豪華なゲストを迎えてオーケストラで紡ぐ、コンテンポラリー・ジャズの一大絵巻
ヴィンス・メンドーサ(アレンジャー/指揮者)と、オランダが誇るジャズ、ポップスをプレイする世界最高峰の管弦楽団メトロポール・オーケストラとの、5年ぶりの共演作がリリースされた。メンドーサと、メトロポール・オーケストラは、1995年に初共演。2005年から2013年にかけて、メンドーサは首席指揮者を務め、複数回のグラミー受賞、ノミネートに輝き、メトロポールの国際的名声を、さらに高めてきた。退任後も、しばしば指揮をとり、現在は客員首席指揮者のポジションにある。タイトルの『オリンピアンズ』とは、メトロポールのメンバーが、常に難関に、喜びと熱意、そして正確無比なテクニックでチャレンジし、多彩な音楽を演奏してきた姿を、指揮台から見つめてきたメンドーサが、〈オリンピックのアスリートのようだ〉と、感じていたことに由来する。本作も豪華なゲストを迎え、メトロポールの唯一無二のグルーヴするストリングス&ホーンに包まれて、メンドーサの新、旧作に新たな命が吹き込まれた。
本作のハイライトは、現代のトップ・ジャズ・シンガーのダイアン・リーヴス(ヴォーカル)が参加した、1997年初演のラテン・タッチの“Esperanto”をブラッシュ・アップしたヴァージョンと、リーヴスの牙城に迫る新星セシル・マクロリン・サルヴァントをフィーチャーした“House Of Reflection”だ。同曲はメンドーサが1992年にカナダの伝説的トランペッター、ケニー・ホイーラーに捧げたバラードに、新たなオーケストレーションを施した。圧倒的な声量と広いレンジのスキャット・ソロを聴かせてくれるリーヴスと、繊細にメロディを紡ぐサルヴァントの対比は、まさに現代ジャズ・ヴォーカルのショウ・ケースと言えよう。デヴィッド・ビンニーにスポット・ライトがあたった“Lake Fire”と、クリス・ポッター(テナー・サックス) が際立つ“Barcelona”も、現代ジャズ・サックスの多様性を表している。メトロポール・オーケストラとヴィンス・メンドーサは、一体となって、コンテンポラリー・ジャズの一大絵巻を描いている。