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あの再結成は夢だったのか、もう二度と奇跡は起こらないのか、それとも……

〈お前はタチが悪くて自分のことしか考えてない〉と歌う“Deep Pile Dreams”は、イアン・ブラウンがソロ・デビュー作『Unfinished Monkey Business』でジョン・スクワイアに宛てたとされる楽曲のひとつだ。2008年の時点でもイアンは〈生まれ変わっても再結成の可能性はゼロ〉と宣言し、ジョンはジョンで〈ストーン・ローゼズの墓を荒らすつもりなんてさらさらない〉と記したアート作品を同時期に発表。もはや2人の関係は修復不可能だと目されていたのだが、何とかつぎはぎしてバンド再結成の旨をあきらかにしたのは2011年10月だった。

 そもそも彼らの復活が噂されたのは、ファースト・アルバム『The Stone Roses』の20周年記念盤が登場した2009年頃からだろうか。水面下でさまざまな動きがあったらしいが、2011年春にマニの母の葬儀でジョンとイアンが対面したことを機に夢が現実となり、翌年6月にリユニオン・ツアーがスタート。〈フジロック〉や〈コーチェラ〉のヘッドライナーを務め、2017年4月には22年ぶりに単独来日するなど断続的に世界中で公演し、ファンを大いに沸かせたものだ。

 なかでも2回の地元公演は15万枚のチケットが14分でソールドアウトするという人気ぶりを見せつけたが、現在に至るまでローゼズのチルドレンがロック・シーンを席巻し続け、伝説を生かしていたのだから無理もない。筆頭はもちろんオアシスであり、〈“Sally Cinnamon”を聴いて運命を悟った〉とのノエル・ギャラガーの発言も有名だ。ほかにもブルートーンズやシャーラタンズから、ベイビーシャンブルズ“French Dog Blues”で“Deep Pile Dreams”の歌詞を引用しているピート・ドハーティ、2000年代後半のニューレイヴ勢、そしてブロッサムズやDMA'sに至るまで、彼らの遺伝子を引き継ぐ者は後を絶たない。

 またローゼズの影響は音楽業界に留まることなく、2人の映像作家がラヴレター的な映画を製作。ひとつは、再結成後の彼らを追うショーン・メドウズ監督のドキュメンタリー「The Stone Roses: Made Of Stone」(2013年公開)。もう一本は90年の伝説的なライヴを背景にしたマット・ホワイトクロス監督の青春ドラマ「Spike Islands」(2012年公開)だ。

 バンド自身はと言えば、2017年6月のグラスゴー公演でイアンが〈終わったことを悲しむな。実現したことを喜ぼう〉と観衆に告げ、ツアーを終了。2016年には20年ぶりの新曲“All For One”“Beautiful Thing”が聴けたものの、アルバムは未完に終わったらしい。その後の4人の関係も気になるが、これまた大ファンを公言してきたデヴィッド・ベッカムもデザインに関わる老舗ブランド、ケント&カーウェンが、今春にローゼズとコラボしたカプセル・コレクションを展開。昨年6月のショウにもマニとジョンが仲良く姿を見せていた。伝説に次章があるのか否かは別として、交流は続いているようだ。 *新谷洋子

 

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