな時代にこそ輝く2016年のオーセンティックな歌

11年ぶりのアルバムでも、〈さえずり〉を意味するその名に相応しいスウィートで柔らかな歌声は不変。旧知の制作陣が手掛けた楽曲も声質にマッチするオーガニックな仕上がりで、多重コーラスとアコギが絡み合う“Won't Hurt Me”の穏やかさや、ミッシー・エリオット&ティンバランドと久々にタッグを組んだ“Somebody Else Will”の瑞々しさが極上だ。 *池谷

〈変わらなさ〉こそ現在のSWVにおける最大の美点。甘酸っぱいハイトーンと教会マナーな太さを併せ持つ3人のハーモニーはいつまでもあの頃のままで、90年代テイストをモダンに再現する楽曲に乗ってどこまでも駆け上がる。90年代R&Bの象徴といえるグループが、いまなお躍動感溢れる姿でR&Bヴォーカルの醍醐味を聴かせてくれることに感動を覚える一枚。 *池谷

ミゲルやマリ・ミュージックと同じくマーク・ピッツの後押しでメジャー進出したシンガー/ソングライターで、予想に違わずオルタナティヴなR&Bを歌う初作。ウィリー・ハッチ曲を引用した“Permission”など、地声とハイ・ヴォイスを巧みに使い分け、寂寥感漂う楽曲を哀愁込めて歌い上げていく。BJ・ザ・シカゴ・キッドやアンダーソン・パークの並びで聴きたい。 *林

深みのあるヴォーカルでソウル/R&Bリスナーだけを魅了し続けるジャヒームの7作目。ふくよかで包容力漂う歌声の中に哀愁も滲ませた表題曲にまずは男泣き。そして自身に声質の似ているテディペンやルーサーに加え、バリー・ホワイトやメアリーJ・ブライジらの名を歌い込んだ“Songs To Have Sex To”では、ソウルの先達の魂を受け継がんとする意志すら感じる。力作。 *池谷

96年にラフェイスから登場したヴォーカル・グループが新メンバー(4人組)となって20年ぶりに放ったフル・アルバム。ボーイズIIメン直系の折り目正しさは変わらず、カムバックしたマーク・ネルソンが美声と美メロでリスナーの胸を鷲掴みにするあたりも往時のままだ。出世曲“Last Night”のリメイクやブライアン・マックナイト“One Last Cry”のアカペラ・カヴァーも上出来。 *林

112のメンバーによる7年ぶりのソロ作。地元アトランタの新進MCであるリッチ・ホーミー・クワンとの共演、メイスやカール・トーマスを迎えたバッド・ボーイなコラボをはじめ、現行ヒップホップや往時のR&Bに目配せした楽曲を中心にした内容を青臭いヴォーカルでスマートに歌いこなす。スロウ~ミッド群で放たれるモーショナルなナヨ声も彼ならではの魅力だ。 *池谷

十代での華々しいデビューから浮き沈みの激しい人生を経て、不屈の歌姫たる貫禄を得た三十路女性の5作目。そんなドラマが情熱的な歌に反映されるのもファンテイジアの魅力的で、達観したようなスロウ“Ugly”の滋味は彼女にしか出せないもの。折り目正しいソウル・ナンバーでの熱唱やラストの賑やかなゴスペル“I Made It”まで、情と懐の深さは並じゃない。 *池谷