我々は普段、薄皮一枚みたいな殻をまとって生きている。真冬にしんしんと降りだした雪に気づかず歩いていた時、鼻先に突然雪の結晶が触れた瞬間、〈パーン〉とその殻が破れて自分の姿が露わになったように感じたことがあった。俯いていたようで、いつの間にか一面の雪景色に囲まれていたことに気づき、美しすぎて世界の見え方が変わった。読後、そんな体験を想い出した。この短編集はすべて名作と断言できるが、#9「半魚人の頃」を読み、薄皮一枚みたいにまとっていた鱗が〈ぱりん〉とはじけ飛んだように感じた。現実世界から作者だけに見えている名辞(言語化)以前の感覚を寓話として描く才能。天才発見。大白小蟹、大橋裕之の作品が好きな人必読。
「あたらしいともだち かわじろう短編集」作者だけに見えている名辞以前の感覚を寓話として描く 大白小蟹や大橋裕之が好きな人は必読!
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書籍