摩訶不思議タブラは歌うピースフル。共演者多彩! 変拍子多様!

 タブラは饒舌な打楽器ダ。ユザーンの11年ぶりの新譜は、『Tabla Dhi Tabla Dha』。このタイトルは、ビートルズの“オブ・ラ・ディオブ・ラ・ダ”的なダジャレネーミングと思いきや、実は、インド古典音楽を口伝する時のBol (ボル)由来であることを知る。ボルはタブラの音を口で歌うこと。〈Dhi〉も〈Dha〉も、タブラを始めた人が最初に習うような基本的な音なのダとか。

 1986年に地元の百貨店でタブラを購入したというユザーンは、日本のタブラ奏者・吉見征樹、逆瀬川健治に習い海を渡る。1998年には、インドのオニンド・チャタルジーに師事。2005年からはザキール・フセインに師事。そして、ユザーンは、タブラを携え縦横無尽音楽巡礼へ。(振り返るとユザーンの演奏を初めて聴いたのは、2000年のASA-CHANG & 巡礼ライヴだった)

U-zhaan 『Tabla Dhi, Tabla Dha』 Golden Harvest(2025)

 2025年のユザーンの最新アルバムの共演者は多彩だ。変拍子も多種多様。1曲目、ラッパー鎮座DOPENESSとのコラボ“Five Echo”は、5拍子。”あいうえお”からはじまる言葉の洪水をノリノリでのりこえる。コーネリアスとの“You and I”の宇宙観は汝は其なりウパニシャッド!? “きこえないタブラ”は、青葉市子の浮遊感のある歌声とタブラ・叩き物・ホルンが、知久寿焼のシュールな詞を包む。“Masala Pallet”は、原口沙輔のエディットとタブラでマサラミックス。ハナレグミとの“カンしてパイして乾杯!”は6.5拍子の常識をとっぱらうアフターコロナ飲み会ソング(!?)。“Tibetan Song”オリジナルは1984年発表の坂本龍一の曲。2015年教授とユザーンが共演したアナログ音源を葛西俊彦の新ミックスでリボーン。“Bole Chole”は、ベンガル語ラッパーのCizzyとユザーンのデュオ。おなじみ“ゲゲゲの鬼太郎”は、インド風味。作曲はいずみたく、作詞は水木しげる。歌うはタブラ。“Raga Charukeshi”は、インドで活躍中のシタールマエストロ、プルバヤン・チャタルジーとインド古典音楽演奏。90年代に北インドで入手した近代タブラ奏者ウスタッド・アメード・ジャン・ティラクワの音源を懐かしく想い出す。かつて一緒にインドを旅した86歳の母も右手拍子で傾聴ピースフル。タブラ・ディ・タブラ・ダ。摩訶不思議ダ。