マッドチェスタームーブメントの全貌を網羅する書籍「マッドチェスターの光芒: ニュー・オーダーからザ・ストーン・ローゼズへ MADCHESTER 1988-1992」が、2024年7月31日に刊行されました。当時のシーンで活躍した数多くのバンドの解説や作品の紹介、ジョニー・マーやグラハム・マッセイ(808ステイト)のインタビューなどをまとめており、あの狂乱のムーブメントがロックの歴史のなかでどんな価値があったのかを徹底的に掘り下げています。
そこで、今回は本作品や関連アイテムを紹介。該当作品のTOWER RECORDS ONLINEの商品ページのリンクなどもあわせて掲載していますので、ぜひお役立てください。なお、TOWER RECORDS ONLINEでの取り扱いが終了している場合もございますので、ご了承ください。タワーレコード店頭での取り扱いは各店舗にお問い合わせください。
ニュー・オーダー『Technique』、ハッピー・マンデーズ『Bummed』、808ステイト『90』、ストーン・ローゼズ『The Stone Roses』など、表紙に並べられている数多の名盤ジャケットを見て、思わずソワソワしちゃう人は必読の一冊「マッドチェスターの光芒: ニュー・オーダーからザ・ストーン・ローゼズへ MADCHESTER 1988-1992」。「CROSSBEAT」編集部を経て、ポストパンク以降のアーティストを中心に取材、記事執筆を行なってきた著者、横田勇司による〈マッド〉な熱量と圧巻の情報量は同系統のディスクガイド本とは一線を画すレベルで、もはや〈歴史本〉と言っても過言ではない。まずは、その粒粒辛苦な仕事に拍手を送りたい。
本書では、マッドチェスター全体を概観すべく、多角的な視点を設定。ストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズ、ニュー・オーダー、808ステイトら〈最重要アーティスト〉はもちろん、“Take 5”がスマッシュヒットを記録したノースサイドをはじめとする〈マッドチェスターでのし上がった新進バンド〉、電気グルーヴのメジャーファースト作『FLASH PAPA』のプロデュースを手掛けたトニー・マーティンが所属していたヒプノトーンら〈マッドチェスター期のハウス/ヒップホップユニット〉などを取り上げ、シーンを振り返っていく。
一方で、マンチェスター以外の地域や国から飛び出したプライマル・スクリームやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインらの同時期の活動も回顧。また、昨年行なわれた来日公演の記憶も新しいジーザス・ジョーンズや、元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズがドン・レッツらと結成したビッグ・オーディオ・ダイナマイトなど〈マッドチェスターとの対抗軸でもあったブレイクビーツロック〉系のバンドや、アダムスキーやKLFなど〈マッドチェスター期に輝いたハウス/テクノユニット〉の面々もピックアップして、同ムーブメントの本質に迫っていく。
さらに、シーンを支えたインディーレーベルの紹介や同時代に登場した名コンピレーションの解説、ニュー・オーダーの“World In Motion”を代表格としたフットボールソングなどに言及した充実のコラムも掲載。加えて、時代の生き証人でもあるジョニー・マーやグラハム・マッセイの最新インタビューやマッドチェスター時代を徹底的に振り返る年表(これが凄い)が巻末付録として収録されており、圧倒的なボリュームと詳細なデータのつるべ打ちはまさしく〈決定版〉と言って差し支えないだろう。ファンのみならず、洋楽好きの初心者にもピッタリな、この夏の課題図書としてオススメしたい。
なお、マッドチェスターに関連した書籍はこれまでにも数多く出版されており、元ニュー・オーダーのピーター・フックが赤裸々に語り尽くす「ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側」や、バーナード・サムナー(ニュー・オーダー)の自伝「ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そしてぼく」、2013年に公開されたドキュメンタリー映画「ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン」の原作として公式認定されているという「ザ・ストーン・ローゼズ 自ら激動なバンド人生を選んだ異才ロック・バンドの全軌跡」、多くのバンドで活動してきたジョニー・マーが語り尽くす「ジョニー・マー自伝 ザ・スミスとギターと僕の音楽」などが大きな話題を集めたが、一部は残念ながら購入が困難な状況だ。
また、同ムーブメントの重要人物の一人であるトニー・ウィルソンの視点で〈あの頃〉を描いた映画「24アワー・パーティ・ピープル」も、現在ではDVDの流通はおろか、サブスクリプションサービスでも鑑賞ができない状況だ。ジョイ・ディヴィジョンとの出会い、イアン・カーティスの死、ハッピー・マンデーズの乱痴気ぶり、クラブ〈ハシエンダ〉の誕生とクローズなどをドキュメンタリータッチで紡いだ傑作。狂乱のシーンを作り上げた関係者やバンドのメンバーたちはスティーヴ・クーガンやショーン・ハリスらが好演しているが、アンディ・サーキスが演じたマーティン・ハネットの狂気と天才性は一度観たら忘れられない怪演だ。
フィジカル方面ではやはり、昨今の大ブームにより名作の数々がレコードでリイシューされているのが嬉しい限りだ。CDは持っているし、サブスクでも聴ける状況ではあるものの、やはり愛聴盤のアナログは持っていたいというのが本音だろう。普段からレコードに触れる機会が多い方はもちろん、レコードに興味があるけどきっかけがないという人は、こうした名盤をきっかけにヴァイナル生活をスタートさせてみるのもいいのではないだろうか。以下に、現在は比較的購入しやすい商品ページのリンクをピックアップして記載したので、ぜひ参考にしてほしい。
以上、「マッドチェスターの光芒」と関連アイテムを紹介してきた。CDやレコードといった音源に加えて、書籍に刻まれた当時の記憶や情報を知ることで〈マッドチェスター〉というムーブメントの唯一無二な魅力を楽しんでほしい。