幅広い活動で磨かれた個性が光る実力派チェリスト 待望のファースト・アルバム
辻本玲は、日本フィルハーモニー交響楽団ソロ・チェロ奏者であり、チェロ四重奏団〈クァルテット・エクスプローチェ〉など室内楽でも活躍中。ソリストとしても、第72回日本音楽コンクール第2位、第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位を受賞するなど、輝かしい経歴を誇る。そんな彼が、初のソロ・アルバムをリリースした。
「3年前にクァルテット・エクスプローチェとしてCDを出し、その時からずっとソロでも出したいと思っていました。今回念願が叶い、とても嬉しいです」
タイトルは収録曲でもある『オブリヴィオン』。クラシックの名曲はもちろん、映画音楽なども含む小品集だ。
「《オブリヴィオン》は、アンコールなどでもよく演奏しており、一番大切にしてきた作品の一つです。アルバムのタイトルは最後まで悩んだのですが、ジャケット写真をクールなイメージで撮って頂けたので、それに合わせてこのタイトルにしました」
美しい音色はもちろん、超絶技巧も難なく弾きこなす“テクニシャン”でもある辻本。初のソロ・アルバムに大曲や超絶技巧曲はいれず、全てメロディの美しい小品でまとめたのは何故だったのだろう。
「最初から全体的にゆったりとした流れをもつ小品集にすることは決めていました。今の世の中、あらゆることが“高速化”され、ゆっくりとものを見る時間が無くなっていますよね。自分自身も余裕がなくなる時があり、お聴きくださる方に、ゆったりとした時間を届けたいなという想いが強くなったのです。気持ちに余裕がなくなると、周りに美しいものがあっても見逃してしまいます。音楽を聴くことによって感性を蘇らせる機会を増やしていただけたら嬉しいです」
東京藝大を卒業後は、シベリウス・アカデミー(フィンランド)、ベルン芸術大学(スイス)に留学した辻本。あらゆる環境に身を置いたのは自身のチェロに深く向き合った結果だ。
「フィンランドで師事したアルト・ノラス先生の演奏はとてもスケールが大きく、スイスのアントニオ・メセネス先生の演奏は非常に端正です。どちらにも演奏に惹かれて指導を仰ぎましたが、両極端な技術と音色を学んだことで、自分の“引き出し”が増えたと思います」
ソリスト、室内楽奏者、オーケストラ奏者として今後も様々な活動を平行して展開するという辻本。今後も魅力的な演奏と意欲的な活動で大いに注目を集める存在となることであろう。『オブリヴィオン』にはそんな彼の魅力が詰まっている。
LIVE INFORMATION
クァルテット・エクスプローチェ~響炎する4本のチェロ~Tour 2019
○8/2(金) ユメニティのおがた 小ホール(直方)
○8/3(土)下関市生涯学習プラザ 風のホール
○8/5(月)福岡市 あいれふホール
○8/6(火)はつかいち文化ホール(広島)
○8/9(金)ザ・フェニックスホール(大阪)
○8/10(土)宗次ホール(名古屋)
○8/11(土)トッパンホール(東京)
○9/13(金)杉並公会堂(東京)
【出演】森山涼介(vc)高木慶太(vc)市寛也(vc)辻本玲(vc)