LUCKY TAPESからメジャー・ファースト・アルバム『dressing』が到着した。今年5月に発表したEP『22』が示唆していたとおり、本作はトラックメイカーとしての顔をもつ高橋海の手腕が遺憾なく発揮された意欲作。エレクトロニックな要素をふんだんに取り入れたバンド・アンサンブルは、このバンドが次のフェイズに入ったことを端的に伝えている。

加えて、本作にはCharaとBASI(韻シスト)とのコラボーレション曲をそれぞれ収録。どちらも高橋がかねてから関心を示してきたラップ・ミュージックのマナーを取り入れた楽曲で、生演奏によるラグジュアリーなディスコ・トラックを基調としてきた彼らの音楽性は、ここにきてさらに拡張された。間違いなく、これはバンドのターニング・ポイントとなる重要作だ。

さあ、ここからは早速、高橋本人に語っていただこう。ちなみに今回のインタヴューの後半では、〈未来ノ和モノ-JAPANESE FUTURE GROOVE-〉というコンセプトに則った質問もいくつかぶつけている。海外シーンの動向を明確に意識しながら、日本語ポップスの革新に挑む高橋の野心が垣間見える、非常に興味深い回答が返ってきたので、ぜひ最後まで読んでほしい。

LUCKY TAPES 『dressing』 ビクター(2018)

やりたいことを躊躇せずに出してもいいのかなと思いはじめました

――EP『22』で顕在化したエレクトロニックな要素が、今回のアルバムではさらに推し進められていますね。

「そうですね。以前はソロとしてのトラックメイキングと、バンドとしての曲づくりを意識的に分けてきたんですけど、それが『22』で徐々に混ざり始めて、今作でさらにその壁がなくなったように感じてます」

――トラックメイカー的なアイデアをバンドに持ち込むことに、あまり躊躇しなくなった?

「はい。自分もいい年になってきたし、ソロでやりたいと思っていたことをいつまでも出せないでいるのは、なんだかもったいないような気がして。そもそもLUCKY TAPESも自分のプロジェクトなわけだから、やりたいことを躊躇せずに出してもいいのかなと思いはじめました」

――やはり『22』でヴォイス・サンプルなどをバンド・サウンドに導入したことは、高橋さんにとって大きなきっかけになったのでしょうか?

「そうですね。以前はメンバーからアイデアが飛んでこないことにストレスを感じていたんですけど、今回は吹っ切れたというか、自分が引っ張ってやろうという気持ちに切り替えられたんです。そのおかげでこれまで表現しきれていなかった部分を出すことができたので、自分としてはいままで以上に思い入れが深い作品になりました」

――ということは、きっとデモ音源もこれまで以上に作り込んだものを用意したのかなと思ったのですが、実際はどうでしたか?

「デモの完成度はいつもとそんなに変わらず、そのままでもリリースできるくらいのクオリティーで毎回作っています。ただ、前作との大きな違いとしては、デモの段階で自分が作ったループやフレーズをそのまま最終音源として残したことですね。いままでは本録りの段階でメンバーやサポートに演奏を差し替えてもらっていたんですけど、最近は宅録の環境も整ってきたし、音質的にもそのまま使って違和感がなかったので」

――確かに“COS”ではピアノのフレーズが終始ループしていますね。ヴァースとコーラスを繰り返す構成もラップ・ミュージック的というか。

「あのピアノはプラグインの音源で弾いたもので、生ピアノではないんです。生楽器の演奏は素晴らしい深みと人間の手によるわずかなズレが心地よいグルーヴを生み出すけど、サンプリング文化に見られるように、作為的に音を並べたり再構築することによって生まれるグルーヴというものを、ソロではなくバンドでやってみたくなったんです」