【44】

前年にヒットした“Hey Mr. DJ”をはじめ、ヒップホップ・ソウルの延長線上にありながら、ジャズもこなすエレガンスや涼やかなハーモニーなど、90年代R&Bにおいて他にない新しさが詰まっていた作品。現在もなおプロデューサーとして活躍するケイ・ジーが大半を手掛けており、イルタウン流R&Bの雛形はここでほぼ完成している。 *池谷

 

【43】

アトランタ五輪を控えて地元シーンが盛り上がっていたなか、オーガナイズド・ノイズの後見したこのコンビは、ベイエリア勢にも通じるプレイヤーを気取ってダンジョンからゆらりと薫り高く登場。70年代マナーを継承したソウルフルなスタイルはその後も多くの後続を生んでいる。で、デビュー20周年の今年、なんと揃って〈フジロック〉出演とは! *出嶌

 

【42】

名門オーケーの看板を復活させて出てきた頃は、ブルース+ヒップホップ=〈ラグ・モップ〉なる言葉で音楽性を説明していたGラヴと仲間たち。オーセンティックな編成でモダンな泥臭さを聴かせるメソッドは、まさにブラッシュファイア系などの動きに先駆けたものだった。別ページで紹介している新作(10作目)はこの頃の作りに原点回帰したものだそう。 *轟

 

【41】

アシッド・ハウスも薫る、ダビーな加工が施されたダーク&クールなダウンテンポ作品。スカスカな音像もユニークで、クラブ・カルチャーに属する同時代のアーティストと比較してもあきらかに異質な方法論で聴く者を煙に巻いた、アンディ・ウェザーオールの挑発的なアルバムだ。ポスト・ダブステップに似た音要素もあるので、いま振り返るのも有効。 *青木

 

【40】

トランスへの移行前夜、ノイズと雄叫びが乱れ飛ぶアヴァン・ハードコア路線としては最後の作品。当時のUSオルタナ・シーンと共振しつつ、祭囃子風のビートが採用されているなどリズミックな楽曲も多く、聴き心地は意外とポップ。野蛮かつ知性的な混沌には、フリー・フォーク以降のブルックリン周辺との近似性も感じたり。 *土田

 

【39】

時流の推移と彼ら自身の変化もあって当時の評はいささか微妙だったセカンド・アルバム(ツェッペリンのリマスターが出た時期にもシンクロしていた記憶がある)。いま聴けば長い長い黙示録イントロからの展開にも価値を感じられるし、解散劇を経てカムバックしたいまだからこそ、骨太な〈ブリティッシュ・ロック〉アルバムとして評価されたし。 *出嶌

 

 1994>>>2014

 アイドル性も高いミュージシャンの中川勝彦が逝去したのは94年9月。で、しょこたんは新作で“ラスト・ウィッシュ-同じ色のクリスマス-”をカヴァーしてるんだにゃあ。

▼中川翔子の2014年作『9lives』(ソニー)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

【38】

デビュー25周年となる2014年いっぱいでの解散を表明した4人組は、スカ・パンク〜中央線フォーク〜沖縄民謡と遷移した活動初期から急速に音楽性を拡張し、アジア〜中南米の民族音楽を日本のロック/ポップス・シーンにいち早く持ち込んだ存在。“風になりたい”を収めてバンド最大のヒットを記録した本作では〈ブラジル〉に舵を切っている。 *土田

 

【37】

ミニマル・テクノといえば音数の多いハード系が主流であった時代、リッチー・ホウティンはこの名義でシンプルかつアシッディーな実験的トラックを披露して未知の領域を開拓していった。驚くことにそのコマーシャル性皆無(?)な音はイビザで大ブレイク。現在はかの地で〈Enter.〉を主催し、シーズン中は毎週ビッグ・クラブを満杯にする盛況ぶり! *青木

 

【36】

〈ループにソウルを込める〉というピート・ロックの名言があるように、黄金期とされる94年のNYヒップホップにおいても、サンプリング・ビートが生む芳醇なソウルネスという点で最高峰。その後CLとのコンビ解消や、DJプレミアと同様にネタの刻みが細かくなるなどの変遷を辿ったことで、本人にも再現不可となった傑作か。 *池谷

 

【35】

レアグルーヴ~アシッド・ジャズの根本を日本で追求した沖野兄弟が、世界的なクロスオーヴァーの流れに日本的な回答も添えて応えてみせた画期的なコンピ。ジャズにファンクにボッサにハウスが同じ視点で並べられ、MONDO GROSSOやMONDAY満ちる、マスターズ・アット・ワークらが隣り合う都会の刺激……もちろん最初はジャケ買いでしたよ! *出嶌

 

【34】

前年にブレイクしたR・ケリーによって、R&Bもヒップホップもテンポが下がっていった時代。ダンサブルな作風で時代の寵児となったテディ・ライリーは、ビートの抜き差しと重厚なコーラスを擁するこの新プロジェクトで時代に対応した。ガイほどの成功は収められなかった作品だが、ボーイズ・アイドルを含む後続グループへの影響力も甚大な名作! *出嶌

 

【33】

〈NANO-MUGEN FES.〉の立ち上げ当初、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの面々は〈ウィーザーが出たら最終回〉と話していたほどのファンだというが、そのアジカンを尊敬するKANA-BOONが昨年は頭角を現して……と、日本のロック界に脈々と影響を与え続けるパワー・ポップ・バンドの初作。マッチョイズムと対極にある佇まいも当時は新鮮だった。 *土田

 

1994>>>2014

 印象的なジャケが多かった……というよりは共通の認識として記憶されているアートワークが多かったのも94年の特徴? パロディーやオマージュは今後も増えそうです。

▼ゆるめるモ! × 箱庭の室内楽の2014年作『箱めるモ!』(T-Palette)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

【32】

UGKやエイトボール&MJG、スリー6マフィアなどサウス重鎮の快作が出揃った94年だが、当時は南部も西海岸もいっしょくたにして軽視されていた。そんななかでスカーフェイスが作り上げたのは、重々しい語り口で独特のブルージーな世界観を貫いたディ〜プなサザン・ラップの最高峰。現行ラッパーに与えた影響の大きさはナズやビギーにも劣らない。 *出嶌

 

【31】

YUKIが在籍していたバンドで……などと説明しなくても、ほとんど例外的に時代や世代を超えて2000年代以降も広く親しまれ続けているのがジュディマリ。これはこの年2枚目のアルバムで、ロリータ・パンクを標榜した天真爛漫&ナイーヴな楽曲がひしめき、ブレイク間近の勢いをカラフルにパックしている。歌い手としてのYUKIフォロワーはいまも増加中だ。 *轟