2人のギタリストのコントラストが描く、オリン・エヴァンスの野心作。
アップタウンのジャズ・クラブ〈Smoke〉のオーナー、ポール・スタッシュが主宰するスモーク・セッションズ・レコードは、アナログ録音に定評のあるシェア・サウンド・スタジオで、96KHz/24bit のハイレゾ録音をアナログ・テープにミキシングし、ハイレゾ・ダウンロード、CD、重量盤 LPで音質に徹底的にこだわってリリースしている。
オリン・エヴァンス(p)の同レーベルからの3枚目のアルバムは、ハード・バップ色が濃かった前2作から趣を変え、同郷のカート・ローゼンウィンケル(g)と、ケヴィン・ユーヴァンクス(g)をフィーチャーした、コンテンポラリーとハード・バップをハイブリットにブレンドした野心作だ。タイトルの“Knowingishalfthebattle”とは、エヴァンスが子供の頃に熱狂したテレビ・アニメの GIジョーの、エンディングの決めぜりふで、日本では「情報収集も大きな戦いのポイントだ」と訳されていた。ミュージシャンとしてのキャリアを踏み出してからエヴァンスは、この台詞を発展させて音楽にも当てはまると考えた。「音楽の知識を充分に学ぶことは大切だ、だがそれをすべて忘れ去り本能のままに演奏するところに、新たな地平が見える」と学んだそうだ。本能のままのインタープレイを繰り広げるために、本作のメンバーを招集した。ルケス・カーティス(b)、マーク・ホイットフィールド Jr.(ds)の若手リズム陣に、同じく若手のカレブ・カーティス(as,fl)は、新たな刺激をエヴァンスにもたらし、同郷でかつてネオ・ソウル・バンドで活動していたシンガー、Mバリアは2曲でディープなヴォイスを聴かせる。ローゼンウィンケルとユーヴァンクスは《Heavy Hangs the Head that Wears the Crown》で、全く異なるアプローチのスリリングなギター・バトルを聴かせてくれた。エヴァンスのサウンド・デザイナーとしての多彩な才能がフルに発揮された野心作である。