ヨハン・ヨハンソンが彼女のために書き下ろした「Untitled」の世界初録音も!

 今やキラ星の如くいる日本人ピアニストだが、近現代を得意とはしても専門となるとその数は急激に減るのが実情だ。そんな中ポスト・クラシカルを中心に活躍する日本人がいると知ったのは、わりと最近のこと。矢沢朋子という。フランスでブーレーズなど現代音楽演奏の権威クロード・エルフェタワレコ限定盤・PROC-1439で販売中)に現代作品の演奏と楽曲分析を学んでいる本格派だ。加えて1997年にクセナキスが京都賞を受賞した際に《ミスツ》の演奏を任せられるなど、解釈の確かさから作曲者自陣に演奏を依頼されたり曲を提供されることも少なくないという。今回の最新作でも曲の提供を受けているが、その人がまた凄い。『博士と彼女のセオリー』でゴールデングローブ賞作曲賞を受賞したヨハン・ヨハンソンその人だ。彼女に提供したのはピアノとエレクトロニクスのための《Untitled》(T-1)。アンビエントかつオーガニクスにも通じる響きが実に心地よい。

矢沢朋子 Piano Solo "Absolute-MIX" Geisha Farm(2016)

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 最新作では、以前この誌でも取り上げた前作『仏蘭西幻想奇譚』のピアノ一台による響きに特化した作風から、ピアノとエレクトロニクスや、多重録音を駆使したものに変化しているそれを如実に感じられるのが《Kid A》。この名前でピンと来た方はオルタナティブにも造詣が深い方だろう。あのレディオヘッドの名曲だ。原曲を知っていれば思わず唸る事間違いなし。もちろん現代音楽もしっかり収録。リゲティのエチュード《虹》に《解放弦》ノーノと、弦楽器としてのピアノの扱いの上手さを味わえる逸品。そしてジョン・アダムスの《チャイナ・ゲート》はミニマル・ミュージックの古典的名作。実に幅広い作風をカヴァーする矢沢女史の実力に脱帽だ。このアルバムでも彼女の凄さは十分感じられるが、こういった曲ほど生の方が聴き応えが凄い。今度タワーレコード渋谷店でミニ・ライヴがあるとの事。ぜひ生で彼女の音に触れてみてほしい。

 


TOWER RECORDS INFORMATION

矢沢朋子『Piano Solo "Absolute-MIX"』発売記念
ミニLIVE & サイン会

○5/14(土)17:00~
タワーレコード渋谷店 7F CLASSICAL FLOOR
http://tower.jp/store/event/2016/05/003003