INTERVIEW

星野源“ドラえもん” 真剣に遊ぶことで完成した最高のポップソング

星野源“ドラえもん” 真剣に遊ぶことで完成した最高のポップソング

日本のお茶の間に浸透しているあの国民的な作品とコラボした今回の新作。真剣に遊ぶことで完成したのは、ユーモラスなアイデアに溢れた最高のポップソングだ!

「笑点」とニューオーリンズ

 星野源の最新シングル“ドラえもん”。表題曲は「映画ドラえもん のび太の宝島」の主題歌だ。2016年の“恋”、2017年の“Family Song”と、彼は直近の2枚のシングルでもTVドラマのために主題歌を書き下ろしてきたが、楽曲を提供するときのスタンスとして彼がいつも話しているのは、〈作品と無関係な曲は作りたくない〉ということ。同時に、そのなかで〈自分自身の現在のモードを追求したい〉ということだ。

星野源 ドラえもん スピードスター(2018)

 「作品のテーマやエッセンスと、その時に自分がやりたいこと、音楽や歌詞で表現したいことが合致する場所を、いつも一生懸命探すんです。特に今回は〈ドラえもん〉という日本人なら本当に知らない人がいないっていうくらい国民的な――とんでもない作品なので、だからこそ作品そのものから逃げたくないなって。今までよりさらに踏み込んで、〈ドラえもん〉という作品のことも、自分がやりたいことも、しっかり表現しなきゃなと思いました」。

 〈ドラえもん〉の作品性とみずからの音楽性が重なり合うポイントはどこかと考えながら、彼は気付いた。〈ドラえもん〉の楽しさ、ポップさと自分のサウンドには、そもそも共通する部分があるな、と。そしてその延長線上で、どこかコミカルな旋律がセカンドラインのうねるリズムと共に弾ける、イントロのフレーズが生み落とされた。

 「ニューオーリンズのサウンドを、前からずっと自分の音楽として消化したかったんですよね。だからイントロのフレーズを思い付いた時、〈お、来た!〉って。ニューオーリンズと『笑点』の間くらいな感じがしたんです(笑)。それが理屈抜きに楽しくて。考えてみれば、〈笑点〉も〈ドラえもん〉と同じように日本人に根付いたものだし、あのイントロのポップさは〈ドラえもん〉にぴったりだなと思ったので、ゲラゲラ笑いながら作りました」。

 彼いわく、「ニューオーリンズと『笑点』のハイブリッド」なサウンドは、ごく自然に星野源のJ-Popと溶け合い、ポップで楽しい〈ドラえもん〉の世界を描出。一方で歌詞に目を向けると、そこには〈ドラえもん〉のまた別の側面が滲んで見えている。

 〈少しだけ不思議な/普段のお話〉――冒頭で歌われるこのフレーズは、原作者の藤子・F・不二雄がみずからの作品を定義する〈SF(すこしふしぎ)〉という言葉にインスパイアされたものだ。小さい頃から〈ドラえもん〉に親しんできた星野源にとって、あの国民的作品の魅力は、夢やファンタジーのような〈少しだけ不思議な〉要素を採り入れてもなお、〈普段のお話〉からはみ出さない日常性にある。

 「日常に軸足が置かれた作品なので、〈ドラえもん〉を歌う歌詞は、今を生きる人たちに向けた歌詞にもなるんじゃないかなって。〈ドラえもん〉の世界では、ヒーローじゃなくても、めちゃくちゃ強くなくても、日常に暮らす普通の人たちが、未来の人たちの作った道具で闘うんです。それって魔法ではなく、人間の叡智で闘うっていうことですよね。〈何者でもなくても/世界を救おう〉という歌詞が書けた時に、どんな人でも世界を救ったり、未来を作れたりできるんだという思いが表現できたような気がしました」。

 間奏でふいに現れる“ぼくドラえもん”(TVアニメ版「ドラえもん」のかつてのテーマ曲)のメロディーや、キャラクターたちの名前をもじった歌詞の一節などは、2018年の新しい星野源の方向性を提示している。すなわち、〈真剣に遊ぶ〉。

 「すごく遊んでる感覚になれたんですよね、作ってる最中に。でもタイトルを〈ドラえもん〉にしたこととか、間奏で“ぼくドラえもん”にオマージュを捧げたこととか、中途半端な気持ちだったら絶対に実現できなかったことで、どれも全身全霊でやらないといけなかったんです。遊んでるんだけど、真剣にやらないとこの遊びから振り落とされるというか。この曲をきっかけに、これから作る自分の音楽は、もっと遊べるんじゃないかっていう感覚になれた気がします」。

 

ドラえもんも登場

 また、「映画ドラえもん のび太の宝島」の挿入歌として作られた2曲目“ここにいないあなたへ”は、セカンド・アルバム『エピソード』(2011年)の頃を想起させる、アコースティックで素朴な風合いの一曲だ。

 「劇中の海のシーンで流れる挿入歌を、というオファーをいただいたので、海を描きたいなと思って曲を作っていたら、『エピソード』の頃のサウンド・イメージと重なったんです。でも今の自分のモードとは違うので、普通だったらやらなかったと思うんですけど、今回は〈ドラえもん〉だぞ、と。タイムマシンがあるじゃないかと思って、ドラえもんにお願いして、タイムマシンで2011年の僕にオファーしに行って、出来た曲がこれです(笑)」。

 曲の終盤、浮遊感漂うオンド・マルトノ(テルミンのような単音の旋律を鳴らすことのできる楽器)の温かい電子音が、聴く人の胸を静かな感動で満たすように、今回のシングルでは多彩な楽器がその個性を発揮し、それぞれの楽曲にアクセントを加えている。表題曲で柔らかな音色を響かせるフェンダー・ローズ然り、3曲目の“The Shower”で躍動感をもって打ち鳴らされるMPC然り。

 「打ち込みの音に聴こえるかもしれないけど、MPCはスタジオで叩いて録音しているので、実は生のバンド演奏なんですよ。この曲でやりたかったことのひとつは、トラックメイキングのツールとしてでなく、楽器としてMPCを使うこと。すごく楽しかったし、やりがいがありましたね」。

 そして、恒例の宅録シリーズとなるラストの“ドラえもんのうた”の〈House ver.〉には、なんとドラえもんが参加している。

 「家で寂しく録音していたら、ドラえもんがタケコプターでやって来てくれました。〈どう? 進んでる?〉って、どら焼きを差し入れしてくれて。〈せっかくだから参加してよ〉って言ったら、参加してくれたんです(笑)」。

 いずれも星野源の遊び心が横溢するシングル“ドラえもん”。新鮮かつ奔放で、時おりギュッと胸を鷲掴みにする全4曲だ。

星野源のBD/DVD。

 

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