2010年代型のライオット・ガール

 かつてデモCDの録音/ミックスを担当したceroの髙城晶平をはじめ、数多くのミュージシャンが称賛を贈るガールズ・バンドが、待望視されていた初アルバム『FALSETTOS』を完成させた。音楽的には近年のceroのようにR&B/ヒップホップの要素を含むわけではなく、ローファイ感のある90年代風のガーリーなインディー・ロックという感じで、オルタナ色の強いバンドであるtoldの鈴木歩積がエンジニアを担当しているのは非常に納得。では、音楽性の差異を超えてceroと共振する理由は?と言えば、それはあくまでいち生活者としての立場から、〈音楽〉というアートフォームが持つ解放/救済の力を信じているということであり、2010年代的なライオット・ガールの在り方を体現していると言ってもいいだろう。

FALSETTOS FALSETTOS Pヴァイン(2018)

 もちろん、〈インディー・ロック〉の一言では収まり切らない曲調の幅広さも魅力で、テープエコーによる酩酊感がいい“Ink”は、2015年に坂本龍一のラジオ番組のオーディション・コーナーで年間優秀作に選ばれたことも。また、オートハープとバンジョーを用いた“Hejira”や、トランペットをフィーチャーした“Newborn Baby”のポップソングとしての完成度も十分。本作に対し、〈詰め込むのはアイデア/音じゃない〉というコメントを寄せているのはSEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERで鮮やかに時代を塗り替えた日暮愛葉だが、CHAIのような新星が現れる一方、FALSETTOSがあくまで独自の方法論で初作を作り上げたことは、とても意味があるように思う。