「BLUE GIANT SUPREME」
©石塚真一/小学館ビッグコミック

石塚真一による大人気ジャズ漫画「BLUE GIANT SUPREME」。小学館「ビッグコミック」で連載中の本作の、最新単行本第7集が刊行された。

「BLUE GIANT SUPREME」は世界一のジャズ・プレイヤーを目指すテナー・サックス奏者、宮本大を主人公とする物語だ。第7集で大は、バンド〈NUMBER FIVE〉の一員として初開催のジャズ・フェス〈ホルスト・ジャズ・フェスティヴァル〉に出演することに。彼らはそこで名ベーシスト、サム・ジョーダンとの共演も果たし――。

そんな第7集の物語の中心となる〈ホルスト・ジャズ〉のライヴ・レポートが、イギリスの音楽評論家であるWim Stainer氏からMikikiに届けられた。大たちNUMBER FIVEの演奏やフェスのムードを生々しく伝える熱いテキストの全文を以下に掲載する。 *Mikiki編集部

石塚真一 BLUE GIANT SUPREME 7 小学館(2019)

ドイツ国境近くに、きわめてヨーロッパ的な、中世の匂いを残す小さな町がある。

私も訪れるのは初めてであったが、特に目立った産業があるわけでもないそのホルストというオランダの田舎町で、果敢にも、地元の3人の有志によってジャズ・フェスティヴァルが立ち上げられた。

オランダといえば、ヨーロッパの、いや世界有数の港湾都市であるロッテルダムで開催される〈ノース・シー・ジャズ・フェスティヴァル〉が有名だ。ジャズの垣根を越えて、トップ・スターたちが競演するこのフェスティヴァルには毎年世界中から耳の肥えた音楽ファンたちが集う。

街の規模や、地理的な要因を考えても(首都アムステルダムから列車で2時間以上もかかる!)〈ノース・シー〉とは比ぶべくもないと思っていたが、あの偉大なるサム・ジョーダンが彼の素晴らしいバンドと共に出演すると聞き、視察も兼ねて行ってみることした。

 

結論から言うと、このフェスティヴァルは間違いなく私が観てきたフェスティヴァルのなかで、もっとも感動的なものの一つであった。

初めての開催で、決してプロモーションが十分に行き届いているとは言えないフェスティヴァルだから、当たり前のようにオーディエンスはホルストの町の住人ばかりであったし、その数も多いものではなかった。しかし 、このアットホームでささやかながら、ミュージシャンが表現したい音を忠実に再現するように計算され尽くしたステージは、むしろジャズを体感するためにはうってつけで、オーディエンスは皆ステージに夢中であった。