6人の名手が紡ぐ珠玉の弦楽アンサンブルは、心身にゆったりと染み込んでくる

 東京・銀座のヤマハホールは、木造りの温かな響きが特徴のホールである。楽器で使用される高品位の木材が用いられ、座席の背面にはギターに使われる木材が使用されている。333席という親密的な空間で聴く演奏は、からだ全体が音楽に包まれるようで、至福の時を過ごすことができる。

 その木造りのホールに響く弦楽器のアンサンブルは格別なものがある。木が共鳴し、演奏家の響きが客席にふんわりと弧を描くように伝わってくるからである。

 NHK交響楽団コンサートマスターの伊藤亮太郎が、音楽性と人間性の両面で信頼を置き、ぜひ実現したいとの強い思いから生まれた〈伊藤亮太郎と名手たちによる弦楽アンサンブルの夕べ〉は、第1回が高い評価を得たことにより、待望の第2回が行われることになった。メンバーはNHK交響楽団次席ヴァイオリン奏者の横溝耕一、読売日本交響楽団ソロ・ヴィオラ奏者の柳瀬省太、神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席ヴィオラ奏者の大島亮、日本フィルハーモニー交響楽団ソロ・チェロ奏者の辻本玲、チェリストの横坂源といういずれ劣らぬ実力者ぞろい。

 彼らはそれぞれ偉大なアーティストたちから薫陶を受け、留学先で多くの研鑽を積み、さらに国際コンクールの優勝・入賞者である。現在はオーケストラでの演奏に加え、室内楽でも活発な活動を展開している。

 そんな6人が紡ぐ珠玉のプログラムは、シューベルト、ブラームス、チャイコフスキーという名曲。先ず、シューベルトの弦楽三重奏曲第1番は、第1、2楽章のみの未完の作だが、全編にシューベルトの歌謡性がちりばめられている(伊藤、柳瀬、横坂)。ブラームスの弦楽五重奏曲第1番は晩年の作品で、大家となったブラームスが特有の重厚な響きと緻密な手法を遺憾なく盛り込んでいるのが特徴である(伊藤、横溝、柳瀬、大島、辻本)。最後に演奏されるチャイコフスキーの弦楽六重奏曲“フィレンツェの思い出”は、作曲家がこよなく愛したフィレンツェで書かれ、南国的な色調が色濃くにじみ出ている作品(全員)。いずれも楽器編成が少しずつ変わり、弦楽アンサンブルの妙が楽しめるようなプログラムとなっている。心身が音に包まれるような音響のいい空間で聴く、気の合った仲間たちが奏でる極上の室内楽。残暑きびしき折、からだと心にゆったりと染み込んでくる弦の調べは、ひと吹きの涼風を体感するものになるに違いない。

 


LIVE INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
伊藤亮太郎と名手たちによる弦楽アンサンブルの夕べ Vol.2 ~弦と弓が紡ぐ馥郁たる響き~
2019年9月24日(火)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00

■出演
伊藤亮太郎/横溝耕一(ヴァイオリン)
柳瀬省太/大島 亮(ヴィオラ)
横坂 源/辻本 玲(チェロ)

https://www.yamahaginza.com/hall/event/003687/