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アフロ・ブラジルの伝統と現代の背景を交差させる注目の歌姫

 音楽大国ブラジル。次々と才能あるアーティストが輩出される中、最も注目を集めるシェニア・フランサのソロ・デビュー作がついに国内リリースされた。すでに昨年、音楽誌などで高い評価を得ており様々なところで取り上げられている本作だが、実際アルバム1枚を通して聴いてみてもこの才能は飛び抜けている。

XENIA FRANCA 『Xenia』 Agogo Cultural/THINK!(2018)

 シェニアはアフリカ系ブラジル人が最も多いバイーア生まれ。そしてブラジル最大の都市サンパウロで育ち、アフロ・ブラジルを軸にしたバンドAláfiaのシンガーとしてすでに地元では名の知れた存在だったそうだ。確かにAláfiaの音楽も素晴らしくその活動がベースになっているのは明確だ。だがこのソロ作は次元が違うと言っていいほど素晴らしい内容となっている。奴隷貿易によりブラジルへ連れてこられたアフリカ人(主にヨルバ系)の宗教を母体にしたカンドンブレに根差したパーカッションとハチロクのリズム。そこに世界的トレンドであるネオ・ソウルやトラップ、さらにはジャズまでを取り入れた伝統と現代が強烈な渦を巻くサウンドはブラジルという枠を軽く超えて衝撃的だ。ヒップホップ・マナーを反映したジャズとカンドンブレを融合させた作品で大絶賛されたロウレンソ・ヘベッチスの存在も大きく、彼のプロデュース&アレンジは秀逸。

 そしてアフロ・ブラジルの音楽と共に核となるのが、現代人が直面している問題への叫びだ。冒頭曲ではアフリカ系やブラジル先住民インジオに対する差別、無理解/無関心への怒りを静かに爆発させる。

 このアルバムに込められたメッセージを受け取らなければシェニアの音楽の奥深いところは見えてこない。そういう意味でも歌詞対訳のついた国内盤リリースは嬉しい限りだ。