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聴き逃せない輝きを放つEccyワークス

 ある種の匿名性と美麗なループで聴かせるインスト主導のお洒落な音楽として、かつてNujabesらの影響下に沸き起こった〈ジャジー・ヒップホップ〉ブーム。2000年代半ばからはその範疇で括られる日本のビートメイカーも増え、そこに日本語ラップが乗るケースも増えていくことになるのだが、なかでも、いきなりShing02をフィーチャーした“ULTIMATE HIGH”(2006年)で姿を現したEccyは衝撃だった。そこで集めた期待に応えた初のアルバム『Floating Like Incense』(2007年)では、メシアTHEフライサイプレス上野らに加え、Candlehaiiro(現在の灰色デ・ロッシ)、オロカモノポテチ、自身のグループであるRESERVOIR VOXXあるぱちかぶと他)といった新進を紹介し、ラップも聴かせることに注力した質の高い仕事ぶりを見せつけている。

 その後も主宰するSLYEから環ROYとのコラボ盤やhaiiro de rossiやオロカモノポテチ、あるぱちかぶとらの作品を送り出していくが、自身の2作目『Blood The Wave』(2009年)ではオー・ノーらも迎え、インストも増やして当時のストーンズ・スロウプラグ・リサーチ的な振り幅を見せている。その志向は当時のフライング・ロータスらにシンクロしたビート作品『Loovia Mythos』(2009年)へと繋がり、やがては創造意欲の赴くままにハイパーダブ的なベース・ミュージックへも踏み出していくのだった。

 近年はマイペースに制作やDJ活動を続けつつ、ZONE THE DARKNESS時代から縁のあったZORNの“Delivery”(2014年)や、NORMANDIE GANG BANDのリミックスなどを手掛けてもきたEccy。ゆえに『Narrative Sound Approach』は日本語ラップ好きにとっての大きなカムバック作と捉えることもできるはず。今後はこちら方面での活躍にも期待を寄せていきたいものだ。

NORMANDIE GANG BANDの2015年作『Reincarnation -輪廻転生-』に収録されたEccyによる“光 - HIKARI”のリミックス