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ドラマー、プロデューサー、ラッパー、といくつもの顔を持つNYの音楽家、カッサ・オーバーオール。ジャズ・ドラマーとして活躍し、アート・リンゼイのバック・バンドに参加しながら、自身の作品ではジャズとヒップホップが混然一体となった唯一無二の音楽を作り上げている。

そんな彼の新作『I Think I’m Good』は、2020年2月に行った来日公演の成功も追い風となって、ここ日本でも評判のアルバムだ。ジョエル・ロス(ヴィブラフォン)、セオ・クロッカー(トランペット)、アーロン・パークス(ピアノ)、BIGYUKI(シンセサイザー)、さらにはヴィジェイ・アイヤー(ローズ・ピアノ)など、NYのトップ・プレイヤーたちが参加した本作には、〈ジャズとヒップホップの新たな弁証法〉と言うべき新鮮な音があふれている。

今回は、カッサ・オーバーオールというミュージシャンと『I Think I’m Good』というアルバムを掘り下げるべく、TAMTAMのドラマーである高橋アフィに話を訊いた。同じドラマーとして、本作のサウンドには大いに驚かされたという高橋が、カッサの作家性と挑戦に深く迫る(なおTAMTAMは、現在待望の新作を制作中だとか!)。

KASSA OVERALL I Think I’m Good Brownswood/Beat(2020)

 

〈コンポーズするドラマー〉で〈バックパック・ジャズ・プロデューサー〉のカッサ・オーバーオール

――2月に刊行された「Jazz The New Chapter 6」の〈DRUMMER-COMPOSERS〉という特集に、アフィさんは寄稿されていますよね。カッサのインタビューも掲載されていて、まさに彼は〈コンポーズするドラマー〉だなと。

「〈ドラマー〉という括りだと結構特殊な人です。というのも、ドラムを最後に録音するらしいんですよ。

一般的にジャズでは即興性や肉体性、〈対話〉の化学反応を重視するので、〈せーの〉で録ることが多いんですけど、カッサはちがう。このアルバムは、プレイヤーどうしのコミュニケーションが前提になっていないんです。いろいろな人の演奏をコラージュして、エレクトロニックな打ち込みを入れて、最後に自分のジャズ・ドラムで帳尻を合わせている。

音色はジャズっぽいし、ルーツもジャズなんですけど、かなりモダンな、聞いたことのないような作り方をしていますね」

――ロックなどはリズム録り、ベーシック・レコーディングから入るわけじゃないですか。ヒップホップも普通、ビートが先にある。カッサの場合、そのプロセスが逆向きだというのはおもしろい。

「同じドラマーのクリス・デイヴやマカヤ・マクレイヴンは、自分のドラム演奏をちゃんとドラムとして録音のなかに置いている。

けど、カッサは自分の演奏をも素材として見ていますね。すべての音を素材として扱ってエディットしつつ、それらを肉体的に並べ直しているのが変わっているなと。トータスのようなポスト・プロダクションの要素と肉体的な要素が、かなり高次元で混ざっている。

ジャズっぽいけど、エレクトロっぽくもあるし、歌モノでもある、みたいな複雑さがありますね」

――マカヤはセッションの録音をエディットしているわけですけど、カッサはよりヒップホップ・プロデューサー的ですよね。

「彼は自分のことを〈バックパック・ジャズ・プロデューサー〉と言っていますよね。マカヤは近いと思いますが、彼は最終的にライブ感を大切に録っている。

カッサはライブ感とエディット感の混ぜ方がより複雑なんです。その境界線が曖昧になることを楽しんでいる感じ。コラージュ作品としてのおもしろさがあるけど、しっかりジャズだっていうところがおもしろい」

 

常にジャズで、常にヒップホップ

――カッサはインタビューで〈ジャズとヒップホップが別々だという考えを修正した〉〈もはやジャズとヒップホップを混ぜているとさえ考えない〉と語っていて、『I Think I’m Good』ではそれが有限実行されていると思いました。

「前作『Go Get Ice Cream And Listen To Jazz』(2019年)にはジャズのビートをヒップホップ的に置き直している側面があったんですが、今回はその境目をなくしている。〈どうやったんだろう?〉と思ったら、常にエレクトロニックやヒップホップのビートが鳴っていて、同時にジャズのビートも鳴っているんですよね。〈混ざっている〉というよりも、〈常にジャズで、常にヒップホップ〉みたい状況が発生しているから、すごいの作っちゃったなって」

――ここまでジャズとトラップがうまく溶け合った音楽は初めて聴きました。人工的で機械的なトラップのビートって、肉体的な音楽とは相性が悪いだろうなと思っていたので。

「そうですね。これまでジャズとヒップホップの融合を試みてきた人たちは、J・ディラからの影響が強い。でも、カッサが好きなプロデューサーはマッドリブとカニエ・ウェストなんだそうです。たぶん、エレクトロ以降のデジタルなビートを使ったカニエが好きなんだろうなと」

――『Graduation』(2007年)以降ですよね。

「エレクトロなヒップホップの質感からの影響をすごく感じるんです。そういう点では、(トランぺッターの)クリスチャン・スコットに通じるところがある。クリスチャン・スコットはカッサとほぼ同世代で、彼もカニエが好きなんです。

今回カッサが表現しているメンタルや内面の世界が、カニエの音楽とうまく合ったのかな、とも思いました」

――カニエには『808s & Heartbreak』(2008年)という、悲しみを歌ったエレクトロニック・アルバムがありますからね。カッサは新作について内省的だと言っていて、カニエに共感するのもよくわかります。

「トラップとジャズを混ぜることについて言うと、自分の音楽を〈トラップ・ハウス・ジャズ〉と呼ぶマセーゴがいますよね。ただ、カッサの音楽にはマセーゴよりももっとコンテンポラリーなコード感がありますし、さらにトラップを暗さや内面的な表現が許されるジャンルとしても見ているんだろうなと。

マセーゴの2020年のシングル“King’s Rant”

カニエ好きということ言えば、オートチューンをめちゃくちゃ使っています。カッサはラッパーとしてのキャリアが長いようですし」

――ele-kingのインタビューでは、元カノとヒップホップ・グループをやっていたと語っています。

「ラッパーとしてクール・A.D.ともユニットを組んでいますね。〈あっ、ここで聴いてた〉と思いました。ドラマーのテリ・リン・キャリントンの〈Tiny Desk Concert〉には、ラッパーとして出演しています。だから、ラップとドラムの両方をしっかりできているのが、このアルバムなんだなって」

クール・A.D.とカッサ・オーバーオールによるユニット、クール&カッスの2013年のシングル“Pleasance (WDGAF)”

テリ・リン・キャリントンの〈Tiny Desk Concert〉でのパフォーマンス映像

 

自分の演奏を素材として扱う革命的ジャズ・ドラマー

――〈コンポーズするドラマー〉に話を戻すと、ジャズの世界には、作曲をしてリーダー作も録るドラマーというのは昔からいたわけですよね。でも新世代ドラマーたちの新しさは、プロデューサー的な視点も持っている、という点です。

「そうですね。昔は作曲とリズムや音像を別で考えている人が多い印象だったんですが、新生代ドラマーたちはドラマーだからこそできるリズムや音像をひとつの軸に作曲していて、そこが新しさだし、プロデューサー的な視点だと思います。たぶん、マーク・ジュリアナやクリス・デイヴなどは自分のドラムの肉体性を作曲の軸としながら、同時にトラックの最終調整としても使っています。

ただ、カッサには自分のドラムをも素材として見る視点がある。ハイエイタス・カイヨーテのペリン・モスもその印象で、リズムや音像をさらにポスト・プロダクションしているんですよね。ライブ感の強いジャズ分野からそういうドラマーが出て来たのは革命的だと思います」

Cubaseが制作した映像作品「Recording In Just 10 Minutes」 ハイエイタス・カイヨーテのペリン・モスがレコーディングやプログラミングを行う様子を観ることができる

――ドラマーとしてのカッサについてはどう思いますか?

「音色や演奏でおもしろいのは、いわゆる現代的な〈ジャンル性〉をあんまり出さないようにしているところ。強いて言うなら、〈ジャズ感〉をものすごく出している。音色やフィールをジャズのままにして、エレクトロな音色とうまく混ざるように気をつけているんだろうなと。

いまジャズ・ドラムをモダンにしようとすると、どうしてもビート・ミュージックっぽさを入れたくなってしまうんですよ。でも、カッサはスタンダードなジャズ・ドラム自体のおもしろさをちゃんと意識して、モダンなものにして叩いている。

4曲目の“I Know You See Me”にはドラムとラップがユニゾンしているところがあって、〈ジャズ・ドラムとラップのフィールって一緒だよね〉みたいなことを打ち出しているんです。トラップ・ビートの上で伝統的なジャズ・ドラムとラップを並べるところがすごく特徴的だし、おもしろい」

『I Think I’m Good』収録曲“I Know You See Me (Feat. J Hoard & Melanie Charles)”

――ラッパーでもあるからこその感覚なんでしょうね。

「ここまでラッパーとしてもしっかりやれるプレイヤーは、ほとんどいないと思います。アルバムでは、ドラムを叩いていない曲もありますから」

 

これこそが〈トラップ・ジャズ〉

――僕はこの作品がジャイルス・ピーターソンのブラウンズウッドから出ると聞いて、カッサのことをイギリス人だと思ったんです。カッサはNYのミュージシャンですが、彼の音楽には、いまのUKジャズに通じるごちゃまぜ感があるので。

「ただ参加しているミュージシャンたちは、すごくNYっぽいですよね」

――NY人脈ですね。

「ルーツをちゃんと大切にしている人が多い。カッサの音楽に寄せてもらうのではなく、〈あなたのハープを弾いてほしい〉とか、そういう呼び方をしているんだろうなと。

彼らが音楽的な濃度や、ある種の〈ジャンル性〉を出していて、カッサはそのレイヤーを複雑に重ねてエディットしている。で、カッサ自身のドラムは、現代の流れにわざと逆らうような〈どジャズ〉っていう。だからジャズ・ドラムというか、ジャズ自体のおもしろさを新たに発掘しようとしている人だと思います。

その一方で、ビートに〈演奏感〉を加えることに関して新しい次元にいっているのがすごい。もっと早く出てきてほしかったし、こういうのが〈トラップ・ジャズ〉ですよね」

――アフィさんがおっしゃるように、ヴィジェイ・アイヤーからジョエル・ロスまで、現在のNYを代表する演奏家たちが参加しているわけですが、〈この部分だけをちょっと弾いてほしい〉という外部発注的な発想を感じないんですよね。

「こういうコラージュ/エディット的な作品って肉体性がなくなりやすいんですけど、ちゃんと肉体性があるし、メンバーの顔が見えるのもすごい。〈無理だろう〉っていうことを実現しているアルバムだと思います」

 

人が自由に出入りする、風通しの良いアルバム『I Think I’m Good』

――アフィさん的に、おもしろかった曲はどれですか?

「さっき言ったことと被りますけど、4曲目の“I Know You See Me”。ラップとドラムがそのまま置き換わるところにびっくりしました。BIGYUKIのシンセ・ベースがウッド・ベースと交互に出てくるので、ずっとヒップホップとジャズが混ざっているような曲ですね。

そして、6曲目の“Show Me A Prison”。暗めの曲調で、激しくドラムを叩きそうな曲なんですけど、カッサはドラムを叩いていない。エモーショナルなものを、パーカッションを重ねることで表現していて、すごく自制心があるなと。プロデューサーとして全体を見渡せるセンスの良さを感じました。

『I Think I’m Good』収録曲“Show Me A Prison (Feat. J Hoard & Angela Davis)”

ちなみに、この曲の最後にはアンジェラ・デイヴィスからのボイス・メールが入っているんですよね」

――黒人の権利のために闘った、政治活動家でブラックパンサー党員ですね。マルクシストでフェミニスト。アメリカ左派の超重要人物です。

「〈すごいな、どんなことを言ってるんだろう?〉と思ったら、〈元気? あなたを応援してるわ、頑張って〉くらいのことしか言ってないから、〈あれ~っ?〉って(笑)。

この曲の歌詞は暗めで、アルバム全体もシリアスなんですけど、そんななかでこうやって、ちょっと抜いた感じもある。バランス感覚がすごいですよね。クリスチャン・スコットはこう、ガッといくわけじゃないですか」

――彼の作品はめちゃくちゃシリアスですね。

「カッサは風通しの良さをすごく意識していそう。人の出入りの自由な感じがするんです。

それとおもしろかったのは、10曲目の“The Best Of Life”。ジョー・ダイソンっていうクリスチャン・スコットのバンドでも叩いているドラマーが、ゴリゴリに現代のビート以降のドラム、打ち込みライクなドラムを叩いています。で、アウトロだけジャズ・ドラム。これはたぶん、カッサですね。打ち込みっぽいドラムは絶対に叩かないんだなって。プレイヤーとして、それぞれのキャラクターをしっかり活かしている。

国内盤ボーナス・トラックの“Free Morgan”もすごいんですよ。モーガン・グエリンがフリーキーなサックスを吹いて、終わった後にみんなでわちゃわちゃ言っているのが聴こえてくるだけの曲なんですけど、これを曲とするのは独特なバランス感覚ですよね。ボーナス・トラックに、自分がほとんど参加していない曲を入れるんだって(笑)」

『I Think I’m Good』収録曲“The Best Of Life (Feat. Aaron Parks)”

――ボーナス・トラックにしろ、アンジェラ・デイヴィスのボイス・メールにしろ、そのカジュアルさはかなりヒップホップ的ですよね。ヒップホップ・アルバムのインタールードやスキットの感じ。

「たぶん、サンプリングとかコラージュとかの事故、偶発性みたいなものも、ジャズ的な要素と捉えているのではないでしょうか。

5曲目の“Sleeping On The Train”は、〈メンバー全員、テンポを何も聴いていないんじゃないか?〉という曲で。最終的にドラムがうまいこと合わせているから、曲が成り立っているのですが、もしかしたらバンスリ・フルートのソロを録って、その後にピアノを録って、ドラムも録った、みたいな流れなんじゃないかな。〈最終的な完成形、どう見えていたんだろう?〉って思いながら聴きました(笑)。ただ演奏も全員しなやかで、すごくいい曲なんですよ」

――親しみやすいけど、実験的なサウンドが詰まったレコードですよね。

『I Think I’m Good』収録曲“Sleeping On The Train”

 

今後より重要になっていく高レヴェルのジャズ・プロデューサー

――そろそろ、まとめに入りましょうか。カッサ・オーバーオールという音楽家をどう思いますか?

「やっと〈ジャズのプロデューサー〉として高レヴェルの人が出てきたなと。今後、カッサはより重要になっていくと思います。

個人的には、サイドマンとして活躍するより、どんどん自分の作品を作ってもらいたい。ジャズ・ミュージシャンとしてはもちろん素晴らしいんですけど、プロデューサーとしてすごいレヴェルなので」

――またマカヤを引き合いに出すと、彼はやっぱりプレイヤーとしての個性が強いと思うんです。その点、カッサはプレイヤーとプロデューサーの感覚がもっと均等で、半々な感じ。人格が分かれているからこそ、ライブは難しそうだと思いました。ライブは楽器を持ち替えながらやっていたそうですね。

「(2月に開催された)来日公演は観られませんでしたけど、いろいろな人が入れ替わり立ち替わり演奏しているこのアルバムと、不定形だけどどんどん音楽ができていっているような彼のライブの形式は、意識的に揃えられているんだと思います。再現性もありつつ、ショーとして見せるためにいろいろと変化していくところを見せる。アルバムとライブの印象は思っていたより近いんだけど、それぞれ出力の仕方がちがう、というか。だから、すごく大変な道を選んだなって思います(笑)。

カッサ・オーバーオールの来日公演の映像

前作は、より〈曲〉って感じがしましたけど、今回はミュージシャンがたくさんいるなかで曲が生まれていって、次に繋がっていく瞬間をパッケージしている感じです」

――一曲のなかで、ぶつ切りされた要素がいろいろ出てくるので、その説明は腑に落ちます。他にアフィさんが注目したポイントは?

「訳詞を読んで、歌詞も良いなと思いました。アルバム本編最後の、亡くなったジェリ・アレンに捧げた曲(“Was She Happy (For Geri Allen)”)も、バックグラウンド込みで素晴らしいですよね」

『I Think I’m Good』収録曲“Was She Happy (For Geri Allen) (Feat.Vijay Iyer)” ジャズ・ピアニストのジェリ・アレンは教育者としても尊敬されており、カッサ・オーバーオールとヴィジェイ・アイヤーとは共演経験がある。2017年に逝去

――カッサとヴィジェイというジェリ・アレンを尊敬する2人が、ディナー中に交わした会話から生まれた曲なんですよね。

「カッサはラッパーでもあるわけで、詩人として本当に存在感がありますね。

全体的に暗いけど、最後には未来に向かうムードもある。“Was She Happy (For Geri Allen)”は過去の曲ではあるけど、その過去がちゃんと未来に繋がっていて、アルバムとしてすごく綺麗にストーリーをまとめているんですよね」

――演奏やサウンド・プロダクションも聴かせるし、さらに言葉で物語性を作って、アルバムとしても聴かせていると。

「ぜひ歌詞も読んでもらいつつ、トラックのいろいろな要素に耳をそばだてつつ、参加している人たちの経歴とかも見つつ、という感じで、さまざまな方向から聴いてもらいたいですね。参加メンバーの情報だけでも、めちゃくちゃ多いので。クレジットの情報で、これだけテンションが上がったのはひさしぶりでしたね」

――何層も重なっていて、一回だけ聴いてもよくわからない、奥が深いアルバムですよね。聴き方によって、いろいろな側面が見えてくるのがおもしろい。シングルが出るたびに聴いていたんですけど、よくわからなかったんです。でも、アルバムをきちんと通して聴いたら感動して。いまどき珍しいアルバム・アーティストだなと。

「ヒップホップ的な観点からすると、アルバムとしての完成度が高いってだけでもう、すごいですね。アルバム単位でいい人って、そんなにいないですから。その意味でも、カニエ的なプロデュースのセンスを感じます」

 

『Modernluv』に続くTAMTAMは新作はどうなる?

――最後に、TAMTAMの活動についてもお訊きしたいです。

「ちょうどいま、新作を制作しています。ただ、カッサのアルバムを聴いてから録音していたら、ドラムはもうちょっとちがうやり方をしたかな、と思ったんですよ」

TAMTAMの2018年作『Modernluv』収録曲“Esp feat. GOODMOODGOKU”

――新作は、前作『Modernluv』(2018年)とはまたちがう音楽性なんですか?

「そうですね。もうちょっと明るいというか、肉体的な感じにはなっていると思います。『Modernluv』ではトラップ以降のダブル/ハーフなビートもやろうとしたんですけど、難しくて。当時は〈バンド・サウンドでトラップをやりたいけど、やっぱりぶつかるよね〉って話していました。そこで新作では、アフロビートやアフリカのゴム(Gqom)のほうからダブル/ハーフ・リズムを取れるビートに挑戦しているんです。

また、ドラム単体について言うと、打ち込みっぽい生音を鳴らすよりも、打ち込みと生演奏を同時に鳴らしたほうが、いまは圧倒的におもしろいなと思っています。パッドを使うドラマーが増えているのも、そういうことかと。

新作では積極的にリズム・シーケンスも使用して、生演奏と打ち込みが一体になったアルバムになると思っています。ただ、カッサのアルバムも生演奏と打ち込みの共存という意味では同じなんですが、考え方がぜんぜんちがうんですよね。打ち込みが鳴る前提で、リズム・パートではないドラムの探求をしていて、〈こんな解決策もあったんだ! ドラム録り終わっちゃったよ!!〉って思って(笑)。

打ち込みもやっているドラマーや、打ち込みと生音を混ぜたいドラマーには、カッサのアルバムを聴いてもらいたいです。〈こんな方法があったんだ!〉っていう、びっくりするような最適解をやっている作品だと思うんですよね」

――なるほど。ドラマーにとっては革命的、画期的な音楽だと。

「……だから、もうちょっと早く聴いていればな~!」

――TAMTAMの次の次のアルバムは、カッサから影響を受けたものになりそうですね(笑)。