キャリアを通じて初めてのフル・アルバム。andropとのコラボやロック・フェス出演などで足場を広げた成果を持ち帰ったような新曲を中心に据えつつ、R-指定が客演したDJ松永の“トレンチコートマフィア”(2014年)以降の足取りをかいつまんでベスト盤的な要素も持たせた贅沢な内容にまとめられている。良くも悪くもジャンル論とか駄話のダシにされてるのが可哀想だけど、挑戦的な意匠で持ち味をストレートに表現した快作です。
ファースト・アルバムなのにこの貫禄は何だ! ラップから歌・シャウトまで、イン・テンポから後ノリまで、ダミ声からクリーンまで、ただ変幻自在なだけでなくそれを適材適所で使い分けることができるのがR-指定のラップのすごいところ。耳で聴いても気持ちいい、歌詞カードを読んでフラグのように配置された言葉が巧みに回収されていくのを見てまた気持ちがいい。そして作品ごとにどんどん肥大化していく自意識……こんなラッパー他に知りません。サウンド面でも、こちらもお得意、DJ松永のダークでどこか昭和臭のするサウンドだけでなく、8ビット風サウンドやバラード・ロック、そして大阪のハードコア・バンドSPARK!!SOUND!!SHOW!!を2曲で起用するなど新たな挑戦も。特に“新・合法的トビ方のススメ”の生まれ変わりっぷりは鳥肌モノ。