〈ブリッジ〉する意思が横溢した最新作『Beautiful Life』

ざっと彼女のリーダー作を書き留めてみたが、その内訳を見れば、リーヴスが本当に幅広い設定を通して思うまま自分の歌を披露してきたのがわかるだろう。そして、そうした資質がさらに今様な環境のもとで開花したのが、ブルー・ノートからコンコードに移籍して発表した5年ぶりのアルバムとなる『Beautiful Life』(2013年)だ。プロデュースは、エスペランサ・スポルディングを自身のツアーにメンバーとして同行させたこともあるドラマーのテリ・リン・キャリントン、そしてルーツソランジュの作品プロデュースをしているレイ・アングリーが務めている。

そのオープナーは、リオン・ウェアが書いたマーヴィン・ゲイ“I Want You”。それ、もう一つのアダルトな女性の聖愛曲に高められていると言いたくなるか。他にも、スティーヴィー・ニックスボブ・マーリーアーニー・ディフランコらのポップソングがオリジナルやスタンダードと共に麗しく改新された形で並んでいて、その様はまさに〈ブリッジ〉する意思が横溢していた。そして、その求めるところはゲストの顔ぶれを見ても明白だ。ロバート・グラスパーやリチャード・ボナ、エスペランサ・スポルティング(楽曲も提供)にジェラルド・クレイトンといった新しいジャズの風を感じさせる奏者たちが参加。また、グレゴリー・ポーターやレイラ・ハサウェイといったシンガーも入り、華を添えている。なんとも豪華な同作で、彼女はグラミー賞のベスト・ジャズ・ヴォーカル部門を受賞した。

2013年作『Beautiful Life』収録曲“I Want You”
 
2013年作『Beautiful Life』収録曲“Dreams”
 

そんなリーヴスの今回の来日公演は、その近作をフォローするものであり、『Beautiful Life』のレコーディングに関与している面々とのステージとなる。ちなみに、そのメンバーはここ数年リーヴスを支えている不動のワーキング・バンドの構成員だ――キーボード奏者兼音楽監督のピーター・マーティンはテリ・リン・キャリトンのバンドにも属する名手。昨年2月に東京・COTTON CLUBで自身の公演を行った彼は、『Beautiful Life』では一部でアレンジを担当している。そしてブラジル人ギター奏者のホメロ・ルバンボは、ブラジリアン・フレイヴァーが必要な際のNYジャズ界のファースト・コールと言える存在で、リーヴスとは『Bridges』からの付き合いを持つ。またレジナルド・ヴィールは、大西順子ウィントン・マルサリスアーマッド・ジャマルのバンドに所属してきた敏腕ジャズ・ベーシストであるし、ドラマーのテリオン・ガリーTOKU菊地成孔を伴う大西順子のブルーノート東京公演でも叩いている御仁。スネアを2つ並べる彼は、ヒップホップ時代のジャズ・ドラミングを具現できる最たる実力者であるが、そんな奏者を平然と抱え、ガリーもとても嬉しそうに叩いているところにも、リーヴスの表現が持つキャパシティーの大きさは表れている。

ダイアン・リーヴスの2014年のライヴ映像
 

かような辣腕たちを思うまま掌握し、リーヴスは私の考える精気と潤いに満ちたヴォーカル表現を鋭意送り出す。そして、そこからは〈感性としてのジャズ〉が瑞々しく浮かび上がり、聴き手を〈体験〉という好奇の行為へと誘う。また、歌と演奏が綱引きし合うパフォーマンスは、現代のジャズを成り立たせる重要要件をぽっかり浮かび上がらせるはずだ。

 


ダイアン・リーヴスをリスペクトするアーティストからコメントが届いています!

from グレゴリー・ポーター

僕は、自分でも意識しないうちに、見せかけでない正真正銘のアーティストを求めるようになってきたのだけれど、ダイアン・リーヴスは、本当にとても気に入っているシンガーの一人だよ。

 

from キャンディス・スプリングス

ダイアン・リーヴス……ワォ、なんて素晴しい才能を持つ人なの! 私は長年、彼女のファンなの。5月にブルーノート東京で会えるなんて羨ましいわ!

 

from テリ・リン・キャリトン

ダイアン・リーヴスはジャズ・シーンにおいて、もっともパワフルな声を持つ唯一無二の存在。彼女は常にスピリットに動かされていて、オーディエンスは喜んで彼女のミュージカル・ジャーニーの道連れになるの。ステージではダイアンが培ったスキルや夢、欲望をすべてさらけ出してリスナーを魅了する。ジャズ・シーンでは無視できない存在だわ。

 

from リチャード・ボナ

ダイアンは現代において影響力のあるアーティストの一人で、ただただ素晴らしい。ぜひ公演に足を運んで!

 


Live Infomation
ダイアン・リーヴス

5月29日(月)~31日(水)@ブルーノート東京
[1st] Open5:30pm Start6:30pm 
[2nd] Open8:20pm Start9:00pm
料金:自由席 8,800円(税込)
※指定席の料金は下記リンク先を参照
★予約はこちら

6月2日(金)@新神戸オリエンタル劇場
開場18:20/開演19:00~20:30
料金:一般10,000円/高校生以下5,000円 (当日は1,000円高) ※全席指定
未就学児入場不可
★詳細はこちら

6月3日(土)@名古屋ブルーノート
[1st] Open4:00pm Start5:00pm 
[2nd] Open7:00pm Start8:00pm
料金:8,900円(税込)
※指定席の料金は下記リンク先を参照
★予約はこちら