旧ソ連の巨匠オイストラフがウィーンの名手、スコダと録音した名盤がSACD化された。オイストラフの音色は、瑞々しく洗練された美しさをたたえ、颯爽としたフレージングとともに、多彩な表情を浮かべながら疾走する。スコダも粒立ちの良い、歯切れの良い音で息の合ったアンサンブルを聴かせる。CD1をプレイした瞬間から、ほほ笑みに満ちた音楽が魅惑の音色とともに流れ出るのに魅了されること必至。一方、ト長調や変ホ長調のソナタの変奏曲楽章では、多様な変奏が人間感情の諸相を次々に描出。人生を走馬灯のように振り返る趣きが何とも言えない。澄み切った空気感まで再現する黄金期のアナログ録音も最高だ。