Page 3 / 8 1ページ目から読む

周囲からのイメージすべてに反抗する気持ちで作ったミツメの『ささやき』

――音楽性や独立独歩のスタンスで共振しつつ、シャムキャッツとミツメはそれぞれの道を歩みながら、独自の成長ぶりを見せてきた印象です。その変遷をどんなふうに見ていましたか?

夏目「正直、そういう視点では見てないかも。ミツメのことは友達の目線とリスナー、ファン的な耳で聴いている感じ。良い意味で研究対象だったりライヴァル視する存在ではないかな」

――じゃあ夏目さんが〈ミツメ、変わった〉と感じた瞬間といえば?

夏目「『ささやき』(2014年)が出た直後くらいから、ライヴの演奏終わりで少し煽るようになったんですよ。それまではシレッと始まってシレッと終わる感じだったんだけど、ちゃんと拍手をもらえるように意識したんだなって」

川辺「(特に初期は)曲が終わったあとに気まずくなるようなライヴをやってましたね」

――でも確かに、『ささやき』はいまのミツメに繋がる分岐点だった気がしていて。その前から曲単位で予兆はあったけど、アルバム全体で〈ミツメってこういうバンドなんだ〉と打ち出されたのは初めてだったから。

川辺「最初のアルバム2枚を出したあと、みなさんに受け入れていただいて。〈こういうところが良い、ああいうところが良い〉と言ってもらえることが増えたんですけど、僕個人の気持ちとしてはそういうのを全部やらずに作ろうとしたのが『ささやき』(笑)。〈○○っぽいから良い〉ってのを排したいなと、マイナス方向の気持ちで作りはじめて」

夏目「アゲインストな気持ちだったんだ」

川辺「で、あんまりバンドっぽくない音になったりして、出したら出したでシーン……と反応が薄かった。それはそれで凹みましたね。わかりづらかったのかなとか。でも、あのアルバムを出したことで勇気は得られたし」

『ささやき』収録曲“停滞夜”

――そこで自分の道を貫いたから、いまのミツメがある?

川辺「そうですね。まあ、あの頃はサービス精神のない音像を意識しすぎて、おかしなことになってた面もあるかも。僕らは普段、(メンバー同士で)何を考えているのかあんまり共有しないんで、制作時にさっき言ったふうに考えてたのは僕だけかもしれないんですけど、『ささやき』を出したあとは〈大丈夫だったのかな?〉みたいなムードをメンバーから感じることもあって。最近になって〈あのアルバム。すごく好きなんですよ〉と言われるんですけど、あのとき言ってよーって(笑)」

夏目「そういうもんだよね。俺はあのアルバム好き」