「俺はポップスターとして衒いなく、〈愛〉とか〈平和〉とか〈幸せ〉を歌おうって。このアルバムを作ることで、そういう覚悟はさらに強くなったかもしれない」――今年1月に発表した3作目『OLIVE』の取材の際にそう語っていたSKY-HI。その後に行われたホール・ツアーのファイナル=日本武道館公演ではその決意を改めて宣言していた彼が、早くもニュー・シングル“Silly Game”を完成させた。

ライヴ・バンドのSUPER FLYERSと共に繰り広げるショウアップされたステージを凝縮したような表題曲は、ファンキーなバンド・アンサンブルが留まることなく展開し続けるパーティー・チューン。だが、その上で踊るのは、現在進行形の世界情勢を抉る、舌鋒鋭い言葉の数々だ。

エンターテイメントとしての強度をメッセージの伝播力に転換した“Silly Game”と、武道館という大舞台でリスタートを切ったこの先の展望について、SKY-HIこと日高光啓に訊いた。

SKY-HI Silly Game (2017)

 

80sとポスト・パンク

――日本武道館でのツアー・ファイナル、拝見しました。『OLIVE』のメッセージである〈世界平和〉を今後も歌っていく、と改めて宣言されてましたね。

「そうですね。〈生涯通して〉みたいなところはあります」

――ここで言いたいことが見つかったと。

「〈見つかった〉っていうより、〈辿り着いた〉って感じかな。たぶんだけど、ミュージシャン……に限らずか、人間は本当に大切なことを言うのに衒いが絶対にあると思うんですよね。子供の頃、お母さんに〈ありがとう〉って言うのって勇気要ったと思うし(笑)、大切なことほど言いづらい気がする。それがミュージシャンだと、ジョン・レノン然り、マイケル・ジャクソン然り、Mr.Children然りなのか、日本で言ったら。出会う人の数が圧倒的に多いから、キャリアのどこかで〈大切なこと〉に辿り着く人も多いはずなんですけど、でも、衒いを捨てられないことも多いと思うんですよね。服脱げないみたいな(笑)。俺もまさにそういうタイプだったけど、紆余曲折あって、〈LIVE〉と〈I LOVE〉を内包した『OLIVE』みたいなメッセージがナチュラルに自分から出てきて、それ自体も平和の象徴だったりするから、導かれるように、なるべくしてそうなれた。人生、『OLIVE』を出すための30年間だったっていうのはあると思います」

――そうしたメッセージをバンド・スタイルでとんでもなくショウアップしてみせたステージが先日の日本武道館公演だったと思うんですが、今回の新曲“Silly Game”はその経験があってこそ……と言いますか、サウンド的には地続きのものかと思いました。それこそ、〈フィーチャリングSUPER FLYERS〉と言えそうなナンバーで。

「そうですね。最初からそう思って作っていたわけではないんですけど、出来上がってみたら地続きだったっていう。サウンドの話だけすると、最近はロック・フェスに呼んでもらえることが多くなったから、ロック・キッズが踊りやすいような曲を作ろうとは思ってて。でも、BPM150とか160とかの、4つ打ちでちょっとラウドめのロックみたいなのは俺の仕事ではないなと思ったから……まあ、それっぽいのもデモで何曲か作ったんですけど」

――ロック色の強いものを?

「衒いなく言えば、マルーン5みたいなのを(笑)。しかもちょっと前の、青春ロック系の頃のマルーン5をいくつか作ったんですけど、自分がシングルとして出すのは嫌だなと思って、全部ボツにして。自分のDNAに真摯に向き合わないとダメだわ、と思って作り直してたら、80sのプリンスとか西海岸ロックが最初に出てきて。あと、これはメッセージのほうの話になっちゃうけど、同じ時代に大西洋隔てたUKではポスト・パンクのムーヴメントが起こってたっていうのはおもしろいな、と。80sのMTVロックとか、プリンスのあの時代の曲とかはメッセージ性の〈メ〉の字もないっていうか、もう〈ゴー! ゴー! レッツゴー!〉だから(笑)、それも俺の仕事じゃないなと思ってたんだけど、ポスト・パンクの憂鬱な感じとかはなんだか現代とリンクするところもあるし、精神的にはそっちのほうがフィールするなあと思ったから、2ヴァース目からそういうトピックを混ぜたり、デモの段階からドラムにディストーションかけたり。そういう質感に近付けながら曲を一回作ったら、歌詞がない状態でわりかし出来が良かったから、もうアレンジャーを経由しなくていいかも、と思って……そう、それこそツアーのリハ中でバンド・メンバーとよく会ってたからかもしれないですけど、ちょっと少人数でスタジオに入って合わせてみたらもう曲が完成しそうだったからそのままレコーディングして、みたいな感じです」

――資料にある〈2時間半のライヴを4分に収めたような曲〉という表現がまさに、と思える賑々しい楽曲ですね。

「〈ライヴのほうが良い〉って言ってもらえるのは嬉しいんだけど、ライヴのヴァイブスが曲に現れないっていうのは問題だと思うから、ライヴのときのテンションでやれるような環境に極力近付けて。生演奏なのもそうだし、あえてめっちゃ展開するようにしたのもそうだし」

――楽器それぞれの見せ場もありますしね。

「2番のリフは、ギターで再現するのが大変そうでしたけど。俺、作るときは鍵盤で弾いてるから、ホーン的なフレーズはいいんだけど、ギタリストはいつも苦労してますね。〈なんだこれ!?〉みたいな。俺は全然、〈ジョン・フルシアンテみたい〉と思って作ってたんだけど(笑)、Takさん(“Silly Game”の共同プロデューサーであるSUPER FLYERSのギタリスト、Tak Tanaka。ほかにも多くのサポートや、Yasei Collectiveのメンバーも含む自身のバンド、ZA FEEDOとしても活動)は大変そうで」

Tak Tanaka擁するZA FEEDOの2016年作『2772』収録曲“2772”
 

――あのTakさんでも。

「うん。〈すげえフレーズだな! これはギタリストからは出ない発想だ!〉って言ってました(笑)。でも、楽しんでやってくれるから嬉しいですね」

――あのリフはすごく印象に残りますね。ギター・リフなのに、鼻歌で口ずさんでしまう、みたいな。

「なんかわかる(笑)。それはね、うん、そうしたかったですね」

――そこにポスト・パンク的なざらついたプロダクションが施されて。ちなみに、オリジナル・ニューウェイヴ~ポスト・パンクもリスナーとして通っていらっしゃるんですか?

「やっぱり、カニエ・ウェストとか聴いてたら、ナチュラルにポスト・パンク周辺も聴きますよね。作品で言うなら『Yeezus』(2013年)。最初に聴いたときは〈なんだこれ?〉って思ったけど、そこから遡っていって。昔の曲も意識的に聴かなきゃとは思ってないけど、俺がもともと60sや70sの音楽を好きになったのもファレル・ウィリアムスのおかげだし、各種ヒップホップ・アーティストのおかげで90sも……とか考えると、それと同じ流れです。これは音楽家に限らずですけど、全生命体の仕事って、先人から受け継いだものを後ろに渡していくこと、それをみんなで繰り返していくことじゃないかって。それが尊いとかじゃなくて、ただそれだけなんだけど、優れたミュージシャンはそういう部分の強い人が多いんじゃないかな」

カニエ・ウェストの2013年作『Yeezus』収録曲“New Slaves”のパフォーマンス映像

 

〈非常識〉でも〈不条理〉でもいい

――で、そうしたポスト・パンク的なプロダクションと80sのプリンス~西海岸ロックのテイストとが混じり合った結果、踊れるパーティー・チューンになりました。

「メッセージが強くなると思ってたから、どんなサウンドを経由したとしてもパーティー・チューンにしようと。今は強いメッセージ・ソングをただ投げて、アンテナ張ってる人だけに届いてもしょうがないから」

――『OLIVE』に収録されていた“How Much??”もそういう曲ですよね。

「そうですね、まさにそうでした。“How Much??”と、もうちょっとメッセージの強い、踊れる社会派ソングを並べて演りたくて。俺が音楽を好きになったのってたぶん、そういうところなんですよね。Mr.Childrenとかそうだったし」

――メインストリームから社会問題に斬り込んでいくという。

「“everybody goes ~秩序のない現代にドロップキック~”(94年)を小学生のときに聴いて、〈すごい、援助交際の話とかしてる〉みたいな(笑)。〈こんなこと言っていいの?〉みたいなハラハラがありましたよね。それこそ“How Much??”では“マシンガンをぶっ放せ”とか引用してるけど、たぶん、曲としても無条件に盛り上がれるものじゃなかったら、小学生の頃の俺は聴けてないから。今なら北朝鮮のミサイル云々とか、共謀罪云々とか、政治の話を身近に感じてる人が昔より多い感じはするから、なんか、書かないほうが不自然だし。1番は〈出家〉とか〈自殺〉のニュースを観て、勝手にそうなってった歌詞で。もう人ごとには感じなかったっていうか、おんなじような気持ちになる瞬間っていうのはすごくある。俺はたまたまそうならなかっただけで、世の中の、普通に暮らしてる人にもそういう予備軍はたくさんいるはずだと思って。1番は全部その話ですね。〈非常識な不条理を愛せ〉の部分には、いろんな感情がこもりました。両方の意味で言ってるから。〈仕事の途中で抜け出すなんて非常識だ〉とか、〈5万とかの給料で働くのが芸能界の理なんだ〉みたいなことを堂々とTVで言える人がいるのはホントに怖いなと思ったから、そこで言う〈常識〉や〈理〉を受け入れるキャパがある人は〈そのまま愛せ〉って捉えればいいと思うし、キャパがなくなった人はもう〈非常識〉〈不条理〉でいればいいじゃないかと思う。そういうことをちゃんとメッセージにできるような気がしたから、そしたらだんだんミクロからマクロへ行ったっていうか、2番はもう森友学園から入り(笑)、北朝鮮、ミサイルでアメリカ、プレイメイト事件からトランプとか、もう数珠繋ぎみたいに書くことがどんどん出てきて。で、最終的に〈生きて死ぬまで通し稽古?/カメラ回せアクション、興味ねぇよ〉で終われれば1番と整合性がつくから、まだ上半期だけど、個人的にはいまのところ2017年のベスト・ヴァースですね。探ったら(トピックが)いっぱい出てくるみたいな(笑)」

『OLIVE』収録曲“アドベンチャー”
 

――(笑)2017年の上半期そのものが詰まってる、みたいなところもありますよね。芸能的な話から政治的な話まで。

「そうなりましたね」

――そこはやっぱり、言っておかなきゃっていう?

「どっちなんでしょうね。でも、書こうと思って書いたというよりは、時代に呼ばれて作った感覚はあります。『OLIVE』みたいなメッセージもそうだし、この曲もそう。決してね、〈ラッパーだからコンシャスに、社会派じゃないと〉とか思ってるわけじゃないんだけど。ただ、こういうハードなことを書くラッパーがもっと日本にいてもいいとは思いますね。まあ、Lick-Gみたいな高校生上がりの子とか、22~23ぐらいまでの若い子が勢いだけみたいなことをバーッて言うのはいいと思うんですけど。BAD HOPみたいなノリとかね」

 

KEN THE 390への恩返し

――いまお話に出たLick-Gさんは、カップリングに収録されている“Walking on water”のリミックス・ヴァージョンに招いていらっしゃいますが。

「リミックスはね、『OLIVE』をもう一回聴いてもらおうっていうのと、あと、これもほんとに悲しいことにウィズアウト・ジャパンだけど(笑)、今、鬼ほど流行ってるから入れようと思ってて。ブルーノ(・マーズ)の最近のヒット・シングルもブートのリミックスから火が点いて、オリジナルもPVになって」

――“That's What I Like”ですね。

「で、サウンドだけだとアレだから、ラッパーを呼ぶリミックスも作ろうと思って……っていうか、そう思ってたらついこの間、ブルーノ・マーズがオフィシャル・リミックスを3つ発表して(笑)。サウンド、サウンド、ラッパーでおんなじことしてると思って(笑)、哀しくなりました。なんかね、現実を思い知る。歳も近いから、考えること同じなのは当然なんですよ、変な話。だけど、向こうがやったことは世界的で、こちらはこの規模にしかなれないっていう現実を思い知るから、ブルーノ・マーズに対して本気で悔しがってたんですけど(笑)」

ブルーノ・マーズの2017年作『24K Magic』収録曲“That's What I Like”
 

――(笑)まあ、まだリスタートのタイミングですし。

「うん。そういうわけでラッパーを呼ぶってなったときに、Lick-GとRAU DEF……LとRですよ。左と右なんだけど、たまたま(笑)。まあRAU DEFはもともとリリースを手伝ってるし、それはなんでかっていうと、才能が図抜けてると思うから。ラップが単純に上手い人が脚光を浴びるシーンにしたいから、RAU DEFは呼ぼうと最初から思ってて。で、もう一人は誰にしようかなと思ったときに、そういえば、自分が最初にスポットを当ててもらったのはフィーチャリングで呼んでもらったときだな、と。それまでは、それこそバトルに出て、ネットに音源を上げて、それが少しだけバズって、っていうのをやってたんだけど、その頃にいち早く声をかけてくれたのがKEN THE 390で。それで2011年にKEN THE 390に客演で呼んでもらったのをきっかけに(KEN THE 390の2011年作『ONE』に収録の“What's Generation”にフィーチャリング)、正式にキャリアをスタートできた。完全にキャリアアップだったんだけど、確か、俺の思い違いじゃなければKENさんは、〈恩返しとかは俺にじゃなくて、日高のさらに下の若い子とかにいつかしてあげればいいよ〉みたいなことを言ってくれてたなと思って。で、ほらLick-GはKEN THE 390のレーベル(Genesis)から出てるから、KENさんへの恩返しをLick-Gを経由してやろうっていう(笑)」

“What's Generation”
 

――(笑)とはいえ、スキルの面でも思うところはあったんですよね?

「もちろん、もちろん。最近名前の上がる若い子で、一番ラップが上手いのはLick-Gだと思ってたから、いつか一緒に何かやれたらと思ってたのと、あと、トラップじゃない曲でのLick-Gを聴いてみたくて。声も一本でね。いつもはかぶせまくってやってるから」

――リリックへのリクエストは?

「もう、そもそもがボースティングだからあんまり言ってなかったんですね。だけど、二人とも最後に〈Walking on water〉でヴァースを締めるっていう(笑)」

――そこは指定していたわけではないんですね。

「うん。だから、ちょっと気持ち良かった。まあでも、正しいことをしてるときはそういうふうになるっていうのは知ってます。上手くいかないときはね、人選とかやり方とか、何かが間違ってるときが多いから」

 

現行への意識

――そして二つ目のリミックスは、TJOさんによる“ナナイロホリデー”。BPMが上がっていたり、ベースラインの動きが激しくなっていたり、原曲と比べてずいぶんアクティヴな仕上がりです。

「TJOがクラブでかけやすいのを作ってほしくて。もともとの曲も優秀なディスコ・ソングではあったんですけど、“Silly Game”が重いから、すごい軽快なやつを作ってほしいなと。iTunes用で“リインカーネーション”のリミックスも作ったんですけど、どっちも〈ハウス再構築〉みたいな感じで」

――そうですね。qliusさんが手掛けた“リインカーネーション”はトロピカル・ハウス仕様で意外でした。

「あ、そうですか? 全然好きですよ」

――『OLIVE』を通過してるので、今は全然アリだなって思いますけど、それまでの日高さんからここまでの開放感は想像できなかったかも。個人的にはエッジーな音に寄っていらっしゃるイメージを持っていたので。

「トロピカル・ハウスは流行りすぎててやりづらいっていうのは正直ありました。でも去年1曲ね、これもiTunes限定だけどカップリングで“Blame It On Me”っていう曲を出してて。(実際に聴いてみる)…………確かに明るくはないですね(笑)。ああでも、このレゲエのノリとかもいまだに続いてるもんな。現行(の音楽)はずっと聴いてるし、意識はしてますね。『OLIVE』とかもそうだけど。(ふたたび音を聴く)でもこれ、エド・シーランの“Shape Of You”と繋げてかけられそうですね」

――ああ~、確かに。

「トロピカル・ハウスはわかんないけど、レゲエのリズムはまだ流行りそうですよね。これとかも良い。(曲をかける)クレイグ・デヴィッド&シガラの“Ain't Giving Up”」

――ほかにもあります?

「ゆる~いレゲエで……どこらへんかな? メジャー・レイザーの新曲(パーティーネクストドア&ニッキー・ミナージュとの“Run Up”)も良かったな」

クレイグ・デヴィッドの2016年作『Following My Intuition』収録曲、シガラとの“Ain't Giving Up”
 
パーティーネクストドア&ニッキー・ミナージュをフィーチャーしたメジャー・レイザーの2017年の楽曲“Run Up”
 

――3月からツアーで全国を回っていらっしゃいましたが、その間も新譜のチェックはされていたり?

「そうですね。まあ、今はしやすいですし。あとはなんか、いい友達が多い(笑)。周りから入ってきますね。自分もアンテナを常に張ってて、そういう情報をやり取りできる人間でいられてると勝手にいろんな音楽が入ってくるし、それが入ってこなくなったらたぶん、自分自身が情報を追えてない、っていうバロメーターになってるんじゃないかな。だから新譜を聴こうって意識してる感じじゃなくて、ナチュラルに新譜を聴けてる、情報が入ってくるっていうイメージですね」

 

海外へ行く理由

――なお、この“Silly Game”が次のタームへの第一歩になると思うんですけど、先の構想はあるんですか?

「あります。あるけど、次のアルバムまでの間にちょっと寄り道をしたくて」

――それはシングルで、という意味ではなく?

「それもあるし、海外に行くことをちょうどツアーのファイナルで発表してて。そもそも、俺が今なんとなく自分の土台に自信があるのって、(メディアでよく書かれるような)〈人気グループAAAメンバーのソロ・プロジェクト〉って感じじゃなくて、普通に自分の音楽をずっとやってたから。もう10何年目だし(笑)、ずーっと活動しててやっと、っていう感じがあるから、日本でもっと売れる予定ではあるんですけど、その前に一回、海外に行って、ちっちゃなライヴハウスを回るっていうのをやりたいなと思って。人が何人来るのか全然わかんないですけど、そうしたら振り切って、現行の音楽がやれるなと思って」

――海外というのは、どちらへ行かれるんですか?

「アジア、ヨーロッパ、アメリカ……いくつか回るんですけど、具体的なことはまだわからないんですよ。突然、航空チケットもらって〈えっ!?〉ってなるんじゃないかって、『電波少年』的に(笑)」

――(笑)ライヴをやりつつ、現地の音楽を直に吸収することが目的ということでしょうか。

「うん、普通に現行っぽいものを作るきっかけにもなるかなって。そういうのをやるのに、日本だとやっぱ、微妙な違和感をずっと感じてるから」

――それはなぜでしょう?

「自分の中のサービス精神にそぐわない。趣味になっちゃうっていうか。カッコ良いことをただカッコ良くやるっていうのは、もちろん喜んでくれる人が多いのはわかるし、w-inds.の(橘)慶太君が評価されるような状況になってきてるからタイミングを見てとは思ってるんだけど、日本はね、〈ヒップホップが好き〉って言ってもケンドリック・ラマーを知らないこともあるわけで(笑)、ドレイクがヒップホップかそうじゃないかみたいな論争をすることも少ないし。当のドレイクは自分のことを〈ヒップホップじゃない〉って言ってるけど。〈僕はマイケル・ジャクソンみたいにポップスを作ってるのに、グラミーとかでベスト・ラップ・ミュージシャンにノミネートされるのは遺憾だ。僕はポップスターなんだ、ラッパーじゃなくて〉って」

w-inds.の2017年作『INVISIBLE』収録曲“We Don't Need To Talk Anymore”
 

――まあ、ジャンルがどうというよりも、ケンドリックやドレイク、ヒップホップ~R&Bがメインストリームであるかどうかが欧米と日本との大きな違いなのかも。

「そうですね。良いとか悪いとかじゃなくて、日本はもうガラパゴスだから。現行っぽい音楽をやるにしても、日本の国内でCDシングルを出すときは、ちゃんと日本の音楽シーンを見て作りたい、愛情の一方的な押し付けはしたくないなと思ってたけど、こと海外へ目を向けたら、自然にそういうものを作れますよね。それってすごい健康的なことだし、どうせ行くなら海外で何曲か作りたいなあと。それこそ(ドレイクの最新作)『More Life』みたいに(笑)。ドレイクが『More Life』を作ってるときUKに5日間いたりして、〈ツアー終わったのにまだUKにいるぞ〉みたいに言われてたけど、たぶん、そこでアルバムの曲を作ってたんですね」

――じゃあ、日高さんがどこかの国に留まってたら、そこで曲を作ってるのかな?って。

「(笑)ですね。あと、友達増やしたいし。〈今後も世界平和を歌う〉ってツアーで言ったけど、国交のあり方が大きく変わることもあり得るから、今、いろんなところに行っていろんな人と会わないとね。もう第三次世界大戦は空想じゃないっていうか……5年前とかにそういう話したら〈陰謀論が好きな人〉〈ちょっとオカルトが好きな人〉みたいなニュアンスになってたと思うけど、今そういう話しても誰も笑わないでしょ? だから今なんだと思います、海外へ行くべきは。音楽的な意味でも、人間的な意味でも」