リアルな人間味が露になった次なる一歩

 〈架空の都市のサウンドトラック〉というコンセプトから、〈シティー・ポップ〉の文脈で語られることも多かったAwesome City Club。昨年発表した『Awesome City Club BEST』でこれまで4作続いた〈Awesome City Tracks〉シリーズに区切りをつけた彼らが、新作『TORSO』をリリースする。〈TORSO〉とは〈胴体〉の意味で、〈不完全でもいい、真ん中の熱いものを失わないで。忘れないで〉というメッセージが込められているとのこと。ベスト盤に収録されていた唯一の初出曲“ASAYAKE”同様、これまでクールかつスタイリッシュなイメージの強かった5人のリアルな人間臭さがより露になってきていると言えよう。

Awesome City Club TORSO CONNECTONE(2018)

 1曲目は、フィルターのかかったベースラインとパーカッションの組み合わせがオーガニックな印象を与える“Magnet”。ソウルフルなatagiとキュートなPORINのツイン・ヴォーカル、ポップなソング・ライティングはもちろん、生演奏とエレクトロニクスによる洗練されたプロダクションはやはり彼らの大きな武器である。ディスコティークな4つ打ちナンバー“ダンシングファイター”、反復フレーズが心地良い“yesから二人始めましょう”に続く、ロマンティックなハートブレイク・ソング“燃える星”でも、シタールとシーケンスの組み合わせが絶妙だ。さらには、昨年のツアーで披露されていたキリンジのカヴァー“エイリアンズ”のスタジオ・ライヴ版も収録。2020年の自主企画フェス開催を目標に掲げる彼らの新たな季節がここから始まる。