歌とダンスを持ち味とする男性グループが日本でもようやく層を厚くしはじめた……という状況はかねてから本誌でもお伝えしている通りだが、それをどう呼ぶかはまた別の話として、アイドル性も怠りなく蓄えながら活躍するヴォーカル&ダンス・グループのうち、いままさに一段階上へ飛躍しようとしているのがこのX4だという意見に異論はないだろう。言うまでもなく、かねてから俳優としても活動してきた中心メンバーのYUYA(松下優也)はNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」に起用されたことで脚光を浴び、いままでになく認知を広げると共に、ファン層を拡大している真っ最中。そんなチャンスをきっかけに、彼の所属するグループへの注目度も必然的にアップしているというわけだ。
とはいえ、彼らはそこに寄りかかるだけのグループではない。もともとソロ・シンガーとしてメジャーの舞台も経験しているYUYAはもちろん、メンバーのKODAI、T-MAX、SHOTA、JUKIYAもそれぞれに歌やダンス、演技やモデルなどで研鑽を積んできた面々。関西発を謳って2015年に結成されるや、デビュー作『XVISION』はインディーながらもiTunesのR&Bチャートで首位を獲得し、楽曲のクォリティーとパフォーマンスのスキルで魅せる本格派として早くから注目されていたのだ。本質にこだわった実力の程は、結成時から現在まで精力的に重ねてきたライヴ(ワンマンだけでもおよそ100本!)の賜物だろう。
メジャー・デビューを経て、現在の5人編成となった昨年は、R&Bをベースとするもともとの音楽性をより拡張して臨んだメジャー・ファースト・アルバム『Funk, Dunk, Punk』がオリコン週間10位のヒットを記録。続くミニ・アルバム『4 MY BABY』も同9位を獲得。とコンスタントにリリースを重ねながら着実にファンベースを拡大している様子は窺える。そんな変化と躍進の2016年をウィンター・シングル“キズナ”で締め括ったX4が、年明けからの連続配信を経て完成させたメジャー・セカンド・フル・アルバムこそ、ここで紹介する『Xross Mate』である。
語りによる導入の“Xross Mate”が誘うのは、多彩な意匠と共に濃密さを増した新しいX4の世界だ。チェインスモーカーズ風のトレンディーなダンス・ポップ“i want you back”に始まり、ニュー・ジャック風味も絡めたザッピーで24Kなファンク“O”が賑やかに続く前半は、屈託なく同時代性をアピールしながら彼ら本来のアーバンな持ち味を増強してみせるものでもある。冒頭の〈Enter, selecta〉の声ネタにニヤリとさせられる“Rockin' It”は煽情的なラップ・パートも気持ち良い軟派なガラージ・ハウスだし、ラテン風味の哀愁を湛えて走る“Steel love”、YUYAの詞曲によるロッキッシュな“free fall cry”など攻めたナンバーが並ぶ一方、切実な泣きのメロディーが美しい“i don't know”や、厚みのあるコーラスで聴かせるアコースティック仕立ての“Baby it's Love”などスロウ~バラードたちも充実。なかでも静謐なトラックが印象的な“サヨナラ愛してた”は、ソロ時代のYUYAを全面プロデュースしてきたJin Nakamuraとの手合わせがふたたび実現した重厚なナンバー(Jin Nakamuraによるもう1曲“Once More Dance”ではYUYAが作詞)というのも往年のファンには重要なポイントじゃないだろうか。さらにボートラ(通常盤のみ)として、インディーでの初作『XVISION』に収録されていた“Heaven”とKODAI作詞の“Bang A Gong”が現編成で新録されているのも注目だ。
なお、表題にある〈クロスメイト〉とは、さまざまな場で交差して出会ったX4メンバーやファンたちを示す言葉だという。いろいろな場で育まれてきた強い“キズナ”は、この『Xross Mate』の完成度を以て、さらに大きく広がっていくことだろう。
X4
YUYA、KODAI、T-MAX、SHOTA、JUKIYAから成る関西発のヴォーカル&ダンス・グループ。ソロ・シンガー/俳優としてキャリアのあるYUYA(松下優也)を中心として2015年に結成され、同年2月にアルバム『XVISION』を配信リリース。10月にシングル“Killing Me”でメジャー・デビューを果たす。2016年2月より現在の5人編成となり、3月のシングル“Party Up!!”を経て、5月のメジャー初アルバム『Funk, Dunk, Punk』がオリコン週間10位のヒットを記録。精力的にツアーを展開する傍ら、10月のミニ・アルバム『4 MY BABY』、12月のシングル“キズナ”も連続ヒットさせている。YUYAの俳優業も話題のなか、ニュー・アルバム『Xross Mate』(XVISION)を3月8日にリリースする。