現行シティポップマスターの一人、クニモンド瀧口による人気シリーズから『CITY MUSIC TOKYO interchange』がタワーレコード限定でリリースされ、待望のアナログレコード化もされた。ワーナー編『CITY MUSIC TOKYO destination』の発表も2024年4月24日(水)に控えているが、この『interchange』は〈ドライブミュージック〉をテーマに、シティミュージックのレガシーでなく最新曲をセレクトした好盤。そんな本作のLPを、『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』などの著書で知られる栗本斉に評してもらった。 *Mikiki編集部

VARIOUS ARTISTS 『CITY MUSIC TOKYO interchange』 Insense Music Works(2023)

 

東京生活のBGMとなるコンピから新しい才能のショーケースが登場

現在進行形のトーキョーの音。それがクニモンド瀧口監修のコンピレーションシリーズ〈CITY MUSIC TOKYO〉の印象だ。自らも音楽ユニットの流線形(先頃、RYUSENKEIというアルファベット表記に変わるという発表があった)を主宰し、70~80年代へのオマージュだけでなく、現行の音楽シーンに目を配りながら音楽活動を行ってきた。そんな彼がコンパイルした本シリーズは、まさしく東京で生活する我々にとって最適なBGMといっていいだろう。

とりわけ、インディーズアーテイストを中心にセレクトした昨年9月発表の新作『CITY MUSIC TOKYO interchange』は、続々と登場する新しい才能に目を向けた格好のショーケースとなっている。2010年代から2020年代にかけて発表されたものばかりで、ジャズ、R&B、ネオシティポップといった様々なエッセンスが詰まったスタイリッシュなポップソングを集めている。いずれも個性的で新しい感覚ではあるものの、どこかノスタルジックなテイストをまとっているのが特徴だ。

『CITY MUSIC TOKYO interchange』は、今年に入ってから、17曲収められた楽曲のうち10曲を抜粋してアナログもリリースされた。この選曲がまた絶妙なセレクトで、洗練された世界観が凝縮されている。

 

男性ボーカルの個性が際立つA面、新鮮な都会派サウンドが広がるB面

まるでミュージカルから飛び出したかのようなスウィンギーな浦上想起の“遠ざかる犬”で幕を開け、ビートルズのDNAを大いに感じさせるOrangeade“わたしを離さないで”、スティーリー・ダンのようなクールなAORを披露する今田学の“underline”、ジャズの素養を持ち、菊地成孔がプロデュースを手掛けたオーニソロジーの“苦い”、若きジャパニーズAOR~シティポップの雄と言えるブルー・ペパーズの爽快な“Believe in Love”と、Side-Aの5曲を聴くだけでもその質の高さに圧倒される。いずれも男性ボーカルでまとめているので、それぞれの個性が際立って聞こえる。

Side-Bに移ると、思わず80年代の角松敏生かと思わせるサウンドとキュートな歌声に魅了されるCity Himesの“Sunset Beach feat. 奈良ひより”で始まり、80sのブラコン風サウンドが新鮮なMilk Talk & Vantageの“Million Miles Away”、〈抱いて〉というリフレインが印象的なメロウチューンのLAGHEADS“だきしめたいよ(feat. HIMI)”、ヒップホップ時代ならではのスウィートソウルと言いたくなるAAAMYYY x MONJOE“DAYZ”、quasimodeのピアニスト、平戸祐介によるフュージョンライクな“INVISIBLE feat. 来海”と、こちらも都会的な楽曲ばかりだ。

 

最前線の東京シティミュージックが輝く

ある程度評価が定まっている往年のシティポップならともかく、最前線に立ってリアルタイムで活動しているアーティストや楽曲を一枚にまとめたことの意義は大きいだろう。すべてに共通点があったり繋がったりしているわけではないが、〈CITY MUSIC TOKYO〉というキーワードの中で大きなまとまりとなって光り輝くように聞こえてくる。もしも日本や東京という街を知らなかったとしても、このアルバムを手にすれば、新しい音楽に溢れた巨大なメガロポリス・トーキョーをはっきりとイメージすることができそうだ。

 


RELEASE INFORMATION

VARIOUS ARTISTS 『CITY MUSIC TOKYO interchange』 Insense Music Works(2023)

■アナログ盤LP
リリース日:2024年1月24日(水)
品番:IMWVR-1025
価格:3,850円(税込)

TRACKLIST
Side-A
1. 遠ざかる犬 / 浦上想起
2. わたしを離さないで / Orangeade
3. underline / 今田学
4. 苦い / オーニソロジー
5. Believe in Love / ブルー・ペパーズ

Side-B
1. Sunset Beach feat. 奈良ひより / City Himes
2. Million Miles Away - Edit / Milk Talk & Vantage
3. だきしめたいよ(feat. HIMI)/ LAGHEADS
4. DAYZ / AAAMYYY x MONJOE
5. INVISIBLE feat. 来海 / 平戸祐介

 

■CD
リリース日:2023年9月27日(水)
品番:IMWCD-1572
価格:2,750円(税込)

TRACKLIST
1. 遠ざかる犬 / 浦上想起
2. わたしを離さないで / Orangeade
3. 都会の森 / CHiLi GiRL
4. underline / 今田学
5. 苦い / オーニソロジー
6. あいつのLIFE / シンリズム
7. 甘い夢 / Roomies
8. だきしめたいよ(feat. HIMI)/ LAGHEADS
9. DAYZ / AAAMYYY x MONJOE
10. Anyway / Sala, A.G.O
11. Nowhere feat. 弱酸性 / The Burning Deadwoods
12. INVISIBLE feat. 来海 / 平戸祐介
13. water / Sincere
14. Hot Spot / MALIYA
15. Sunset Beach feat. 奈良ひより / City Himes
16. Million Miles Away - Edit / Milk Talk & Vantage
17. Believe in Love / ブルー・ペパーズ

 


PROFILE: クニモンド瀧口(RYUSENKEI/CMT Production)
2003年に流線形として音楽活動をスタート。近年の世界的なシティポップリバイバルの流れでアルバム『TOKYO SNIPER』が海外からも高く評価される。古内東子、一十三十一、ナツ・サマーなどのプロデュース、楽曲提供、アレンジで参加。流線形/一十三十一名義でNHKドラマ「タリオ復讐代行の2人」の劇伴を担当。2022年、堀込泰行(ex-キリンジ)をフューチャーした アルバム『インコンプリート』を発売。最新作は、児玉奈央をフィーチャーした“遠い水平線”。また、2020年からシティーミュージックを選曲・監修したコンピレーションアルバム『CITY MUSIC TOKYO』シリーズを発売。CMT Productionとしてグラフィックデザイン、ブランディングなどで音楽を中心に多岐にわたり活動している。
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