共に新作が待望されている二人のシンガーソングライターが、スウィートなジョイント・アルバムをリリース!

COURTNEY BARNETT, KURT VILE 『Lotta Sea Lice』 Matador/BEAT(2017)

 コートニー・バーネットとカート・ヴァイル。メルボルン生まれの29歳女子とフィラデルフィア出身の37歳男子。初作『Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit』でグラミーの最優秀新人賞にもノミネートされたやさぐれ左利きギター・クイーンとウォー・オン・ドラッグスの初代ギタリストにしてインディー・フォーク界を代表するシンガー・ソングライターが『Lotta Sea Lice』なるデュオ作を作った。こんなにいい意味で意外性がなく深々と納得を誘う組み合わせもない、とはいささか言い過ぎかもしれないが、とにかくジャケットを眺めるだけで十分に微笑みを与えてもらえて、音を聴く前から十分元を取った気持ちになってしまった。実際の中身だが、波動がバチっと共鳴し合って自然に引き寄せ合っている歌声が飾り気のないハーモニーを生み出していて、実に良いのである。ダーティー・スリーのジム・ホワイトやミック・ターナー、ウォーペイントのステラ・モズガワなどのサポート陣とのやりとりもいい具合にざっくばらんで綺麗に整えようとせず、彼らが紡ぐリズムやざらついたギターに乗っかったふたつの脱力ヴォーカルが天井を自由に伸び伸び飛び回る様子が目撃できる。時には、両者にしか理解できないような味わい深いボソボソした掛け合いの場面が出てきたりし、まるで長年連れ添ってきた夫婦デュオのように思える瞬間もあったり。あと、本気でカントリー・ミュージックへの憧憬を露わにする個所も登場し、ふたりの本格的なフォーキー・アルバムを聴きたいって気持ちに駆られたりもした。で、よく聴けば、コートニー作の“Outta The Woodwork”をカートが真似るように歌い、カート作の“Peepin Tomboy”をコートニーが気持ち良さげに歌っていたり、相手の曲をカヴァーし合っているところなども楽しい。そこから見えてくるのは、一度歌ってみたかったんだ、っていう純粋な気持ち。なんて可愛いんだろう。ふたりの友達になりたい。休日に集まりいっしょにキッチンに立って料理したい。