INTERVIEW

スワヴェク・ヤスクウケ『Senne』 ポーランドのジャズ・ピアニストが新たな段階へ突入、音色への好奇心を語る

スワヴェク・ヤスクウケ『Senne』

Photo:Joanna Wizmur

 

前作『Sea』の続きにして進化した新たな音色

 ポーランドのジャズ・ピアニスト、スワヴェク・ヤスクウケの『Sea』を初めて耳にしたとき、ピアノ・ソロ作というよりも、ピアノが発する軋みや漏れ聞こえる環境音も含めて、反復性のあるミニマルでアンビエントな音楽として聴いた。グルーヴ感もあって、タッチも繊細というより打楽器的で、エレクトロニック・ミュージックのように聞こえる瞬間もあった。

 「『Sea』は自分の仕事場で自分のピアノで作りたいと思った、あまり良いピアノではないが、大好きでずっとそれで作曲していたからね。とりあえずマイク2本で試しで録ってみたら、海みたいにいろんな音、綺麗じゃない音もで出て、すごくいいと思ったよ」

 ジャズの教育に熱心なポーランドで、名門のカトヴィツェ音楽大学に進む実力を持ちながら、「大学にいると幅が狭くなる」と退学し、2年間ヨーロッパを放浪してさまざまな場所でさまざまな音楽を演奏したという。そして、ポーランドに戻った彼の才能を見出したのが、国を代表するサックス奏者のズビグニェフ・ナミスウォフスキだった。彼と一緒に演奏する機会を得て、プロとして本格的に活動を始めた。

 「僕の音楽を3つの言葉で説明すると、シークエンス、音色、空間を作ること。特にシークエンスはリラックスして頭がボーッとなる瞬間が面白いのです」

SLAWEK JASKULKE Senne コアポート(2017)

 新作『SENNE』(原題)は、その彼の音楽の特性を、より構造的に発展させたピアノ・ソロ作品である。

 「今回は細かいところまで考えて録音したもので、そのために購入した機材もあるし、チューニングも432Hzを選んで録音した。スタジオも選んだ。音はアナログテープで録り、デジタル的なものは一切使ってないし、録音した音楽も何も編集していない」

 バロック時代のチューニングを採用して、より柔らかな音色を得て、シークエンスの連続性と残響音が織り成す空間性が極まった作品だ。時折メディアで比較されるニルス・フラムやハウシュカらの音楽を賞賛しつつも、自分はまったく違うことをしていると断言する。ヤスクウケは作曲家でもある。彼の演奏が常に構造や形を意識したものであり、即興演奏のエモーションに流れない理由もそこにある。

 「いまは自分の作曲家のキャリアは新しい段階にあり、そこで興味を持っているのは音色です」

 クリストフ・コメダからショパンにまで遡るポーランドの作曲家の軌跡を追い、いまは大学で教える立場でもあるヤスクウケであるが、「音楽を聴くことは大学では学べない、人生の経験でしかない」と言う。その経験から生まれた新たな曲を我々はまもなく聴けることだろう。

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