(左から)森川欣信、浦沢直樹、倉本美津留、湯川れい子、亀田誠治
 

ポール・マッカートニーによる待望の最新ツアー〈ワン・オン・ワン〉が間もなく日本上陸! 東京ドーム公演の4月27日(木)が残席わずか、4月29日(土)、30日(日)はすでにソールド・アウトとなっているが、一際メモリアルなのは、やはり4月25日(火)の東京・日本武道館だろう。ザ・ビートルズ最初で最後の来日公演となった66年の武道館コンサートが、日本でも社会現象を巻き起こすきっかけとなったのは周知の通り。そして、2015年4月28日。再び武道館のステージに立ったポールは、日本サイドの演出に心から感激し、ライヴの翌日も自転車に乗って武道館を訪れるほど、本人にとっても忘れ難い一夜を過ごしたという。

初来日から数えて、今年で51年。ポールと日本のファンにとって〈特別な場所〉となった武道館で、ミラクルが再現される可能性は限りなく高い。その歴史的意義を伝えるための豪華プログラム〈緊急特番! ポール・マッカートニー日本武道館公演決定スペシャル!〉が、去る4月2日にInterFM897で放送された。ザ・ビートルズ紹介の第一人者である音楽評論家/作詞家の湯川れい子、当代随一の名プロデューサー/ベーシストの亀田誠治、ロックに造詣が深い人気漫画家の浦沢直樹、日本屈指のザ・ビートルズ・マニアであるオフィス・オーガスタ社長の森川欣信が出演し、構成作家の倉本美津留がMCを担当。ポール/ザ・ビートルズへの愛情に溢れた座談会が、1時間以上にわたって繰り広げられた。

今回Mikikiでは、当日のトークを前後編のロング・インタヴューに再構成してお届けする。この前編では、ザ・ビートルズとの出会いや、初めて観た〈動くザ・ビートルズ〉の衝撃、彼らが日本に与えたインパクトについて、それぞれがエピソードや思いの丈を披露。日本を代表するクリエイターにも決定的な影響を与えた、ザ・ビートルズの受容史としても興味深い内容となっている。

★〈ワン・オン・ワン〉日本武道館公演の詳細はこちら

 

 倉本美津留

 

66年、リアルタイムでの〈ザ・ビートルズがやって来た感〉

倉本美津留「こんばんは。これからの1時間は〈緊急特番! ポール・マッカートニー日本武道館公演決定スペシャル!〉をお届けします! ここにお集まりいただいているのは、錚々たる方々です。まずは、湯川れい子さん」

湯川れい子「すごい方があまりにもお揃いで、実は私もちょっとビビっているんですけど(笑)。よろしくお願いします」

湯川れい子
 

倉本「次は、亀田誠治さん。亀田さんは(ポールと同じく)ベーシストですもんね」

亀田誠治「はい。ポールはもう、僕の音楽の教科書。本当に、感謝の気持ちしかないですね。今回は素晴らしい仲間が集まったので、ポールのことをいろいろ語り合えるんじゃないでしょうか」

亀田誠治
 

倉本「お次は、ザ・ビートルズ・フリークで日本一有名と言っても過言じゃないでしょう、森川欣信さん」

森川欣信「いや、別にフリークじゃないですよ。ただ、ずっとファンでいたというだけです。知らない間にいろんなものが(手元に)集まってきて。持ってない物もあるんですよ。マニアだと、〈初回盤がどうした〉とかあるでしょ。そういうのは持ってないんですけど……」

森川欣信
 

倉本「いや、持ってない物があるって(笑)。全部持ってなアカンみたいな前提じゃないですか。そして、もうひとり。この方は本当にね、僕が昨日〈出てくれ〉ってお願いしたくらい緊急で。漫画家の浦沢直樹さんです」

浦沢直樹「緊急でやって参りました(笑)」

浦沢直樹
 

湯川「浦沢さん、素晴らしいものを描いてらっしゃるんですよね。先ほど見せていただいたんですけど」

倉本「そうなんですよ」

湯川「InterFM897でザ・ビートルズ来日50周年の際に作った『Here Comes THE BEATLES:1966-2016』という冊子があるんですけど、そこで書き下ろしの漫画『THE BEATLESが50年ぶりにやってくる ヤァヤァヤァ』というショート・ストーリーを描かれていて。もしザ・ビートルズが、50年後に日本武道館で公演をやったら……という内容なんですけど、(ザ・ビートルズといえば)やっぱり武道館なんですよね。だから今回も、〈ウェルカム、ポール・マッカートニー・トゥ・ザ・武道館!〉というわけですよ。ここはやっぱり、きちんと位置付けしておかないといけないですよね、倉本さん」

※こちらで閲覧可能

倉本「そうですよね。そういう大事なことを、世の中の人が認識していないのはけしからんと。それで、この番組なんですよ」

湯川「私、この番組が始まる前に、森川さんからすごくショッキングなものを見せられたんです」

倉本「なんですか?」

湯川「66年の、武道館のチケット。そのチケットだけなら許せるんですけど、それにポールがサインしてるんです。当時はおいくつだったんですか?」

森川「13歳のときですね」

湯川「なんで13歳で買えたの?」

森川「いやいや、チケットを入手するためにハガキを240~250枚くらい出しましたもん」

湯川「でも、13歳の男の子が〈ザ・ビートルズはすごい〉と思ったことにも驚きですよね」

ザ・ビートルズ武道館公演のライヴ映像
 

亀田「ちなみに僕は64年生まれで、6歳でザ・ビートルズに目覚めたんですけど、その頃にはもうザ・ビートルズが解散したあとだったんですよ。本日こちらに集まった皆さんは、全員リアルタイムで66年のザ・ビートルズを観られているんでしょうか」

倉本「一応TVで、チラッと観てる感じですね」

浦沢「僕も当時6歳だったんですけど、〈大変なことが起きてるみたいだから、とにかくTVを観させてくれ〉と親に頼んで」

亀田「6歳の少年が、自分から?」

浦沢「はい。そしたら、〈あんなのキャーキャー言ってるだけで何も聴こえないから〉って言われて。それでも〈頼むから見せてくれ〉と、ガチャンガチャンてダイヤル式のチャンネルを合わせたんですよ。すると本当に、〈キャー!〉と叫ぶ女の子がTVに映ったんです。それで、〈ほらな〉とチャンネルを変えられて(笑)」

倉本「ちょうどカメラが、客席を映していたタイミングだったんですね(笑)」

湯川「えー。かわいそう。でも、なんでそのとき、浦沢少年は〈何かが起きてる〉と感じたの?」

浦沢「なぜでしょう? 僕、わりと早熟な子だったんですよね」

倉本「僕の場合は、母親がそういうものに興味のない一般の女性でして。ザ・ビートルズというものが来るらしいというのを僕に伝えたうえで、〈これは世の中に悪影響を及ぼすから、あんた観ちゃアカンよ〉って言われたんです。だから、その時はTVを点けてもらえなくて。放送も観られなかったんです」

亀田「でも、リアルタイムでのざわざわとした〈ザ・ビートルズがやって来た感〉というのはあったわけですね」

湯川「なるほど。それからどれくらい経って、ザ・ビートルズに目覚められたのですか?」

倉本「小学5年生の時に、兄貴がレコードを買ってきて。それを家でかけたら、町中で流れていたのをきっかけに好きになった音楽が、そのレコードからバンバン流れてきたんですよね。それがザ・ビートルズで。そこから、ちゃんと認識出来たんですよね」

浦沢「それが1970年、万博の年ですよね。ちょうど(ザ・ビートルズが)解散のときで。だから僕も、あのオーディオのCM(東芝ICステレオ・ボストン)で“Let It Be”が使われていたのを聴いて」

倉本「ルーフ・バルコニーでの“Let It Be”のライヴ映像が、その時TVで流れていたんですよね」

浦沢「それを観て、前とはちょっと顔が違うと思ったんです」

森川「髭のせいだ。髪も長くなってるし」

浦沢「そう、急におじいさんになってるって。それが小学5年生のときで」