八十八ヶ所巡礼『幻魔大祭』唯一無二の変態性と攻撃性、そこに円熟味と時代性が加わった最強の八作目

2021.08.19

マーガレット廣井氏とエンジニアの兼重哲哉氏の対談の進行をした際に、このバンドは〈成長〉なんて言葉とは無縁かと思って〈バンドは10年間で成長していったと思います?〉と訊いたのだが、その際にマガレ氏が兼重氏に「〈成長してる!〉でいいでしょうよ!!」と言ったのがすごく印象的だった。八十八ヶ所巡礼の記念すべき八作目『幻魔大祭』。明らかにそれまでのバンドより〈成長〉しているのが実感できる。

もちろん唯一無二の変態性と攻撃性は言わずもがな。だがそれに加えて、元々類まれなるものを持っていた3人のスタジオ・ミュージシャン的技術にさらに磨きがかかり、変態性と攻撃性の裏側に、〈ヤンチャな3人の初期衝動〉みたいなものとは正反対の、〈技術に裏付けされた円熟味〉みたいなものが染み出ている。〈年とった〉とか〈長年一緒にいるから〉とかではない、イングランド辺りのプログレ・バンドがまだ数枚しか出していないのに醸し出しているみたいな謎の円熟味。それがバンドの〈成長〉なんじゃないかと思う。とにかくヤバいしカッコいい。けど、八十八ヶ所巡礼からそんなものを感じるなんてちょっと意外でもあった。

もう一つ意外だったのが、前作からまた制作期間が3年空いたわけで、その間の時代の変遷を切り取っている(と感じられる)点。〈俺は魔族〉から始まる“幻魔大祭”をアルバム・タイトルに持ってきたからこそ、〈うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと〉的な、今のこのクソな世界は幻だ的なメッセージが込められた作品かと思っていたが、蓋を開けたらそれは違った。

〈昔々 おかしな疫病がひっきり無しに流行ったらしい〉(“IT’S a 魔DAY”)、〈神の熱は巷で怖ろしく流行るそう〉(“神@熱”)、〈いかれた世でもどうか御無事で〉(“慧光”)と言った最近できたであろう曲の歌詞を読むと、この疫病が流行っているクソな世界は幻ではなく確実に現実にあって、きっと3人ももがき苦しんでいて悩んでいるのだろう。あの個性が溢れすぎてる変態的な3人も本当は魔族ではなく、人間なのだなという実感が湧いてくる。

また大興奮して声を上げられる密なライブが観たいぜ。JOVE JOVE呑みたいぜ。それまでは付属のDVDでも見て待ってるぜ。

 
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