ルイス・コール・ビッグバンドの衝撃は本当に大きかった。ルイス本人を含む6人の海外メンバーと、日本人6人によるホーンセクションが織りなす、自由自在な演奏。譜面とフリーフォーム、同期と生音、あるいは笑いとシリアス、相反する要素をアクロバティックに結びつける彼の音楽は、ビッグバンドという概念と遊びながら、未来への風穴を開ける痛快なものだった。
そんな彼が、フェイバリットレコードをTOWER VINYL SHIBUYAでハンティング。「最近、プレイヤーを修理したところだから、またレコードを買おうと思ってるんだよね」と話しながら、どんどん手にとっていった10枚のアルバム。そのチョイスには、単に彼自身を作ってきた音楽の歴史の紹介だけでなく、音楽から時代を超えた可能性を旺盛に摂取し続けている〈今〉が濃厚に表れていた。
Michael Jackson『Bad』
――1枚目はマイケル・ジャクソンの『Bad』(87年)ですね。
「アルバム全曲を好きなわけじゃない。でも、いくつかすごくかっこいいグルーヴの曲があるんだ。『Thriller』(82年)以前よりもシンセサイザーが多用されたサウンドで、それが僕にはかっこよく聴こえた。
“Another Part Of Me”が好きなんだよね。(TOWER VINYLで見つけた)このアルバムには知らない曲も入ってるな……」
──これはデラックスエディション(2012年作『Bad: 25th Anniversary Edition』)ですね。
「なるほどね。リミックスバージョンで知ってるのもある。“Leave Me Alone”もいい曲だよ」
──『Bad』は87年リリースだけど、あなたがこれを聴いたのはいくつぐらいのときでした?
「最初にマイケルを聴いたのはいつか? 今、僕は36歳だから、たぶん、27歳か28歳くらい。その前は、たいして気にかけてなかった。ちゃんと聴いたきっかけは忘れたけど、何かがひっかかったんだ。
“The Way You Make Me Feel”のバックトラックはいい。“Liberian Girl”とか“Just Good Friends”あたりは(80年代当時の)スティーヴィー・ワンダーっぽすぎて、ちょっと笑っちゃうけどね。
“Just Another Part Of Me”には、すべてのパーツが結合した良いグルーヴがあるんだ。それが僕が惹きつけられた理由。ワンコードのファンクグルーヴと、いろんなパズルのピースががっちりと組み合わさって、すごくかっこいい音楽を生み出している」
James Brown『Hell』
「その手のファンクグルーヴについては、この人こそが達人。
このアルバムは彼の他の作品に比べると語られることが少なくて見過ごされてる感じだけど、すごくクールな一枚だよ。12歳の頃、すごくよく聴いた(笑)。
アルバム前半の“Coldblooded”、“Hell”、“Sayin’ And Doin’ It”が大好きだった。アルバムの他の曲のことは、実はあんまり覚えてないけど(笑)、“Papa Don’t Take No Mess”もいい曲だったよね。“I Can’t Stand It”も最高の曲。JBのすべてが好きだから、〈JBの100曲〉とかを選ぶのは無理」
──12歳でこのアルバムに出会ったなんて、すごいですね。
「そうだよね(笑)。父にタワーレコードへ連れてってもらい、聴きたいって言ったCDを買ってもらったんじゃなかったかな。
JBを知って夢中になり、他のもいろいろ聴いてみたくなった。自分のお金で初めて買ったJBのアルバムは、タイトルは忘れちゃったけど、“Funky President”が入ってるやつだった(74年作『Reality』)。大好きな曲だよ。
あの頃、テレビで『スターシップ・トゥルーパーズ』※を観ながらJBを聴いて、レゴで宇宙船が戻る基地を作ってたよ(笑)」