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表現の幅を広げてきたamazarashiの道程

 2010年にDJ KRUSHによるリミックスを含む7曲入りの『0.6』で全国進出し、その4か月後には『爆弾の作り方』でメジャーへ移籍。以降は6枚のミニ・アルバム、3枚のフルレングス作を筆頭に、7年間で多くの作品を残してきたamazarashi。彼らは一貫して顔出しを行わない匿名性を活かし、近年は小説や前面スクリーンに映像を投影したステージング、3DCGアニメ使用のMVなどを通じて〈音楽〉を多角的に表現するメディアアートの域に達している。その基本はもちろん、詩人然としたバンドの中心人物=秋田ひろむの紡ぐ音楽――絶望から希望を拾い上げるイマジナティヴな世界観。その焦点/視点は作品ごとに異なるが、ここではフル・ヴォリュームのタイトルに絞って紹介しよう。 *土田真弓

amazarashiが参加した作品。

 

amazarashi 千年幸福論 ソニー(2011)

処女ライヴを経て到着した初のフル・アルバム。〈自身にとっての幸福〉がテーマの本作には、オープニングを不穏に彩る“デスゲーム”やノスタルジックな曲調の“古いSF映画”といったポエトリー曲をはじめ、同年春の〈3.11〉を念頭に置いた楽曲も。〈欠点を含めての自己肯定〉へと向かう終盤の流れが胸を打つ。

 

amazarashi 夕日信仰ヒガシズム ソニー(2014)

2枚目のフル・アルバムの主題は自身の〈生活〉。パーソナルな社会に当人の哲学を滲ませつつ、不敵なグルーヴで惹き込む“ヒガシズム”、ダイナミックなプレイが飛翔感を導く“スターライト”と冒頭から音の振り幅を全開に。ラップ調や、LRに分かれた同一人物による掛け合い風など、スポークン・ワーズにも新味が。

 

amazarashi あまざらし 千分の一夜物語 スターライト ソニー(2015)

『夕日信仰ヒガシズム』の発表直前に、秋田の書き下ろし小説「スターライト」の世界を朗読とストリングスを交えたアンプラグド・アレンジのバンド演奏で表現した企画公演。そのセットからの再録盤は、この時点でのアコースティック・ベストとも言える内容に。特に弦楽隊の持つ呼吸が〈歌〉に宿る生命力を高めている。

 

amazarashi 世界収束二一一六 ソニー(2016)

秋田が抱える未来への不安――その結末となるラストの“収束”に対し、彼はインタヴューで「最良の結末は人類の滅亡」だと語っているが、本作は政治/社会的な題材込みで悲観的な一枚に。一方、〈闇〉とのコントラストを描く清澄なピアノ曲“ライフイズビューティフル”の美しさといったら……。