Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、新着楽曲を軸に私的マイブームな音楽を紹介していきますので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません。紹介した楽曲はSpotifyとYouTubeのプレイリストにまとめて公開しているので、併せてお楽しみください! *Mikiki編集部
【田中亮太】
中村佳穂 “LINDY”
すでに彼女は『AINOU』の先にいた。盟友・馬喰町バンドを迎えての中村佳穂流ジャングル。
羊文学 “ロマンス”
シャロン・ヴァン・エッテン、チャーリー・ブリス……。スタジアム・ロック再評価の波が進む海外バンドに呼応した日本勢からの最良の回答を、羊文学がくれるとは思いもしなかった。
SEVENTEEN AGAiN “ルックアウト”
中村一義が〈絶望の望を信じる〉と歌ったように、マニック・ストリート・プリーチャーズが〈Everything Must Go〉と歌ったように、ヤブユウタは〈まだ見ぬほうにもう一回〉と歌う。けれども、SEVENTEEN AGAiNはロマンティックなドン・キホーテではない。それが現実を動かす唯一の手段と知っているからこそ、〈Still Walk Way〉し続けるのだ。アルバム『ルックアウト』は、本日がフラゲ日。
【高見香那】
Official髭男dism “宿命”
7月31日(水)リリース、レイドバックしたムードでネクスト・ステージを感じさせるニュー・シングルは蔦谷好位置プロデュース。いい曲だなぁ……。先日どこかの〈JC・JK流行語大賞〉にバンドで唯一選出されているのもチラ見しましたが、この曲が「熱闘甲子園」のテーマ・ソングに抜擢されたということで。今年の紅白は確定でしょうか。
【酒井優考】
八十八ヶ所巡礼 “JOVE JOVE”
ある日突然新曲MVがリリースされるたび、毎回〈バケモンかこいつら!!〉って思います。昨年作『凍狂』のインタヴュー(未だに実現できたのが奇跡だと思ってる)では、ボーナス・トラック“怪感旅行”が次回作に繋がる架け橋になるかもしれないとマガレさんが言ってましたが、こう来たか!!
STOLEN “Chaos (Takkyu Ishino's Denki an Dis Remix)”
中国のバンドSTOLEN(秘密行动)の新曲を石野卓球がリミックス(こういうのはここで紹介してOKですか?)。機械仕掛けのダークな虫が羽化して飛び立つような元の曲もカッコいいけど、卓球ヴァージョンはより無機質に。ぜひ聴き比べてほしいです。
メレ “ランドリーパイプ”
チアキのライヴを観に行ったら、OAだった中村伊織さんのこの曲が光っていたので、彼女のバンドの曲を聴いてみたらやっぱり光ってました。好きな人といれば、元気になるし、切なくもなるし、強くもなるし弱くもなるし、そういう日常のいろんな機微を最後のコードが風のように吹き飛ばしていく感じがするんです。
colormal “colormal live video FULL (20190706 代々木Zher the ZOO)”
東京に来ることもそうそうないし、ライヴに行かなくちゃ行かなくちゃと思いつつもまだ行けてないんですが、イエナガ氏のソロ・ユニットcolormalのライヴ映像がフル尺で公開に。カッコイイしクールです(なかなか男が男に対しては思わないぜ)。
レトロな少女 “あの娘がヒロイン”
(手垢のついた表現しかできなくて申し訳ないんですが)なんか懐かしいのに新しい。
etymon “シーユーアゲイン”
下北沢ガレージで知り合った池ちゃんがサポートをやっているらしい男女ユニット。これもガレージじゃん。Mikikiも今週お世話になります。男女ヴォーカルっていいよね。
沖井礼二 “Per Ardua, Ad Astra.”
沖井さんが突然公開してくださった2004年のデモ音源。ご自身のサイトで公開されていたそうですが、初めて聴きました。普段こういうデモを作ってるのかな、と思うとなんか私生活を覗き見てるようですが、私生活も気品があって美しいんだろうなと思います。サビ後の間奏の美しさよ。
【天野龍太郎】
ゴキブリと戦うキッチン・パーカッショニストのお母さん
台所に突然のゴキブリ
— だらっクマ。 (@darakkuma214) 2019年7月7日
皆怯えて叫んで騒いでるうちに見失ってしまい魚焼きグリルの中に入ったかもしれないからお母さんがパーカッション奏者のようにゴキブリを刺激しておびき寄せようとしてる pic.twitter.com/jZG48JDaMm
この4秒しかない動画を観るたびに一人で大笑いしています。ツリーが大喜利化していて、キッチン・パーカッショニストのお母さんが叩きだしているビートに、みなさん思い思いの音楽を付け足しているのがおもしろい。邦楽の曲でもなんでもありませんね。
5lack “Grind the Brain”
真面目にやります。
いきなりリリースされた5lackの新曲です。スケート・ボードがアスファルトを削って滑走する音から始まるのがかっこいい! そんなふうに思っていたら、やっぱりスケートにまつわる曲だということをPUNPEEが語っていました。ホーンのサンプリングやスクラッチが印象的な90sっぽいビートと、5lackのハードコアなラップが堂々たる一曲。
パブリック娘。“LOVE”
パブリック娘。の3人は平成元年生まれなので、今年30歳になります(僕と同い年)。で、大学生の頃に〈初恋とはなんぞや〉と歌っていた連中が、新作では〈結局愛ってなんなんだよ〉とラップしているわけです。変わっていないようで変わっている、そういう違いにグッときます。%Cのビートもすごくいい。〈減点方式じゃないよ愛は〉。そうだよね。
NNMIE “反射(feat. マリ)”
アルバム『Growing Fainter』のリリースも発表したんミィさん(〈NNMIE〉とも表記されます)の新曲。マリさん(mukuchi/feather shuttles forever)とユニゾンで歌っています。最初のサビ終わりの無音、最後のサビで歌い回しが違うマリさんのヴォーカルが加わるところ、アウトロでマリさんの歌だけがちょっと残るところがいいなあと思いました。〈いつか君が知らない歌を歌いたい〉。
はんてん “花嫁(セキモトタカフミcover)”
そのんミィさんがSoundCloudでLikeしていたので聴いたのが、はんてんさんのこの曲。んミィバンドとどろうみのメンバーであるセキモトタカフミさんの“花嫁”という曲のカヴァー。タンバリン、ヴィブラスラップ、おもちゃのような鉄琴の音なんかが入っていて、タイニーでかわいらしいです。
土取利行 & 高木元輝『オリジネイション』
執筆などで携わった「ele-king vol.24」が刊行されました。特集は〈オルタナティヴ日本!〉。そこに掲載されていて、まったく知らなかったのが75年のこのアルバム。おそらく松村正人さんが選ばれたんだと思いますが、CD化もされておらず、かなりのレア盤のよう。なので、リイシューを切望しています! CDと言わず、ストリーミングやダウンロードだけでもいいです! ……とはいえ、YouTubeに全編がアップロードされています。ライセンスがクリアされていないので、もちろん聴くことを推奨はしません(ただ、日本のジャズがいま海外で評価されているのは、YouTubeによるところがかなり大きいと思います)。
佐藤允彦とサウンド・ブレイカーズ『アマルガメイション/恍惚の昭和元禄』
邦楽の曲でもなんでもなくて申し訳ないのですが、和ジャズをもう一作(どちらもアルバム一枚で一曲、みたいな構成なので、どうかご容赦を)。
ブラック・ミディと日本の音楽やカルチャーの関係について書いたコラムで触れた71年作。こちらもレア盤で、サックスは上の『オリジネイション』にも参加している高木元輝です。柳田ヒロや水谷公生といったロック・ミュージシャンが参加しており、ジュリアン・コープもお気に入り、というその筋では有名盤。Pヴァインが98年に再発したCDは廃盤で、Apple Musicで聴くことができます。が、日本の音楽を勝手に再発している悪名高いUKのレーベル、フェニックスがアップロードしたものっぽくて、オフィシャルではないような気がしています。こちらもちゃんとしたリイシューを切望!