UNISON SQUARE GARDENの現体制最後となるワンマンライブ〈UNISON SQUARE GARDEN LIVE 2026「Sentimental Period」〉が開催された。このライブをもってドラムスの鈴木貴雄がバンドから脱退することもあり、現地と配信で大勢のファンがそのステージを見届けた。全22曲を披露し、予想外のパフォーマンスで締めくくられたライブの模様をライターの月の人にレポートしてもらった。 *Mikiki編集部

節目の夜、バンドの真髄を見せつける
2026年7月15日、UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)の活動休止前最後となるライブが千葉・幕張メッセ国際展示場にて開催された。今年4月、鈴木貴雄(ドラムス)の脱退とそれに伴うバンドの活動休止の報せは、私たちに大きな衝撃をもたらした。順調に見えていても、やはり永遠は約束されていない。ユニゾンの活動休止の一報は、そんな〈バンドの奇跡〉を逆説的に浮かび上がらせているようにも感じた。きっと大半のファンが、消化しきれない想いを抱えたままライブ当日を迎えたに違いない。
ライブはいつも通りイズミカワソラの“絵の具”をSEに始まった。ユニゾンにとってひと区切りとなる重要な夜、そんなこちらの緊張をよそに軽妙な“フレーズボトル・バイバイ”が1曲目に演奏されたのだから不意を突かれた。しかし〈またいつか会えたらいいから Hello, 今夜も楽しかったね〉などと歌われるのだから、この日の幕開けとしてあまりに相応しい選曲だ。そこに連なる2曲目はインディーズデビュー盤『新世界ノート』収録の“アナザーワールド”。自分たちの根源にある情景を7分近い演奏でじっくりと描き出していく。この日にしか成立し得ない、一気に引き込まれる特別なオープニングだった。
ここから“オリオンをなぞる”“カオスが極まる”“MR. アンディ”と続く最初のブロックへ。彼らのライブではお馴染みのナンバーの数々に、フロアも徐々に通常営業の空気へと移ろっていく。美しいメロディを紡ぎ続ける斎藤宏介(ボーカル/ギター)、縦横無尽に暴れまわる田淵智也(ベース)、そしてにこやかに超絶技巧を繰り出す鈴木。強烈にキャッチーで昂ぶりに満ちた楽曲の連なりに、ユニゾンのライブならではの独自性を強く感じる。それぞれ楽曲のトーンが大きく異なり、その驚異的な振れ幅を猛スピードで行き来する彼らの真骨頂を実感できた3曲だった。

そして2つ目のブロック、起承転結でいうところの〈承〉はバンドの真髄をこれでもかと見せつける驚異的なステージングだった。普段のライブならば終盤を彩る“君の瞳に恋してない”や“桜のあと (all quartets lead to the?)”が炸裂し、前のめったテンポの“場違いハミングバード”や“天国と地獄”が感傷を吹き飛ばすほどの熱狂をもたらす。
ユニゾンのライブにはいつだって純粋な高揚感が宿り、そのまっすぐな興奮こそが音楽の醍醐味だと伝えてくれる。活動休止という節目の夜でさえ、まっさらな気持ちで皆を楽しませようとする。ライブバンドとしての本質を決して忘れない3人なのだ。

足を止めるこの瞬間にも祈りだけは置いていける
起承転結の〈転〉にあたる3つ目のブロックでは、それまでの熱狂から少しムードが変わる。抑揚の効いたハードなナンバー“WINDOW開ける”では、どこか諦念に満ちた孤独感を纏いながら〈おしまい おしまい さよならよ〉と、柔らかなアンサンブルで丁寧に届けられた“クローバー”では〈未来のパズルに続いてる〉と歌う。バックモニターに流れ星が飛び交った“harmonized finale”では、念を押すように〈また会えるまで 会える日まで〉というフレーズが放たれた。
私には、これらの言葉がいつかまたユニゾンが始まることへの祈りのように思えた。それは田淵にも斎藤にもまだ見ぬ未来なのだろう。しかし足を止めるこの瞬間にも祈りだけは置いていける。そんなバンドの意志を、きっと誰しもが受け取ったはずだ。

その祈りの先にある〈結〉のブロックは、剥き出しのユニゾンを惜しみなく伝える時間だった。万人からの共感を拒みつつ、〈近づき過ぎないで ちょうどいい温度感であれ〉と歌う“さわれない歌”を皮切りに、バンド名を想起させる初期からのアンセム“箱庭ロック・ショー”、ライブのクライマックスの定番曲“ガリレオのショーケース”と、彼らの核心部に迫るナンバーが並ぶ。“ガリレオのショーケース”では鈴木が腕をぶん回しながら見事なドラムフレーズを決め、間奏では田淵が斎藤を追いかけた後、斎藤が田淵を追いかけるというお決まりの戯れもあり、ユニゾンにおけるいつもの景色が広がっていく。積み重ねてきた歴史がこうした一瞬にも見え隠れしていた。
そうした変わらない光景を目撃した後に、この日の公演名にもなったメジャーデビューシングルの表題曲“センチメンタルピリオド”が鳴らされた。その直後に“徹頭徹尾夜な夜なドライブ”で爆発的な大騒ぎをもたらすあたり、なんともユニゾンらしい。

バックモニターに客席を映し出し、幕張メッセに集まった観客はもちろん、配信で見ている多くのオーディエンスに向けても届けた“シュガーソングとビターステップ”を経たラストナンバーは、“Catch up, latency”。歩んできた道はジグザグだが、だからこそ美しいハーモニーが生まれ、3人の個性がバラバラだからこそバンドとして響き合い、奏で合えた。そんな想いを胸に〈敬具、結んでくれ 僕たちが正しくなくても〉と締めくくられる、あまりにも理想的なフィナーレだった。

鈴木貴雄がユニゾンとして最後に鳴らしたドラムソロ
“Catch up, latency”が終わったのも束の間、最後には鈴木によるドラムソロパートが用意されていた。これは予想外だ。普段はライブ中盤に挿し込まれる恒例のコーナーを、彼らはこの日、ライブの最後に配置したのである。強烈な緩急と手数。急に左手のドラムスティックを捨て飲み物を飲み始めるユーモア。観客の手拍子に音を重ねて作り出したグルーヴ。彼がユニゾンとして最後に鳴らした、噛み締めるような打音。それを静かに見つめる斎藤と田淵の姿を含め、この日を締めくくるのはこれしかないと思わせるパフォーマンスだった。

鈴木だけがステージに残り、最後にMCを行った。ファンへの感謝、そして「またいつかどこかで会えたら、あなたに火を渡せる自分であれるよう、それまで自分を燃やし続けます」と述べた。ドラムを通した自らの表現を火に喩え、それを絶やさないという約束だ。そう、彼のドラマー人生はまだまだ続く。その餞の場としても、この日のライブは完璧だった。
そしてユニゾンがこれからどうなるのか、それはまだ誰にも分からない。この奇跡のような3人を、もう見ることはできないのかもしれない。しかし、彼らが残してきた楽曲が導く縁や活動がきっとあるはず。この日に披露された祈りのような楽曲たち、そして〈敬具〉によって締めくくられたこのライブこそが、3人の〈次〉を予感させる。これは、また会うためのしばしのお別れ。そんなふうに今は受け取っていたい。
SETLIST
1. フレーズボトル・バイバイ
2. アナザーワールド
3. オリオンをなぞる
4. カオスが極まる
5. MR. アンディ
6. 君の瞳に恋してない
7. 桜のあと (all quartets lead to the?)
8. 場違いハミングバード
9. Invisible Sensation
10. オトノバ中間試験
11. 天国と地獄
12. 傍若のカリスマ
13. WINDOW開ける
14. クローバー
15. harmonized finale
16. さわれない歌
17. 箱庭ロック・ショー
18. ガリレオのショーケース
19. センチメンタルピリオド
20. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ
21. シュガーソングとビターステップ
22. Catch up, latency
・ドラムソロ