〈ブラジャーのホックを外す時だけ/心の中までわかった気がした〉というジャケットとぴったりの歌い出しに仰天の“真赤”を含む、新潟在住の3ピースによるメジャーからのファースト・アルバム。メロディック・パンクの先人たちの遺伝子を継ぐ優れたメロディーメイク、ダイナミックでスピーディーな演奏、精悍なヴォーカルが持ち味だが、今作では初期オアシスを思わせるスケール感の“恋人ができたんだ”も堂々と披露するなど、バンドの伸びしろを窺わせる。そしてラヴソングというより〈ソング・アバウト・ラヴ〉な詞も大きな特長だ。恋の喜びを屈託なく描くだけでなく、その裏側にある己の不甲斐なさ、弱さにも踏み込む……まではよくあるが、ソングライターである椎木知仁の実体験に基づく詞の格好悪さ、自分勝手さは並大抵ではない。そのディテールが醸す私小説的なリアリティーが肝で、ゆえに涙なしには聴けない“グッバイ・マイマリー”などが生まれるのだ。おもしろい存在になってきた。
My Hair is Bad、初期オアシス思わせるスケール感の楽曲や私小説的な詩世界などバンドの伸びしろ窺わせるメジャー初作
ユニバーサル