コラム

ポスト・クラシカルの始祖ヨハン・ヨハンソン、自身の営みにおける喜びや悲しみをさまざまな音で表現した新作『Orphee』

(C)Jonatan Gretarsson / DG

ポスト・クラシカルの元祖 6年ぶりの待望の新スタジオ録音

 ポスト・クラシカルの代表的アーティストのヨハン・ヨハンソン。様々なバンドで活動していた彼はテレビや映画への楽曲提供などで世に知れ渡り始め、2014年公開された『博士と彼女のセオリー』ではゴールデングローブ賞で作曲賞を受賞。以降もジャンルにとらわれない作曲でコンスタントにリリースを続けている。

JOHANN JOHANNSSON Orphee Deutsche Grammophon(2016)

 そんな彼の2009年より書き始めたという今作は、マックス・リヒターも所属する名門ドイツ・グラモフォンからのリリース。タイトル「Orphée」とは、かの有名なオルフェウス神話の事である。死・蘇生・変化・生命の儚さをテーマにしたこの神話は、アーティストの創作活動を隠喩していると読み取ることもできる。

 楽曲には彼の生活環境の変化、出会いと別れなど、作成に費やした6年間が反映されている。単純な対位法を利用して創り出し、再構築を繰り返したという。作品全体にミニマリズムが取り込まれており、繰り返される初めのフレーズにのせ、様々なフレーズが順番に加わる。それぞれ悲しみ、喜びや希望など様々な感情を表現している。そして加わった音はふと消え去り、またふと現れる。異なる感情のフレーズが加わることで新しく美しいハーモニーを生み出す。まるで元のフレーズを彼に見立て、加わる音が環境の変化、または新しい出来事を表現しているかのようである。ピアノや弦楽器だけではなく、シンセ音やエフェクトを組み込むことで多彩な楽曲が連なる。

 最後に、エンディングとも未来へのオープニングともとれるヴォーカルが入った《Orphic Hymn》の美しいハーモニーを聴くと感無量の一言しか出てこない。アルバムを通して彼の自伝映画を見ているような、幻想的且つ現実的楽曲集。

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