〈ノウズイは ものを思うに ものを思うにはあらず ものを思うは ものを思うは むしろこの街〉という歌詞(筋肉少女帯“サンフランシスコ”/奇書「ドグラ・マグラ」の作中作「脳髄論」の一節を引用したと思われる)があるが、このジャケを見ていると〈ものを思うは むしろこの街〉って歌詞もあながち間違いではないのかもと思ってしまう。溢れかえるほどに人がいて、その全員がどこか孤独感や空虚感を抱えていて、代わりに心の繋がりをネット上に求め、そういう人たちが集合して形成した巨大な街はどこか疲れていて誰の居場所もない。そんな気がしてしまう。
今作における八十八ヶ所巡礼は、そんな孤独や虚無を抱えながらがんばってる我々に対して大いに共感してくれつつ、〈そんな街だから、そんな俺たちだからこそ、今日だけはぶっ飛ぼうぜ〉と、人生を楽しむためにそっと背中を押してくれているかのようだ(とはいえ彼らのことだから普通の応援歌なんて皆無だが)。なんたって当の本人たちが誰よりもぶっ飛んじゃってるんだから説得力が違う。その奇抜な風貌やMV、禍々しいサウンドばかりが話題になりがちだが、地獄のような現実を知ってるがゆえに実は誰よりも優しく愛のあるバンド。これからもこの街にはびこるくだらない虚無を蹴散らしていって欲しい。笑い転げようね。