INTERVIEW

鬼怒無月 『マイ・バック・ページズ』

極上の演奏を最高の録音で捉え、極限の美を追究したアルバム

鬼怒無月 『マイ・バック・ページズ』

 90年に自己のグループ、ボンデージフルーツを結成し、現在まで6枚のアルバムを発表。その他にも数々のユニット、デュオ、ソロなど精力的に活動を展開する永遠のギター少年、鬼怒無月。歪ませたエレクトリック・ギターによるフリーキーな世界、アルゼンチンタンゴの鬼才アストル・ピアソラへの傾倒など、とかく新宿ピットイン系のアヴァンギャルドなイメージが先行する彼だが、本作はスタンダードな楽曲を中心にアコースティック・ギターの美しさを追求したメロディアスなアルバムである。

 「ジャズとカテゴライズされるジャンルで長年活動していながら、スタンダード・ナンバーをソロでアルバム1枚レコーディングしたことはなかったなあ、と気がつきまして…(笑)。やってみると、メロディを弾くことの難しさを実感しますね。選んだ素材はヴォーカル曲が多いので、聴く人は自分が歌うときのブレス感や節回しで聴くでしょ? そのイメージを崩しちゃいけませんからね。さらにそこへ自分なりの歌心を込めなくてはならない」

鬼怒無月 マイ・バック・ページズ B.J.L.(2014)

※試聴はこちら 

 手の込んだアレンジや激しく自己主張するギター・ソロよりもシンプルなメロディを重視した本作は、しなやかで美しい、旅するアルバム。

 「オリジナル曲ももちろん大切ですが、だれもが知っている有名曲には聴く人を選ばないという利点があります。また、インストゥルメンタルであることにより、言葉の壁を超えて世界中で聴いてもらえる。それをきっかけとして曲に忍ばせてある僕ならではのエッセンスを感じとってもらえれば幸いです」

【参考動画】鬼怒無月によるギター・ソロ演奏 “Blessed”

 

 そして特筆すべきはこのアルバムの音がとても良いこと。演奏の出音が素晴らしいのは言うまでもなく、弦のアタックからサスティン、リリースまでのナチュラルな衰減、控えめながら包み込むような残響、全てのバランスが抜群なのである。

 「演奏面ではしっかりとスチール弦を響かせることに集中しました。ブルーグラスのギタリストで、トニー・ライスというクラレンス・ホワイトの流れを汲む人がいるのですが、僕は彼のプレイにかなり影響を受けています。それは、このアルバム全体に及んでいると言っても過言ではありません。それから、レコーディングした音響ハウスは、これまで何度か使っていたので勝手が分かっているうえに、ここには良い音で録るための機材とノウハウの蓄積があるんです。だから今回のサウンドは確信的に狙って録ったと言えます(笑)」

 極上の演奏を最高の録音で捉え、極限の美を追究したのがこのアルバム。ぜひとも幅広い音楽ファンに聴いていただきたい。

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