大滝詠一が主宰するナイアガラ・レコードの設立50周年を記念したライブイベント〈J-WAVE INSPIRE TOKYO 2025 supported by Expedia presents 大滝詠一ナイアガラ・レコード 50th anniversary Eiichi Ohtaki’s NIAGARA 50th Odyssey Live〉が、7月12日に東京・渋谷のLINE CUBE SHIBUYAにて開催された。

大貫妙子、鈴木茂、川崎鷹也ら豪華出演陣による一夜限りのイベントの模様は、今年9月にフジテレビTWOでも放送される。放送に先駆けて同イベントの公式レポートが到着したので、まずはテキストにて奇跡の一夜を追体験してみてほしい。 *Mikiki編集部


 

鈴木茂、井上鑑らによるナイアガラーをも唸らせる珠玉のステージ

スクリーンに映し出されたのはレーベルを象徴するナイアガラの滝。続いて、1976年リリースの『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』のプロモーションとして撮影された幻のスタジオライブの映像が上映される。“あの娘に御用心”“楽しい夜更し”を70年代のナイアガラの本拠地、福生45スタジオで歌う大滝と演奏するミュージシャン達、坂本龍一、伊藤銀次、駒沢裕城、上原裕らの若き日の姿に目が釘付けに。大滝がパーソナリティーを務めた伝説のラジオ番組「ゴー・ゴー・ナイアガラ」のスタジオや麻雀に興じるシーンもあり、冒頭から大滝マニア=ナイアガラーを唸らせる。

今から50年前にリリースされた『NIAGARA MOON』のタイトルチューンが流れ、今宵のライブがスタートした。50周年記念ライブのサウンドプロデュースを務める井上鑑が率いるバンドが登場し、ドラムとピアノで“ハンド・クラッピング・ルンバ”のさわりを披露した後、“Blue Valentine’s Day”へ。『NIAGARA CALENDAR』の2月の曲を真夏にインストゥルメンタルで聴く贅沢感が堪らない。

メドレーで演奏されたのは“スピーチ・バルーン”(『A LONG VACATION』収録)。井上鑑(キーボード)、鶴谷智生(ドラムス)、高水健司(ベース)、今剛(ギター)、三沢またろう(パ―カッション)、山本拓夫(ウッドウインド)という名うてのミュージシャン達が奏でる珠玉の大滝メロディーとナイアガラサウンドのアンサンブルに酔いしれる。

『EACH TIME』からの“夏のペーパーバック”は、井上が編曲を担当し、NIAGARA FALL OF SOUND ORCHESTRAL名義で発表された『NIAGARA SONG BOOK 2』にも収録。1977年の“サイダー’77”から大滝のレコーディングセッションに参加し、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』以降はほとんどの大滝作品のストリングスを担当するようになった井上は、ナイアガラに関わったミュージシャンで通算参加回数は最多。オリジナルのスタジオ録音マルチテープから抜き出したゴージャスなストリングス音源をバンド演奏と同期させて「今夜の前半は、NIAGARA FALL OF SOUND ORCHESTRALとバンドで大滝さんナンバーをお届けします」と話し、“恋するカレン”へ。

アコースティックギター、パーカッション、ピアノなどが何層にもダビングされたあの〈ロンバケ〉サウンドを、ライブで新しいアプローチで聴かせるのは流石としか言いようがない。野球と恋を掛けたナンバー“恋のナックルボール”(『EACH TIME』収録)は、三沢のタンバリンや井上のピアノが小気味よく響き、思わず歌詞を口ずさみたくなってくる。

「ここでもう一人のギタリストをお呼びします」。ステージに登場したのは鈴木茂。大滝とは、はっぴいえんどで共に活動し、ソロになって以降も大滝の作品に参加し続けた鈴木は、近年は〈鈴木茂☆大滝詠一を唄う〉(1975年に荻窪ロフトで〈大滝詠一☆鈴木茂を唄う!!〉というライブが開催されたことがあった!)と題したライブで大滝のナンバーを披露しているが、今回は〈ロンバケ〉のなかでも屈指の美しく切ない“雨のウェンズデイ”のインストゥルメンタルバージョンで、渾身のギターソロを聴かせてくれた。

「メロディックなリードギターは茂さんにお任せだった」と井上が言うと、「大滝さんが何をつくりたいか分かっていたからね」と答えた鈴木は最後まで大滝のファーストコールギタリストだったのだ。“ガラス壜の中の船”も鈴木のギターソロが印象深い“雨のウェンズデイ”タイプのメロウでセンチメンタルな曲。多くのバージョン違いがある『EACH TIME』からこの曲が聴けたことは、ナイアガラーにも嬉しいサプライズであったに違いない。