先行曲が示す振り幅

 新体制での新曲という意味では昨年4月のシングル“笑一笑 ~シャオイーシャオ!~”のほか、その後のベスト・アルバム『MOMOIRO CLOVER Z BEST ALBUM「桃も十、番茶も出花」』に収められた“クローバーとダイヤモンド”もあったものの、オリジナル・アルバムとしては2016年に2枚同発された『AMARANTHUS』『白金の夜明け』から3年ぶり。これが初のセルフ・タイトル作という点にも〈心機一転〉感は顕著だが、昨年8月から12月にかけてアルバム収録曲を毎月1曲ずつ先行配信/MV公開していく新たな試みも大きな前煽りとなった。

 まず昨年8月に配信されたキックオフの“Re:Story”は、意外にもミッドテンポで穏やかな憩いのムードを表現したナンバー。リラクシンな歌世界を描いたのは、近年のももクロ作品に欠かせないブレーンにして最近は「ヒプノシスマイク」楽曲でもお馴染みのinvisible mannersだ。そこから一転して威勢のいいパンク・ナンバーでブッ飛ばすのが、9月配信の“あんた飛ばしすぎ!!”。これはGARLICBOYSの人気曲をオリジナル詞でリメイクしたもので、編曲や演奏も彼らに委ねている。また、初顔合わせの志磨遼平(ドレスコーズ)が詞曲を、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)が編曲を担った“天国のでたらめ”は、大胆な曲調の変化も絡めつつ輪廻転生を歌う神秘的な美曲で、彼女らの主演ミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」の挿入歌としても使用された。

 さらに前田たかひろが作詞、小澤達紀が作曲した11月配信の“GODSPEED”はIntegral Cloverの爽快なアレンジもハマった曇りのないアップ・ナンバー。受け手の気持ちとも伴走するストレートな応援ソングが新鮮だった。そして〈自由気ままな旅〉をテーマに高橋久美子が作詞した12月配信の“Sweet Wanderer”は、こちらもinvisible mannersが作編曲(とラップ部分の作詞)を担当。ゆったりした休日モードのサウンドに乗せて4人の自然体な歌を響かせ……と、ここまでの5曲だけでも相当な振り幅だが、それ以外の楽曲もアルバム・トータルなヴァラエティーの振幅をより大きくするものだ。連日のMV公開によって徐々に明かされてきたその全体像はさらに凄いことになっている。