東京を拠点に活動する4人組、 THE TREESがファースト・アルバム『Reading Flowers』をリリースした。彼らが鳴らすのは、眩いギター・アルペジオに溌溂としたビートが重なる爽やかなインディー・ポップ。ネオ・アコースティックやフォーク・ロックへの志向性を持ったサウンドと、温かな歌心は決して派手ではないものの、ピュアに音楽へと向き合っているスタンスから、バンドは東京のインディー・シーンのなかで着実に支持を集めている。
本作をプロデュースしたのは、元シャムキャッツの菅原慎一。ギターの心地よいクリーン・トーンや、端正にまとまった音作りは、紛れもなく菅原の手腕によるものだろう。ライブを観てTHE TREESに惚れ込んだという菅原は、バンドのどんな点に魅力を感じたのか。また、THE TREESのメンバーがシャムキャッツや菅原から学んだものは何か。その名の通り花のごとき美しさ、可愛らしさをまといながら、儚さゆえのヒリヒリとした感覚も落とし込まれている『Reading Flowers』について、5人に尋ねた。
トラヴィスが大好き
――はじめてのインタビューなので、まずはバンドの音楽的な背景から教えてください。THE TREESにもっとも大きな影響を与えたバンドといえば?
有馬嵩将(ヴォーカル/ギター)「今作にかぎって言うならトラヴィス、あとはベル&セバスチャン。アコースティックなサウンドで儚げなメロディーを奏でるバンドが基盤になったと思います」
――今作にかぎらずだと、誰になりますか?
荏原優太郎(ギター)「それもやっぱりトラヴィス(笑)。いいメロディーの曲を作ることを大事にしてきました」
――菅原さんが、THE TREESを知ったとき、彼らがいま挙げたようなバンドと近い匂いを感じました?
菅原慎一「そうですね。グラスゴーのネオアコっぽい印象でした。弾けるような爽やかさがあって」
有馬「グラスゴーの音楽には間違いなくいちばん影響を受けていると思います」
荏原「それこそプライマル・スクリームのファースト(87年作『Sonic Flower Groove』)とかにもね」
有馬「活動初期の音楽性は、トゥー・ドア・シネマ・クラブやフェニックスといったいわゆるダンス・ポップ的なバンドに近かったんですよ。ライブでも同期を使っていたし。
そのあと、よりギター・ポップ的というかギター・アンサンブルをメインに構築する音楽性にシフトしていったんです。その変化にはシャムキャッツからの影響もありますね」
THE TREESのライブを観て泣いた菅原慎一
――訊くまでもないですけど、やはりシャムキャッツのファンでした?
有馬「大好きです。大ファンでした」
荏原「シャムキャッツに出会ってから、毎日何かしらのアルバムだったり曲だったりを聴いています」
菅原「そうなの(笑)? すごいな」
有馬「シャムキャッツの音楽は自分の日常に寄り添ってくれて、どんな気分のときにでも聴ける。優しいんですよね」
――菅原さんはTHE TREESが2019年の4月に開催した企画〈YOUNGER THAN YESTERDAY〉にDJとして出演されていましたが、彼らのライブを初めて観たのはそのとき?
菅原「そうですね。ライブを観て、泣きましたね(笑)」
一同「笑」
菅原「いや、ホントにむちゃくちゃよくて。なんかね、自分はバンドというものに対してちょっと食傷気味だったんですけど、でも、そんなのを一切忘れさせてくれたんです。その日出てたほかのバンド(Laura day romance、Tomato Ketchup Boys、Fukai Nana)も20代の若者たちがやっていたんだけど、ぜんぶよかった。で、最後にTHE TREESが出てきて、最高!って。だから、正直その時点でなんか関わりたいなと思ったんです」
――具体的にはどんな点に魅力を感じました?
菅原「ベーシックなスタイルの楽器編成で、全員のリズムやハーモニーがぴったり合っているわけではないのに、バンドでボーンって音を出したときのマジックがあったんだよね。ちょっと羨ましいなと思いました。
あと、さっき言ったグラスゴーのバンドの雰囲気も重なりますけど、たぶんTHE TREESのメンバーはクラブとかに行ってもわりと所在なさげなんだろうなと想像できたし、バンドのそういう空気感にまずグッときた(笑)。でも、ただナードとかではなくて、すごく実直で真面目な感じが、俺は好きなんです」