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【ろっくおん!】第24回(1) 今月のレポート盤 NED DOHENY 『Separate Oceans』

ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!

 過ごしやすい陽気が続く5月末のある日。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。おや、明朗な雰囲気のお坊ちゃま風男子と、小柄で饒舌そうなメガネ女子の姿が見えますね。新入生でしょうか。

【今月のレポート盤】

NED DOHENY Separate Oceans Numero(2014)

逸見朝彦「おはようございます、逸見朝彦です! 趣味は映画鑑賞と音楽ブログの閲覧です!」

鮫洲 哲「来るたびに自己紹介するなっつうの! 入部して3週間近く経つんだからよ!」

雑色理佳「そうだよ、逸見ちゃん! もうちょいリラックスしなよ」

鮫洲「雑色は新入りのくせにくつろぎすぎだっつうの!」

逸見「僕、毎日が新鮮で楽しいんです! ところで今日は、あの美人な会長さんは来られないのですか? 僕、いっしょにお話したいんですが……」

鮫洲「お前って思ったことをそのまま口に出すタイプだな。意外とアホか?」

雑色「はいはいはい、それじゃ私ら3人だけで音楽談義に花を咲かせようじゃありませんか! お題はコレですよ!」

鮫洲「お、ネッド・ドヒニー。ジャケは『Hard Candy』っぽいけど、微妙に違うな。水かぶりすぎじゃね!?」

雑色「惜しい! 『Hard Candy』の裏ジャケですね。これをあえて表にするセンスが洒落ていますよね~。見ようによってはチルウェイヴ風ですよ、にゃはは」

鮫洲「そういや、その手のバンドってやたらとジャケのモチーフに水とか海を使うよな!」

逸見「この作品、インディー系ブロガーのクリスタルさんもレヴューをアップしていました! 活動開始から10年間のアンソロジーで、19曲中11曲が未発表音源という物凄い一枚なんですよ!」

鮫洲「もともと寡作な人だから、レア音源をまとめて聴けるだけでヤバイじゃんかよ! しかもクォリティーはバリ高ッ!」

雑色「73年の初作『Ned Doheny』からフォーキー・ソウルな作風でしたけど、76年の次作『Hard Candy』は当時のライト&メロウな風潮とモロにシンクロし、極上のAOR盤として長く愛されていますからね。そんな時代の音源が悪いはずありませんです!」

鮫洲ボズ・スキャッグスボビー・コールドウェルほど良い意味でゴージャスじゃないっつうか、ウェストコースト丸出しの乾いた感じが最高だな!」

逸見「アーバンすぎず、アーシーすぎずの軽やかさは、〈フリー・ソウル〉的ですよね。実際そのコンピ・シリーズにも収録されて再評価を受けましたし……と、クリスタルさんが書いていました!」

雑色「受け売りかよ!? にゃはは」

梅屋敷由乃「皆さ~ん、お紅茶を煎れましたので召し上がれ! あの~、確かネッドさんって他者に曲提供したり、カヴァーされたりすることも多い方ですよね?」

逸見「あ、どうもです! そう言えば、つい最近もビン・ジ・リンが取り上げていましたよね。あと少し意外なところでは、東京事変が“Get It Up For Love”をカヴァーしている……とクリ」

雑色「はいはい、クリスタルさんね!」

鮫洲「提供曲でいちばん有名なのは、チャカ・カーンの歌唱でお馴染みの“What Cha' Gonna Do For Me”だな。アヴェレージ・ホワイト・バンドも披露しているし、もはやクラシックっつってもOKな超名曲!」

雑色「本作にセルフ・カヴァーが収録されていますが、このヴァージョンは初出ですね! これまた素晴らしいメロウなグルーヴっぷり!」

鮫洲デイヴ・メイソンが取り上げた“On And On”は『Ned Doheny』でも歌っていたけど、ここに入っているのはデモ音源じゃんか! この編集盤、マジでアガるわ!」

梅屋敷「私、失礼ながらこれまでしっかり聴いたことがありませんでしたの。でも、アコースティック・ギター主体のグルーヴ感が潮風っぽくて、〈ジャック・ジョンソン以降〉と括られるサーフ・ロック系の元祖みたいな雰囲気ですね」

雑色「梅ちゃん先輩、それ逸見ちゃんより的を射てますよ!」

梅屋敷「あらあら、そうかしら。それに爽やかなギターのカッティングと甘くて瑞々しいヴォーカルの感じが、どこかネオアコにも通じませんか?」

逸見「通じます、通じます! 僕もそう思っていました!」

雑色「はいはい」

 珍妙な個性を発揮する2名の加入で、この先もずいぶんと賑やかになりそうな予感。新生〈ロッ研〉の門出を祝いつつ、今日はここまでといたしましょう。 【つづく】

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