10年掛かりの新作 新たな代表作が誕生!

 完成まで10年の歳月がかかったというカート・ローゼンウィンケルの間もなくリリースされる新作『Caipi』は、間違いなく彼の新たな代表作となるだろう。あらゆる楽器を一人で演奏して制作された『Heartcore』(2003年)と同じように自宅スタジオで制作をスタートし、ブラジルにまで赴き、ペドロ・マルティンスアントニオ・ロウレイロらも参加して完成した。

 「自分を深く動かした音楽への長いラヴレターだった。特にミルトン・ナシメントの音楽がね。アルバムが完成する段階に入って、ペドロとそのグループに出会う幸運に恵まれた。アントニオとフレデリコ・エリオドロもいま一緒にバンドでツアーしているよ」

 だが、その出会いまでには、長い一人での制作期間があったという。

 「最初の8年は一人で、完成するには相応しい人の助けが要ると気が付いたのは最終段階になってだった。一日かけてスタジオのセッティングをし、何曲かドラムを入れ、ピアノ、ベース、ギター、それから歌詞を足して、他に何が必要か考える。曲が必要としているものを分かるには沢山の黙想が要るし、時に自分では与えられないものが必要だと分かることもある」

KURT ROSENWINKEL Caipi HeartCore Records/SONG X JAZZ Inc.(2017)

 『Caipi』ではカートのヴォーカルもフィーチャーされ、歌が重要な要素となっている。

 「これまで自分の中にあっていつも分かれていた二つのこと――ジャズ・ミュージシャンとしての人生と、ロックンローラーそして色んな音楽、特に歌詞のある歌を愛する者としての人生がやっと解決にこぎ着けた。遂に自分の音楽を見つけたように感じているんだ」

 生演奏ながらもまるでハウス・ミュージックのようなグルーヴを感じる曲も含まれている。

 「90年代のNYのハウスとアシッド・ジャズとベルリンのテクノの美意識が入っている。僕はベルリンであるDJのテクノを聴いて音楽的に心を入れ替えたよ」

 ゲストとしてエリック・クラプトンの参加も注目だ。

 「エリックはこの物語の重要な一部で、一音でいいから彼がこの音楽の中にいるということを残しておきたいと頼んだら“即興でやる”と言って、紛れもないタッチとサウンドで素晴らしい存在感を刻んでくれたんだ」

 かつてQティップをプロデューサーに迎えて制作された『Heartcore』は、その後、幾度か続編の噂が立ち、多くのリスナーも期待を寄せてきたが、どうやら『Caipi』こそがそうであるようだ。

 「そう、僕の中では『Heartcore II』のようなものだ。自分一人で、個人的なやり方で音楽を発見していく、自分の世界で、自分で大半の楽器を必要に応じて演じるというプロセスに於いては同じだから」

 


LIVE INFO.

2017年4月来日公演予定!
www.songxjazz.com